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祭りの後の…ひととき

次の日、目が覚めると、もうしっかりと朝日が昇っていて、眩しいくらいだった。

そういえば昨日、ムギさんが今日は良い所に案内してくれるって言ってたけど…。どんな所に連れて行ってくれるかな?

そんな風に楽しみに思っていると、誰かに背中のお肉をギュッと掴まれた。びっくりして跳び上がって振り返えると、そこには「頭が割れそう…。」と言って死にそうな顔をしたチャム姉さんがいた。

「チャム姉さんっ、大丈夫?どうしたの?誰か呼んで来ようか?」

オレが慌てると、さっきから掴んだままのお肉を力いっぱい引っ張られた。

「ちょっと静かにして!頭が痛いのよ…。」

オレが尚更オロオロしだすと、欠伸をしながら起きてきたリク兄が冷静に教えてくれた。

「リオ、大丈夫だ。チャムチャムは二日酔いなだけだから。お酒を飲み過ぎると、次の日まで残っ手しまうんだ。それで、頭痛がしてるだけだよ。だから、寝てれば治る。」

「そうなんだぁ。でも…、今日は良い所に連れて行ってくれるってムギさんが言ってたのに…。」

オレが残念そうにしていると、リク兄が動き出した。

「何か、気付け薬になるような物があるかもしれない。ちょっと聞いて来るから、水でも飲ませ解いてやってくれ。」

そう言ってリク兄は、足速にテントから出て行ってしまった。


しばらくすると、リク兄はムギさんを連れて戻って来た。

「チャムチャムさん、大丈夫ですか?早くこちらを飲んで下さい。二日酔いには、これが一番効きますから。」

そう言って、ムギさんは木のコップに入った限りなく黒に近い緑の液体をチャム姉さんに渡した。

「うわっ、何これ?すごい色なんだけど!それに、めっちゃ臭いし…。ホントにこれを飲むの?」

「はい、一息に飲んでしまえば、案外大丈夫ですよ。それを飲んで、小一時間ほど寝てしまえば、起きる頃にはスッキリしているはずですよ。」

「ゔ〜、ホントに飲まなきゃダメ?」

チャム姉さんはすがるような目で、ムギさんを見ていたけど、ムギさんはニッコリと笑っているだけだった。

そうすると、しびれを切らしたリク兄が「いいから飲め!」と言いながら、無理矢理チャム姉さんの口に流し込んだ。

「んん〜〜!!!」

無理矢理飲み込まされたチャム姉さんは、手足をバタバタさせて、唸り声を上げた。その直後、白目を剥いて、そのまま倒れるように寝てしまった。

「えっ、今の大丈夫なの?ホントに小一時間で目覚める?」

チャム姉さんの様子を見ていたオレは、慌てふためいた。

「ええ、大丈夫です。これを飲んだ直後はだいたいこのようになりますが、目覚める頃にはちゃんと元気になります。」

あまりに自信満々に答えるムギさんを見て、オレとリク兄は納得するしかなかった。


オレとリク兄は、チャム姉さんが目覚めるまでの間、ムギさんとゴマジイさんに招待を受けて、ゆっくりと朝食を頂いた。ゴマジイさんはリク兄の食欲に驚いて、腰を抜かしそうになっていたけど、後でお土産の木の実なんかをいっぱい持たせてくれた。

そして、ムギさんが「そろそろチャムチャムさんが目覚める頃です。」と言うので行ってみると、本当にチャム姉さんの目が開いた。

「あ、チャム姉さん、大丈夫?気分はどう?」

「あたし…、いつの間に寝てたの?なんか、朝起きて二日酔いだったのはおぼえているんだけど…。その後、なんで寝てたのか思い出せないのよねぇ。」

「元気になったのなら、そんなことおぼえてなくても問題ない。」

リク兄は、チャム姉さんが薬を無理矢理飲まされたことを忘れているのをいいことに、誤魔化していた。まあ、もしおぼえていたら、チャム姉さんのことだから絶対にパンチが何発か飛んできていたと思う。リク兄は命拾いしたんだな。

