【ざまぁ開始①】圧倒的な『法と経済の暴力』。守銭奴商人が元婚約者たちの資金源を合法的に完全凍結させました。
【ざまぁ開始①】圧倒的な『法と経済の暴力』。守銭奴商人が元婚約者たちの資金源を合法的に完全凍結させました。
ジークから放たれた規格外の殺気と、黄金に輝く『高級テフロン加工フライパン』の威圧感。
それを受けた第一王子レオンハルトと勇者ゼロスは、顔を青ざめさせながら後ずさった。近衛騎士たちの乗る馬は完全に泡を吹いて気絶している。
「ひっ……な、なんだ貴様は! 第一王子である私に剣を向ける気か!」
「剣じゃねぇよ、フライパンだ。お前らが社長とニャングルを侮辱したから、ちょっとこのままミンチにして今日のハンバーグのタネにしてやろうかと思ってな」
「ま、待てジークはん! ストップや!」
ジークがフライパンを振りかぶった瞬間、ニャングルが慌ててその前に飛び出した。
「ワイの信条忘れとらんか? 『喧嘩なんてアホのすること』や。血ぃ流して勝っても、後片付けに金がかかるだけやろ。ここはワイの『法と経済の暴力』の出番や。アンタはデザート(物理)まで待っとき」
「……ちっ。わかったよ」
ジークは舌打ちをしてフライパンを下ろした。
ホッと安堵の息を吐いたレオンハルトが、再び強気な態度を取り繕う。
「ふ、ふん! 命拾いしたな。ここはルナミス帝国の領土だ! 不法占拠し、我が軍の予算を不当に奪い取った悪徳商人どもめ、その店と財産を全て没収し――」
「あー、ちょっと待ってもらえまっか、殿下さん」
ニャングルは懐から、分厚い羊皮紙の束を取り出した。
そこには、魔法のインクで何やら複雑な文面がびっしりと書き込まれ、いくつもの印章が押されている。
「不法占拠っちゅうのは心外やな。このポポロ村の土地の権利、実は昨日、ワイら『ゴルド商会』が正式に買い取らせてもらいましたんや」
「は……? 買い取っただと? 帝国の土地を勝手に売買するなど無効だ!」
「せやろか? この村の地下にはドワーフの『ドンガン地下帝国』が広がっとってな。彼らの採掘権と地表の所有権が絡む複雑な土地なんや。そこで、ワイらはドンガン地下帝国、さらにアバロン魔皇国の特命全権大使を保証人として、この土地を『三国不可侵の国際特別自治区』として登記しましたんやで」
ニャングルが契約書を広げると、そこには燦然と輝く『ドワーフ王の印』と『魔皇国貴族の印』が押されていた。
「つまりや。今、殿下さんが武力でこの店を制圧しようとしたら、それは帝国が『ドンガン地下帝国』と『アバロン魔皇国』の両国に対して同時に宣戦布告をしたとみなされる。……近衛騎士の兄ちゃんら、それ、責任取れるんか?」
「なっ……!?」
背後に控えていた近衛騎士たちが、ザワッとどよめき、一斉に武器を下ろした。
たかが辺境の村を一つ制圧するつもりが、一歩間違えれば二カ国を相手にした全面戦争を引き起こすことになる。そんな責任、一介の騎士が負えるはずがない。
「き、貴様ら……軍を騙しただけでなく、他国と結託して帝国を売ったのか!」
「人聞きの悪いこと言わんといて。帝国軍への兵站(弁当)の供給は、前線の司令部(ガンツ隊長ら)と正式な契約を結んでやってる真っ当な商売や」
レオンハルトがワナワナと震える横で、今度は勇者ゼロスが鼻で笑いながら進み出た。
彼は配信用の見えない魔導カメラを意識しながら、大仰なポーズをとる。
「ふんっ、小賢しい法律の抜け穴など無意味だ! 要は『金』だろう? 貴様らがいくら権利を主張しようと、私のスポンサーである王家(レオンハルト殿下の派閥)の莫大な財力で、その借金ごとこの村を買い叩いてやる! 私のユニークスキル【マネー】の力は、資金が潤沢であればあるほど無敵のステータスを生み出すのだ!」
「あぁ、なるほど。アンタのその無駄にピカピカした鎧も、全部『金(課金)』の力っちゅうわけやな」
「いかにも! さぁ、いくら欲しい? 金貨一万枚か? それとも十万枚か!?」
勝ち誇るゼロス。
しかし、ニャングルの顔には、悪魔すらドン引きするような極悪非道な笑みが浮かんでいた。
「殿下さん、アンタの派閥、最近えらい羽振りがええらしいな。軍の兵器開発や、この勇者への『課金』のために、あっちゃこっちゃから莫大な借金しとるんやろ?」
「……それがどうした。次期皇帝である私の名義なら、いくらでも金は借りられる!」
「せやな。でも、その借金の『債権』……つまり貸し主の権利、全部ウチ(ゴルド商会)が買い取らせてもろたで」
「「…………は?」」
レオンハルトとゼロスの顔から、同時に表情が抜け落ちた。
「加えてや。先日、帝国軍と結んだ兵站の特大契約。あの契約書の第百二十八条、極小文字で書かれた『不可侵条項』を読み落としたんか?」
「ふ、不可侵条項……?」
「『帝国軍およびその関係者が、当デパートの営業を武力または不当な権力で妨害した場合、ゴルド商会は帝国が抱える全債務の一括返済を即時要求でき、それが不可能な場合は、関係者の個人資産を完全凍結・没収できる』……ってな」
パチンッ!
