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婚約破棄された元パティシエ令嬢、追放先で【デパート】を開業!守銭奴商人と規格外護衛を雇ったら、三カ国の軍と胃袋を支配してました  作者: 月神世一


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「俺たちの飯の邪魔をするな!」三国同盟軍と自警団、デパート親衛隊として完全武装で駆けつける。

「俺たちの飯の邪魔をするな!」三国同盟軍と自警団、デパート親衛隊として完全武装で駆けつける。

 ジュワァァァッ。

 デパートの厨房に、甘辛い醤油ダレが焦げる極上の香りが漂う。

 私は、デパ地下の老舗うなぎ店から取り寄せた『特上うなぎの蒲焼き』を、ふっくら炊き上げたご飯の上に豪快に乗せていた。

「お待ちどうさま! 特上うな重、ご飯大盛りです!」

 私がテラス席に漆塗りの重箱を運ぶと、ジークは「待ってました」とばかりに割り箸を割った。

 パカッ。重箱の蓋を開けた瞬間、黄金色に輝くうなぎの蒲焼きが、湯気と共にその暴力的な照りと香りを放つ。

 山椒をパラリと振りかけ、ジークはうなぎをご飯ごと大きくかき込んだ。

「――――ッ、美味え……!」

 ジークが三白眼をわずかに細め、至福の吐息を漏らす。

 関東風にふっくらと蒸し上げられたうなぎは、箸で持てば崩れそうなほど柔らかい。口に入れた瞬間にトロリと溶け、継ぎ足しの秘伝ダレと極上の脂が、熱々のご飯と絡み合って喉の奥へと消えていく。

 勇者をフライパンでホームランした疲れなど、一口で吹き飛んでしまう美味さだ。

「コトネはん、ジークはん。うな重食うとる場合ちゃうで」

 ニャングルがキセルを片手に、遠くの土煙を指さした。

「なんか、エラい数の軍隊がこっちに向かってきとるわ」

 ドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!

 大地を揺るがすような足音と蹄の音が、ポポロ村の広場へと殺到してきた。

「コトネ殿! 無事か!!」

 先頭を切って駆け込んできたのは、重鉄鎖メビウスと巨大なアグニを構えたケンタウロスの自警団長・マンミアさんだ。彼女の後ろには、魔導バズーカや魔導自爆ドローンでガチガチに武装したポポロ村の自警団が続いている。

 さらに。

「俺たちの命の恩人(兵站元)を襲う不届き者はどこだァァァッ!」

「今日から『カツサンド定期便』が始まるっていうのに、邪魔する奴は俺たちの牙で引き裂いてやるガルルルッ!」

 ルナミス帝国軍・第七小隊のガンツ隊長率いる完全武装の部隊と、レオンハート獣人王国の毛皮を纏った兵士たちが、怒号を上げながら広場になだれ込んできたのだ。

「え、えっと……皆さん、どうしたんですか?」

「どうしたじゃない! 第一王子と勇者が、貴女のデパートを強引に制圧しようとしていると報告を受けてな。自警団だけでは手が足りないと思い、偶然近くにいたルナミス軍と獣人軍に声をかけたら、全員が『ふざけるな!』と血相を変えて駆けつけてくれたのだ!」

 マンミアさんが息を切りながら言う。

 どうやら、私が提供するデパ地下弁当の『サブスク契約』を結んだ兵士たちが、自分たちの飯(至福の時間)を奪われると聞いて、国境の任務を放り出してガチギレ状態で助けに来てくれたらしい。

「コトネ様! 敵はどこです! ゲロオムレツを作った帝国上層部だろうが、第一王子だろうが、俺たちの『特製ハンバーグ弁当』を奪う奴は反逆者だ!」

 ガンツ隊長が血走った目で剣を抜く。

 もはやルナミス帝国の兵士にとって、第一王子の権威よりも『コトネの弁当』の方が上に位置しているようだ。食の恨み、恐るべし。

「あー、皆さん。お気持ちは嬉しいんですけど、敵ならもう……」

 私が申し訳なさそうに広場の端を指さすと、全員の視線がそちらに向けられた。

 そこには、顔面にフライパンの平底マークをくっきりとスタンプされ、白目を剥いて気絶している勇者ゼロスと、その下敷きになってピクピクと痙攣している第一王子レオンハルトの姿があった。

