倒したヌシ肉で極上雪上バーベキュー! 胃袋を掴まれた見習い女神は「もう天界に帰りたくない」と泣きました。
倒したヌシ肉で極上雪上バーベキュー! 胃袋を掴まれた見習い女神は「もう天界に帰りたくない」と泣きました。
大間産・冷凍本マグロによる謎の勇者ロボ空間(と謎の大爆発)が収束し、ポポロ山の空には、嘘のような快晴が広がっていた。
猛吹雪は完全に止み、太陽の光が白銀の世界を眩しく照らし出している。
リリスちゃんが錬成した巨大な『氷の城』も、日の光を受けてクリスタルのようにキラキラと輝いていた。
「よしっ! 雪も止んだし、お腹も減ったし、慰安旅行の締めくくりに『雪上バーベキュー』にしましょう!」
私の号令に、全員から「わぁぁっ!」と歓声が上がった。
おでんはあくまで前菜(冷えた体を温めるためのもの)だ。せっかくの雪山リゾート、やっぱり最後は豪快にお肉を焼いて食べたい。
「発動――【デパート】、アウトドアフロア! 大型バーベキューコンロと、極上炭セット!」
私は氷の城の前の広場に、立派なコンロを設置した。
そして、メイン食材はもちろん。
「これ、本当に食べられるんやろか……」
「大丈夫よ。スノー・ロード(キング雪男)の肉は、実は魔獣の中でもトップクラスの高級食材なの。特に冬場は脂が乗ってて最高よ」
爆発四散したキング雪男の跡地から、奇跡的に綺麗な状態で残っていた巨大な『霜降りの肉塊』を、スアイさんが手際よく氷の魔法で解体していく。
一方、その横ではニャングルが、キング雪男の折れた巨大な牙や、純白の毛皮の破片を専用の魔法袋に嬉々として詰め込んでいた。
「へっへっへ……この『キングの牙』、武具の素材としてドンガン地下帝国に流せば金貨五百枚……。毛皮も高級コートの裏地にすれば……グフフフッ! 慰安旅行の経費どころか、億単位の黒字やで!」
相変わらずたくましい守銭奴である。危険な魔獣の討伐も、彼にとってはただの『超高レートの素材採集』なのだ。
「社長。マグロはどうする?」
ジークが、先ほど武器として使用し、見事にお役目を果たした(しかも傷一つついていない)大間産・冷凍本マグロを肩に担いでやってきた。
「マグロはやっぱり、まずは『お刺身』と『お寿司』ですね! それから、この立派なカマはコンロで豪快に焼きましょう!」
「よし、捌くのは俺がやる。お前はタレの準備をしてろ」
ジークはマグロをまな板代わりに用意した巨大な氷のブロックの上に乗せると、手刀に黄金の闘気を纏わせ、スパスパッと神業のような包丁(手刀)さばきで巨大マグロを美しいサクへと解体していった。
ほんと、この人ならフライパンと素手だけで料理番組のMCができそうだ。
私はコンロの炭火を起こし、スアイさんがカットしてくれたキング雪男の分厚いステーキ肉を網に乗せた。
――ジュゥゥゥゥゥゥッ!!
一瞬で、香ばしい脂の焼ける匂いが弾けた。
まるで最高級の和牛のように、サシの入った肉から甘い脂が滴り落ち、炭火に当たって煙を上げる。その煙が肉を燻し、さらに食欲を刺激する匂いへと変わっていく。
私はデパ地下特製の『和風ガーリックオニオンソース』と、塩コショウのシンプルな『極上岩塩』を用意した。
「さぁ、焼けましたよ! マグロのお刺身とカマ焼きも完成です!」
雪の上のテーブルに、こんがりと焼き色のついたステーキ肉と、ルビーのように輝く大トロ・中トロのお刺身、そして香ばしい香りを放つマグロのカマ焼きが並んだ。
「いただきまぁぁぁぁっす!!」
一番最初に飛びついたのは、やはりリリスちゃんだった。
彼女はフォークでキング雪男のステーキ肉を口に運んだ。
「――――ッ!!!」
リリスちゃんの瞳から、大粒の涙が滝のように溢れ出した。
「お肉が……お肉が口の中で溶けるぅぅぅっ! 甘い脂と、玉ねぎのソースがすっごく合ってて、噛むたびに肉汁の爆弾が爆発するよぉ!」
「マグロも食ってみろ。昨日まで天界の青汁(緑の絶望)しか飲んでなかったんだろ?」
ジークに促され、リリスちゃんはワサビ醤油を少しつけた大トロのお刺身を口に入れた。
「あ、あぁぁぁ……っ!」
リリスちゃんの頭上の光の輪が、かつてないほどの激しい明滅を始めた。
「冷たくて、なめらかで……脂が甘ぁぁいっ! お肉の暴力的な美味しさの後に、お魚の気高い旨味が押し寄せてきて……もう、脳みそが幸せでいっぱいになっちゃう!」
「ほれ、こっちのカマ焼きも絶品やで! 炭火の香ばしさとマグロの脂のコラボ、酒が無限に飲めるわ!」
ニャングルが、マグロのカマの身をほじりながらサケスキーのジョッキをあおる。
ジークも「やっぱり大間産は美味いな」と、大盛りご飯(米麦草)の上にステーキとマグロを乗せた『夢のハーフ&ハーフ丼』を無言でかき込んでいた。
「うっ……うっ……うわぁぁぁぁんっ!」
