地下のドン『オロチ会長』襲来! 極上味噌カツでおもてなししたら、スキルが進化して【地上3階建て】になりました。
地下のドン『オロチ会長』襲来! 極上味噌カツでおもてなししたら、スキルが進化して【地上3階建て】になりました。
第一王子レオンハルトと炎上勇者ゼロスが、ニャングルの手によって『マグローザ漁船』へとドナドナされて数日。
ポポロ村の『デパート・コトネ』は、かつてないほどの平和と、空前の大繁盛を迎えていた。
「ガハハハッ! 笑いが止まらへんで! ルナミス軍と獣人軍からのサブスク売上に加えて、あのバカ王子たちから差し押さえた資産! ウチの商会の金庫がパンパンや!」
テラス席で、ニャングルが算盤を弾きながら札束の山に頬ずりしている。
その横では、ジークがデパートの最上級『低反発クッション』を敷いたリクライニングチェアに寝そべり、ポポロシガーを吹かしながらルナミス新聞の競馬欄を熟読していた。
「社長、今日の昼飯は『特上カツ丼』にしてくれ。昨日大穴を当てたから、俺の奢りでいいぞ」
「ふふっ、ジークさんのお奢りなんて珍しいですね! 喜んで作りますよ」
私が笑顔で答えようとした、その時だった。
――ブロロロロロロォォォォンッ!!
突如、広場にけたたましい重低音が響き渡った。
土煙を上げて現れたのは、ドワーフの技術で作られたと思われる、異様に装飾過多でド派手な『魔導オープンカー』。車体は黄金色に塗装され、フロントには悪趣味なほど大きな宝石が埋め込まれている。
「な、なんだあの成金趣味の車は……」
「ひぃぃっ!? あ、あのエンブレムは!!」
ジークが眉をひそめる横で、ニャングルが札束を放り出して直立不動になった。
魔導車が店の前で急ブレーキをかけて止まると、後部座席から一人の男が降りてきた。
年齢は五十代ほど。蛇のように縦に割れた瞳孔を持つ『蛇目族』の男だ。
オールバックに撫で付けた髪、色付きのサングラス。首には極太の金のネックレスをジャラジャラと下げ、ド派手な柄物のシャツに白いスーツという、まるで地球の『昭和のパチンコ屋の社長』のような出で立ちである。
「おーおーおー! どえりゃあ繁盛しとるがね! ここが噂の『デパート』っちゅう店かて!」
「お、オロチ会長ォォォッ!! お越しいただき、光栄の至りに存じますぅぅ!」
ニャングルが地面に額を擦りつける勢いで最敬礼をした。
そう、このコテコテの名古屋弁(?)を話す派手なおじさまこそ、大陸屈指の大企業『ゴルド商会』のトップであり、ドンガン地下帝国とのパイプを牛耳る地下のドン――オロチ会長だった。
「ニャングルの奴が、辺境でどえりゃあオモロイ商売を始めよったっちゅうで、ワシが直々に視察に来たんだわ。……お前さんが、コトネっちゅう嬢ちゃんか?」
「は、はい! コトネ・シュクルと申します」
「ほぉーん。細っこい嬢ちゃんだが、この村の利益を独占しとるとは末恐ろしいがね。……ワシの舌はどえりゃあ肥えとるよ? ゴルド商会の会長を唸らせるようなモン、出せるんか?」
オロチ会長はサングラスの奥の蛇目で、私を値踏みするように見つめた。
ニャングルが青ざめ、ジークが面倒くさそうにフライパンに手を伸ばしかける。
――ドンと来い、だ。
昭和の成金おじさまで、名古屋弁。この要素から導き出される、彼が絶対に喜ぶ『デパ地下の味』。
パティシエとしての勘と、デパートの知識が完璧な最適解を弾き出した。
「お任せください、オロチ会長。最高の『なごやめし……いえ、地元風特製ランチ』をご用意します!」
私は厨房に戻ると、スキルを発動した。
「発動――【デパート】! デパ地下名店、極上味噌カツ弁当! ならびに、純喫茶フロアの『小倉トースト』と『金箔入り抹茶フラッペ』!」
数分後。
私がテラス席のオロチ会長の前に運んだのは、ジュージューと音を立てる熱々の鉄板だった。
その上には、分厚くカットされた最高級黒豚のトンカツ。そして、その衣を黒光りする濃厚な『特製・八丁味噌ダレ』がたっぷりと覆い尽くしている。
デザートには、極厚のトーストにたっぷりのバターと小倉あんを乗せた『小倉トースト』。飲み物は、キンキンに冷えた抹茶フラッペだ。
「ほぉ……? この黒いソース、なんや知らんがワシの魂の奥底、DNAに直接語りかけてくるような香りがするがね……」
オロチ会長はゴクリと喉を鳴らし、箸で味噌カツを一切れ掴んで口に運んだ。
サクッ、ジュワァァァッ。
「――――ッ!?」
オロチ会長のサングラスが、パキッと音を立ててズレた。
「ど、どえりゃあ美味いがあぁぁぁぁっ!!」
会長が鉄板を前に絶叫した。
「なんちゅうコクだ! この濃厚で甘辛い味噌の深み! それが、分厚い豚肉の脂と完璧に絡み合って、口の中で暴れ回っとる! こんなん、米(米麦草)がいくらあっても足りせんがね!」
ガツガツガツガツッ!