 彼らが引き連れていた近衛騎士たちは、自警団の『魔導バズーカ』の銃口を向けられ、全員が綺麗に土下座をして震えている。

「「「…………え?」」」

 殺気立っていた三国同盟軍(親衛隊)と自警団の動きが、ピタリと止まった。

「あの、ジークさんがフライパンで一振りしたら、飛んでいっちゃって……」

「ズズッ。……社長、お茶くれ」

「はい、緑茶ですね」

 テラス席で悠然とうな重をかき込み、お茶をすする最強の護衛。

 マンミアさんとガンツ隊長は、その姿を見て滝のような冷や汗を流した。

「……あ、危なかった。もし我々がコトネ殿と敵対していたら、あのフライパンで山ごと消し飛ばされていたのか……」

「デパートの護衛、バケモノすぎんだろ……」

 その時。

 気絶していたレオンハルトとゼロスが「うぅぅ……」と呻き声を上げながら、ゆっくりと目を覚ました。

「い、痛ぇ……っ! 俺の、俺の顔が……っ!」

「き、貴様ら……よくも王族であるこの私を……っ! 近衛騎士団! こいつらを全員捕らえろ! 反逆罪で首を刎ねてやる!」

 レオンハルトが喚き散らすが、近衛騎士たちは土下座したまま顔を上げない。

 そして、二人はようやく周囲の異変に気がついた。

 自分たちをぐるりと包囲している、ルナミス軍、獣人軍、そしてポポロ村自警団の『殺意の壁』に。

「な、なんだこの大軍は……!? ガ、ガンツ! 第七小隊ではないか! 貴様ら、なぜここにいる! 早く私を助け――」

「黙れ! 俺たちの至福の弁当を奪おうとする国賊め!」

「ひっ!?」

 自軍の兵士から『国賊』呼ばわりされたレオンハルトは、情けない悲鳴を上げて後ずさった。

 ゼロスもまた、ステータスがレベル1のままのため、重い鎧を引きずって這い蹲ることしかできない。

「だ、誰か助けて……! 俺は勇者だぞ! 炎上神ワイズ様の加護が……っ!」

「ワイの『経済の暴力』で身ぐるみ剥がされ、ジークはんの『物理の暴力』でブチのめされ、最後は『コトネはんの飯に群がる軍隊』に包囲される。これぞ完璧な詰み(チェックメイト)やな」

 ニャングルがキセルを片手に、極悪非道な笑みを浮かべて二人の前にしゃがみ込んだ。

 彼の手には、真新しい『契約書』が握られている。

「殿下さん、そして勇者さん。アンタらは今、ウチの商会に莫大な借金がある状態や。王族の権力も、スポンサーの加護も、もうあらへん。せやから、体で払ってもらおか」

「か、体で……? な、何をする気だ!」

「ポポロ村が提携しとる『シーラン国』っちゅう海中国家があるんやけどな。そこで『マグローザ』っちゅう巨大な魚型魔獣を獲る漁船が、常に人手不足なんや」

「ま、まさか……!」

「せや。借金返済のための強制労働――『マグローザ漁船』への片道切符や。船内通貨は『K(ケツフキのK)』。チンチロリンで勝たな、一生陸には上がれへんで」

 ニャングルの宣告に、二人は「あ、あああぁぁぁぁっ……!」と絶望の底に突き落とされたような悲鳴を上げた。

 彼らは借金返済の契約書に無理やり拇印を押され、屈強な獣人兵たちに両脇を抱えられて、ドナドナと引きずられていく。

「や、やめろぉぉぉっ! 私は次期皇帝だぞォォォッ!」

「ワイズ様ぁぁぁっ! 助けてぇぇぇぇっ!!」

 二人の悲鳴は、ポポロ村の空に虚しく響き、やがて遠くへと消えていった。

   * * *

「よっしゃ! これで邪魔者はおらんようになったで! コトネはん、今日はウチの店を守ってくれた親衛隊の皆さんに、デパートのメシを大盤振る舞いや!」

 ニャングルの号令で、広場は一瞬にしてお祭り騒ぎへと変わった。

 私は【デパート】から、デパ地下の高級惣菜、お寿司の盛り合わせ、オードブル、そして冷えたビールや高級サケスキーを次々と取り出していく。

「うおおおおっ! マグロのトロだ! 口の中で溶けるぞぉぉっ!」

「この唐揚げ、肉汁がヤバいガルゥゥッ!」

「コトネ殿、この『ショートケーキ』という白い菓子、私にももう一ついただけるだろうか……?」

 ルナミス兵も獣人兵も、そしてマンミアさんたち自警団も、武器を置いて笑顔でデパ地下グルメを堪能している。

 敵味方の垣根なく、美味しいご飯の前では全員がただの『笑顔のお客様』だ。

「ぷはぁっ、最高だぜ」

 特上うな重を完食したジークが、食後のポポロコーヒーを飲みながら空を見上げた。

「社長。アンタの『デパート』とメシは、本当に戦争をなくしちまうかもしれないな」

「ふふっ。美味しいものを食べたら、誰だって幸せになりますからね!」

 愚かな元婚約者と炎上勇者の襲来は、結果として『デパート・コトネ』の防衛力を盤石のものとし、三国同盟軍の結束をより強固なものにしてしまった。

 辺境の村に開かれた小さなデパートは、いよいよ国家規模の重要拠点へと進化しようとしていたのである。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第13話、元婚約者&炎上勇者への【ざまぁ完了】です!

フライパンで粉砕された後、弁当の恨み(?)で駆けつけた三国同盟軍に完全に包囲され、ニャングルの手で「マグローザ漁船(強制労働)」へとドナドナされていきました。

船内通貨は『K』……二度と陸には上がれないでしょう(笑)。

そして、デパートの美味い飯で大宴会!

コトネの平和理論「美味しいものを食べれば争いはなくなる」が、まさに体現された瞬間です。

次回、この騒動を聞きつけた『地下のドン』がデパートに視察に訪れます!

ドンガン地下帝国のオロチ会長との特大契約で、コトネの【デパート】が進化!?

第14話をお楽しみに!

【読者の皆様へのお願い】

「マグローザ漁船行きワロタ」「うな重美味しそう!」「飯テロで世界平和w」と思っていただけましたら、

ぜひ画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にタップして、コトネのデパート宴会を応援してください!

皆様の評価ポイントが、最高のデザート(作者の執筆意欲)になります!

【ブックマーク登録】も、ぜひぜひよろしくお願いいたします!

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