突如、リリスちゃんが大声を上げて泣き出した。
「ど、どうしたのリリスちゃん!? ワサビが効きすぎた?」
「ちがうのぉ……っ! コトネお姉ちゃんのご飯が美味しすぎて……もう、天界に帰りたくないよぉぉっ! 私、ずっとデパートでバイトする! 女神様辞めてもいいから、一生お姉ちゃんのご飯が食べたいよぉっ!」
「ちょっ、女神様辞めないで! バイトはずっと続けていいから、天界のお仕事もちゃんとやりなさい!」
美味しいご飯のせいで、あわや見習い女神が完全に『堕天』してニートになりかけるというハプニングが発生した。
私は苦笑いしながら、泣きじゃくるリリスちゃんに温かいお茶とデザートの焼きマシュマロを渡してあげた。
「……ふふっ。本当に、貴女の周りはいつも笑顔が絶えないわね」
スアイさんが、ワイングラスを傾けながら私を見て優しく微笑んだ。
「最初は、ただのちょっと変わった商人かと思ったけれど……貴女のその『どんな状況でも美味しいもので人を笑顔にする力』には、本気で感服したわ」
「そんな、大げさですよ」
「ううん。これは本心よ。……ねえ、コトネちゃん」
スアイさんが、スッと真剣な表情になって私に向き直った。
「このポポロ山スキー場、まだまだお客さんを呼べるポテンシャルはあるんだけど、食事のメニューがちょっと貧弱だったの。だから……もし良かったら、私のスキー場と『デパート・コトネ』で、専属の提携を結んでくれないかしら?」
「えっ! 専属提携、ですか!?」
「そう。ゲレンデの食堂の仕入れや、新しいイベント企画を貴女にお願いしたいの。もちろん、利益は折半で。どうかしら?」
スアイさんの言葉に、ニャングルが「シャリーン!」と目をお札のマークにして振り返ったが、私はそれを手で制した。
「……喜んで、お受けします!」
私はスアイさんの手をしっかりと握り返した。
「スアイさんの作ったこの素敵なスキー場に、私のデパートのご飯やグランピングの技術が加われば、絶対に世界一のリゾートになります! 一緒に、たくさんのお客さんを笑顔にしましょう!」
「ええ! よろしくね、コトネちゃん!」
こうして、ただの慰安旅行は、思いがけない大ビジネスチャンス(専属提携)へと結実した。
自立した女性同士のタッグは、きっとこのポポロ村をさらに大きく、魅力的な場所にしていくに違いない。
「……おい、社長」
熱い握手を交わす私たちの横で、ジークが空になったお茶碗を差し出してきた。
「このハーフ&ハーフ丼、おかわりだ。今度はガーリックソース多めで頼む」
「はいはい、お安い御用ですよ!」
「ふふっ、ジークさんもお姉ちゃんのご飯の虜だね!」
「……うるせぇ。俺はただ、護衛のエネルギー補給をしてるだけだ」
リリスちゃんにからかわれ、ジークが少しだけ気まずそうに顔を背ける。
その耳の先が少しだけ赤くなっているのを見て、私は心の中で小さくガッツポーズをした。
理不尽に婚約破棄され、全てを失ってこの辺境にやってきた私。
でも今は、こんなにも温かくて、頼もしくて、一緒に笑い合える最高の仲間たちがいる。
青空の下、雪山で囲むバーベキューの味は、私の人生の中で間違いなく一番の、最高に美味しい『幸せの味』だった。
私たちの慰安旅行は、こうして誰一人欠けることなく、極上の笑顔と満腹の胃袋とともに、大団円を迎えたのであった。
第9話、慰安旅行の締めくくりは『極上雪上バーベキュー』でした!
ジークが倒した(爆破した?)キング雪男の霜降り肉と、武器として活躍した「大間産本マグロ」の豪華すぎるハーフ&ハーフ丼!
あまりの美味しさに、リリスちゃんが「天界に帰りたくない!」と泣き出す始末。胃袋を完全に掴まれた女神様が可愛すぎます。
そして、スアイさんとの間に「スキー場の専属提携」という新たな絆も誕生しました!
女性同士のシスターフッド、ニャングルのちゃっかりした素材回収、ジークの不器用な照れ隠しなど、仲間たちの魅力が詰まった平和な大団円です。
次回、いよいよ第2章の最終話!
楽しかった慰安旅行を終え、デパートの日常へと帰還。
夜の誰もいないカウンターで、コトネに温かいココアを差し出すジーク。そこで交わされる「追放されてよかった」と心から思える、甘くて優しいラストシーンをお届けします。
第10話をお楽しみに!
【読者の皆様へのお願い】
「ハーフ&ハーフ丼食べたい!」「リリスちゃん堕天寸前w」「ジークの照れ隠し尊い!」と思っていただけましたら、
ぜひ画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にタップして、コトネたちのバーベキューを応援してください!
皆様の評価ポイントが、作者の最高の焼きマシュマロ(ご褒美)になります!
【ブックマーク登録】も、ぜひぜひよろしくお願いいたします!