「とこらでリオ、ムギさんに案内してもらう所があるんだろ?チャムチャムも目覚めたし、早々に準備を終わらせて、行こうじゃないか。」

「う、うん!そうだね!!」

リク兄が明らかに話題を変えたのは分かったけど、オレは合わせることにした。

「じゃあ、ムギさんに頼んで来るよ!」

そう言って、オレは足速に2匹から離れた。


ムギさんに案内されている途中で、ゴマジイさんと会った。ムギさんが何やらコソコソと話していると思ったら、「ワシも一緒に行こうかの。」と言って、ついて来てくれた。杖をついているゴマジイさんが気軽について来てくれるってことは、思ったよりも近い所に行くのかもしれない。

出発前に、ムギさんにどんな所に行くのかたずねてみたけど、「着いてからのお楽しみです。」と言われてしまったのだ。そんな風に隠されると、余計に気になるもので…。こっそりとゴマジイさんに聞いてみたけど、すぐにムギさんにバレてしまい、ゴマジイさんの口を覆ってしまった。さすがうさぎ、どんなに小さな声でも拾ってしまうらしい。

「ほらほら、もうすぐ着きますよ。せっかくなので、ここからは皆さんに目を閉じて頂きます。」

そう言ってムギさんは、リクあとチャム姉さんをオレの両肩に乗せた。そして、「ほら、こちらです。」と言いながら、オレの手を引いて導いてくれた。手を引かれるまま10歩くらい歩くと、突然立ち止まった。

「着きましたよ。では、ゆっくり目を開けて下さい。」

ムギさんに言われるまま、ゆっくりと目を開けると…。

「う、眩しい…。わぁー、すごい…きれい!」

そこには辺り一面に様々の色の花が咲き誇っていた。

「どうですか?綺麗でしょう。この花はビオラと言うのですかわ、よく見ると花びらが何かの形に似ていると思いませんか?」

「え?似ている?う〜ん、なんだろう…。」

「リオ、あたしがよく見てあげるから、あんた少し姿勢を低くしなさい。」

チャム姉さんに言われるまま、オレは顔が花に付くくらいに低い姿勢をとった。

「何かしらねぇ…。リックわかる?」

「う〜ん、強いて言うなら、僕が知ってるビオラとは少し形が違う気がするな。なんか上に長いというか…。」

「あ、オレわかった!上の2枚の花びらがうさぎの耳と一緒で長いんだ!!」

「はい、正解です!私たちうさぎにのように見えるでしょう。よく分かりましたねぇ。偉いです。」

ムギさんはオレを褒めながら、頭を撫でてくれた。

「えへへ、うちの庭にもあった花だったんだ。ただ、めぐやかーちゃんに見せてもらった花と少し違うなって思ったんだ。うちにあったのは、もうちょっと丸っぽかったから。」

「そうですかぁ。このビオラの花は、ここ何年かで急にあちこちに増え始めたのですよ。見ての通り、私たちうさぎに似ていたので、皆で少しずつこの場所に集めて植え直したのです。そうしたら、いつの間にかこんなにたくさんになったのですよ。ですから、ここを『うさぎ花公園』と名付けました。」

「へえー、こんなにたくさんよくやったわねぇ。」

「はい、大変でしたが、今ではここが私たちの村の立派なシンボルなんですよ。ねぇ、村長。」

「そうじゃ。ここはワシらの自慢じゃ。」

「あなたたちが昨夜、珍しい花をお探しだと聞きましたので、うさぎの形をしているとはいえ、ビオラという花はさほど珍しくもないのですが…。目の保養にはなるのではと思いまして。」

「ありがとう、ムギさん。オレ、花が大好きなんだ。めぐもかーちゃんも花が大好きで、一緒にいろんな花を見たんだ。」

「おー、お主花が好きなのじゃな。珍しい猫じゃのう。む?そういえば、この東の山と森全体を統べる長老様がこの近くを住処にしていたのぅ。珍しい花なら、その長老様に聞けば何か分かるやもしれぬ。」

「ああ、そうですね。私としたことが、失念しておりました。さすがです、村長。そしたら、私が長老様の所までご案内致します。」

「ホント?ありがとう!!ゴマジイさん、ムギさん。」

「よかったな、リオ!荷物も全部持って来ていることだし、早速案内をよろしく頼む。」

「分かりました、私について来て下さい。」

ゴマジイさんとは、うさぎ花公園でお別れした。

ムギさんの案内で、オレたちはその長老様の所に向かった。

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