ニャングルが指を鳴らした。
同時に、彼が掲げたゴルド商会のシルバー商人の証(銀のプレート)が妖しく発光し、大気中の魔力を通じて、契約の『強制執行』が発動した。
――ピロリロリロリロッ!
突如、レオンハルトの腰についていた魔導通信石がけたたましく鳴り響いた。
「で、殿下ァァァァッ!!」
通信石の向こうから、王城の財務大臣の悲痛な叫び声が響き渡った。
『大変です! たった今、ゴルド商会を名乗る者たちによって、殿下の派閥の全口座、ならびに実家の領地の資産が強制的に凍結されました! 我々は、我々は完全に破産しましたァァァァッ!!』
「な……に……?」
レオンハルトの膝から力が抜け、ドサリとその場に崩れ落ちた。
だが、被害は彼だけではない。
「ば、馬鹿なッ!?」
勇者ゼロスが、自身のステータスプレートを空中に表示させて絶叫した。
彼のユニークスキル【マネー】は、スポンサー(王家)の資金と連動している。
その画面に表示された残高は、みるみるうちに減少し、ゼロになった。
【残高:0(課金切れ)】
【ステータス補正を解除します。レベル100相当 ➡ レベル1へ変更】
「う、ぐぉぉぉぉっ!?」
ステータス補正が切れた瞬間。
ゼロスは自分が着込んでいた無駄に重い『豪華な聖なる鎧(※重装)』の重量に耐えきれなくなり、無様なカエルのように地面に這いつくばった。
「お、重い……! 身体が、動かない……ッ!」
「当たり前や。基礎体力がレベル1のガリガリの兄ちゃんが、そんな重たい鎧着て動けるわけないやろ」
ニャングルがキセルをふかしながら、哀れな二人を冷たく見下ろした。
「ワイの『経済の暴力』、味はどうや? アンタらはもう、一文無しのただの犯罪者や。さっさと帰って、マグローザ漁船(強制労働)にでも乗るんやな」
完全なる合法的手続きによる、資産の完全凍結。
権力も、財力も、ステータスも、全てを失った愚か者たち。
しかし。
ゴッドチューブの配信カメラが回っている手前、そして炎上神ワイズとの契約がある手前、ゼロスはこのまま引き下がるわけにはいかなかった。
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
ゼロスは血反吐を吐きながら、必死の思いで腰の『聖剣(※課金アイテムだが切れ味だけは本物)』を引き抜き、立ち上がった。
「金がないなら、奪えばいい! ここで貴様らを皆殺しにして、このデパートの物資を奪い取って全て換金してやる! 俺は勇者だ! こんなところで終わってたまるかァァァッ!」
完全に理性を失い、強盗と化した勇者が、フラフラの足取りで私とニャングルに向かって突進してくる。
「……あーあ。結局、バカは痛い目見ねぇとわからねぇか」
ドンッ!
私とニャングルの前に、頼もしい広い背中が立ち塞がった。
「出番だぜ、社長。ニャングルの前菜(経済制裁)は終わった」
ジークは首をゴキッと鳴らすと、黄金の闘気を纏わせた『デパートの高級テフロン加工フライパン』を構えた。
「ここからは、メインディッシュ(物理制裁)の時間だ」
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
第11話、【ざまぁ開始①】でした!
ハリボテの権力と財力を笠に着ていたレオンハルト殿下と勇者ゼロス。しかし、ニャングルの用意周到な『法務トラップ(不可侵条項)』と『債権買収』の前に、完全合法に全資産を凍結され、大・破・産!!
課金が切れてレベル1に戻り、鎧の重さで這いつくばる勇者の姿は滑稽の一言です。
しかし、逆ギレして強盗に成り下がった勇者に対し、ついに最強の番犬が動きます!
次回、第12話『【ざまぁ開始②】最強護衛ジークの「フライパン無双」。ハリボテのステータスを一撃で粉砕してみました』をお楽しみに!
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