↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

11.ワクワク! ヨロズ商店

 狩人の基本原則。


・異界のモンスターを神戸に押し留める。

・現実世界の人間に異界の知識を与えてはいけない。

・安易にランツ・クネヒト・ループレヒトへ助けを求めてはならない。

・死ぬ気で働き、死ぬまで動け。

 

 アオさんに教えてもらった情報をまとめてみた。なるたけ早く学生気分から脱しなければならないからだ。


 狩人になると決めたのだから。


 まぁ、怖いもんは怖いけれど。胸に手を当てて心臓の音が早い。ここにきてからというもの、どこかフワついて落ち着かない。


 幼少の頃、引っ越しを機に人間関係が一新された。初めて入る教室は知らない人達だらけで。すでに関係性が出来上がっていたから、友達作りに苦心した憶えがある。


 初めての学校、初めての教室、初めての環境。当時は何をするにもドキドキの連続で、家に帰ったらよく疲労からの熱を出したものだ。


 懐かしい感覚、実は嫌いじゃなかったりする。


「ビルの一階は他業者に貸し出している。ヨロズ商店、行ってみる? 値のつくモンスターの部位を売買したり、必要な装備や物品を購入したりするお店。ようは何でも屋さんだね」


 チャリンとドアベルを鳴らす。雑貨屋さんみたく品々が、秩序なく並べ置かれていた。


 軽く見渡してみるだけで心躍る。数字が五十あるボンボン時計に、知らない形の世界地図。妖精の骨格標本に、スプーンが突き刺さっている何の生首!?


 どれもが奇々怪々なアイテムたち。効果のほどは皆目見当もつかないが、流石にワクワクさせられた。


「男の子ってこういうの好きだよね」


 アングラ。ドキドキ。目元キラキラ!


 怪しげな匂いがする。少しキツめのお香が炊かれているのだ。元を辿ると番台に店主が腰掛けていることに気がついた。


「げ」


 その風体があまりに奇抜で、オブジェだと勘違いしていたのだ。


「やっほー、ヨロズさんだよー。ご新規さんだねー。いらっしゃーい」


 気だるげな女性の声音だった。寝巻き感満載なダボダボのスウェット姿。髪は伸ばし放題でボサボサだ。

 とろんと垂れた瞳は焦点が合っておらず、クマも目立つ。顔立ちは美人なはずだが、化粧気はなく引きこもり特有の病的な肌白さ。沢山のそばかすが意外に似合っている。


 着飾ればとっても可愛らしくなるだろう、ダウナーお姉さんだ。


 だが、そんな特長をまるごと彼方へ押しやるだらしない表情!

 なんとヨロズさん、常にながい舌をだらんと垂らしていて、唾液を器に収集していたのだ。ばっちぃ!

 犬みたいだ。


 常にベロだしのせいか、話し方もなんだかたるんでいてだらしない。


「変な人だ!」

「そう、変な人。あまり関わらない方がいいよ。理由も聞くな、脳が汚れる」


「言ってくれるねー。これから何度も、私のお世話になっていくというのにさー」


 何度も、何度もね。つぶやくヨロズさんの声音は、やけに扇情的だった。

 変な人は見ちゃいけないと、アオさんが僕を引き寄せた。


「この子は今日から我が社に入った新人君。早速獲物を仕留めてみせたんだぜ」


「ほー。そりゃすごい」


 アオさんはアイテムポーチからゴブの耳をいくつか取り出し、番台に置いた。


「ゴブリンは魔素を体外に発散する術がない。魔物のくせに。逃げ場を無くした澱みは奇形としてあらわれ、結果その部位には多くの魔素が含まれている。例えば耳とかね」


「とはいってもー、品質が悪いからー、魔素ランプの燃料くらいにしかならんけどー。ひーふーみー、のべ三十個。三千円ね〜」


「円なんだ……」

 神戸だしそりゃそうか。

 異世界だもんゴールドとか、ゴッズとか、そんなのを期待していた。


「チリメン・モンスターの給与形態は、衣食住の現物支給。一円も稼がなくたって、食うに困ることはないよ。さらにお金が欲しいのなら、モンスターや賞金首でも倒して、自分で換金しろってことだね。分かりやすくていい」

 

「たぁくさん稼いでね〜」


 三千円、大金だ。僕の三ヶ月分のお小遣いだ。


 とはいえ命をかけた割には、安すぎるようにも思う。頑張らねば。


「では、そろそろ死地だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。