先ほどまでの威厳はどこへやら、オロチ会長は一心不乱に味噌カツとご飯をかき込む。
そして、食後に『小倉トースト』をかじり、『抹茶フラッペ』をストローで一気に吸い上げた。
「あぁぁ……ッ! バターの塩気とアンコの甘さ……それを冷たい抹茶がスッキリと洗い流す……! 完璧だ、完璧すぎる! コトネ嬢ちゃん、アンタ天才だがね!!」
オロチ会長はバンバンと机を叩き、大粒の涙を流して感動していた。
「ニャングル! この店はゴルド商会の全力を挙げてバックアップするがね! ドンガン地下帝国の流通ルートも全部使ってええ! 嬢ちゃん、ワシと特大の『専属提携契約』を結んでちょうだい!」
「ほ、ほんまですか会長!!」
「ええっ、いいんですか!?」
オロチ会長がポンッと指を鳴らすと、部下の黒服たちが分厚い契約書と、莫大な契約金(金貨の山)が入ったトランクを運んできた。
私が震える手で契約書にサインをした、その瞬間だった。
――ピロロロロロロロンッ!!
私の頭の中に、聞いたことのないファンファーレのような電子音が鳴り響いた。
同時に、私の体と、デパートの店舗全体が、まばゆい黄金の光に包まれる。
『顧客満足度、ならびに店舗の総資産額が規定値を突破しました』
『ユニークスキル【デパート】が進化します』
「え……?」
「しゃ、社長! 店が……店が膨らんでるぞ!」
ジークが目を剥いて指をさした。
光に包まれた木造の空き店舗が、メリメリと音を立てて巨大化していく。
基礎の石組みが大理石へと変わり、壁は輝くガラス張りへと変貌する。
そして、平屋だった建物は、あっという間に上へ上へと伸びていき――。
ズドォォォォォォンッ!!
光が収まった後。
ポポロ村の広場に現れたのは、現代日本そのものの、巨大で美しい『地上3階建ての近代デパート』だった。
「うおおおおおっ!?」
「なんやこれぇぇぇぇっ! 城や! もはや城やないか!!」
オロチ会長とニャングルが、アゴが外れるほど口を開けて見上げている。
入り口には自動ドア(魔導式)が設置され、店内にはピカピカのエスカレーターまで見えた。
「こ、これが……進化した私の【デパート】……!」
私の脳内に、進化した店舗の詳細情報が流れ込んでくる。
・1階:【食品フロア(デパ地下・生鮮食品・スイーツ)】
・2階:【婦人服・紳士服・生活雑貨フロア(衣服・タローマン商品・防具等)】
・3階:【レストラン街&屋上ビアガーデン】
「すごい……! これなら、ご飯だけじゃなくて、服や日用品も全部出せるわ!」
「やったでコトネはん! これなら各国の兵士たちに『特製迷彩服』や『高級魔導具』まで売りつけられる! ポポロ村はもう、世界一の経済都市や!!」
「……おっ。3階に休憩用のベンチと屋上庭園があるじゃねぇか。昼寝に最適だな」
ニャングルはさらなるビジネスチャンスに目を輝かせ、ジークはサボり場所が増えたことに満足そうに頷いている。
「どえりゃあタマゲタがね……。嬢ちゃん、いや『コトネ社長』! ゴルド商会はアンタに一生ついていくでよ!」
「ありがとうございます、オロチ会長! 皆様、新生『デパート・コトネ』をよろしくお願いいたします!」
こうして、ただの追放された令嬢の細々としたお店は。
数々の有能な仲間と、各国のVIPたちの胃袋を掌握し、ついに本物の『巨大デパート』へと進化を遂げた。
兵站を制し、経済を回し、武力で敵を粉砕する。
私の異世界デパート経営は、まだまだ最高のワクワクと美味しいごはんで満ち溢れている。
いざ、さらなる大繁盛へ向けて――第一章、堂々の完結!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
これにて第一章は完結となります!
地下のドン・オロチ会長(昭和のパチンコ屋社長風)への最高のおもてなしは『極上味噌カツ&小倉トースト』でした!
莫大な資金と契約を得て、ついにコトネのユニークスキルが進化!
平屋のカフェから、地上3階建ての『本物のデパート』へとクラスチェンジを果たしました!
これからは食品だけでなく、ブランド服や日用品の無双も始まります!
ここまでお付き合いいただき、心から感謝申し上げます。
少しでも「面白かった!」「第二章も読みたい!」「デパート行きたい!」と思っていただけましたら、
画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にタップして、コトネたちに最高の評価をお願いいたします!
皆様の星と【ブックマーク】が、第二章の執筆への何よりの原動力となります!
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!




