戸惑いの中で…新たな出会いが
「それでは、順番に紹介していきますね。」
シリルについて行くと 、何やらとても賑やかな声が聞こえてきた。よく聞いたことのある 鳴き声 もあれば、初めて聞く声もあった。
「まずここは 、鳥たちのエリアです。」
そう言われて トンネルをくぐると、すごく空が高くて広いところに出た。
そこには、色とりどりの鳥たちがいて、みんなそれぞれに楽しそうに過ごしているように見えた。オレがよく知っている 、めぐが"チュンチュン "と言っていた鳥もいっぱいいて 、みんなで何かつついていた。
他にも いろんな鳥がいたけど、一番びっくりしたのはすごく カラフルな鳥たちが、それぞれ枝に止まって歌を歌っていたのだ。けど、みんな違う歌を歌っているようで、声が混ざってすごい迫力だった。何て言うか…、耳が壊れるかと思った。なぜ、あの子たち自身は平気だったのだろう。 そして、シリルも平気な顔で 、オレの案内を続けていた。 シリルって、実はすごいやつなのか?
次に向かったのは、なんだか小さな毛むくじゃら がいっぱいいるところだった。シリルの説明によると 「ハムスター 」というらしい。何でも、子供を産みやすい動物らしく、 みんな大家族で過ごしている そうだ。
だからか、 小さな体にしてはすごく大きな家がたくさん並んでいた。家と言っても、中がほとんど 透けて見えるようになっていて、一軒の家に驚くほどたくさんの子たちが一緒に暮らしているようだった。いろんな家がある中、で1つだけ みんな同じところがあった。
それは、1階はみんな天井が高くなっていて、そこには必ず走って ガラガラ 回す 大きな丸いおもちゃがついていた。何がそんなに面白いのか 、みんな 次々に入れ替わるようにそのおもちゃでただ走り続けていた。中には、2匹一緒に走っていて、片方がコケてもそのまま走り続け、 コケた方が大変なことになっている家もあったりした。オレは、それを見ているだけで目が回りそうだった。だけど、 シルルは「今日も 励んでますね。」とか言いながら ニコニコしていた。シリルによると、このおもちゃをガラガラ 回してもらっているおかげで、川から水を汲み上げることができてすごく助かっているらしい。
次の場所は、とてもたくさんの木があって、 花もたくさん咲いているところだった。
ここにも、小さな動物がたくさんいるらしいけど、 さっきのところとは全然違うところばかりに見える。ハムスターのエリアは、平らのところに家があってあとは 、透明のトンネルだらけだった。
でもここは、オレも昔 めぐと一緒に花を見に行った、何とか公園とかいうところにも少し似ている気もするけど…、とにかく 木がたくさんだ。特に驚いたのは 、こんなにたくさん 木があるのに、よく見ると全て違う色や形の実がなっていたことだ。それも、オレが見たことないようなものばかりだった。
「ここの子達は、警戒心が強いので、あまり大きな音を立てないように気をつけてくださいね。もう少し入っていくと、 あの子たちが食事場所にしている湖のほとりに着くので、 そこでならみんな見れると思いますよ。」
シリルからそう 説明を受けながら、背の高い草や花に隠れるようにして進んでいった。いくら 警戒心が強いと言っても、こんな風に隠れながら近づいて行ってしまったら、見つかった時にすごく怖がらせることになると思うけど…。シリルは、どうするつもりなんだろう…。
「着きました。 リオくん 、実は 君に直接 紹介したい子たちがここにはいるんです。」
そう言ってシリルは、オレにはここで待つように言って 、湖の方に歩いて行ってしまった。
紹介したい子達って、どういうことだろう。 オレは猫の中でも身体が大きい方だと言われていたのに…。警戒心の強い子たちなら尚更、怖がられるのかもしれないのに…。
そんな風に考えているうちに、シリルが戻ってきた。よく見ると、 シリルの両手の平に何か小さなのが1匹ずつ乗っているように見えた。
「お待たせしました 。君に紹介したいのは、この子たちです。"リス"という種族の "シマリス"という種類の子達ですよ。 実は、君のお兄さんとお姉さん なんですよ。」
「え?…オレ、猫じゃなかったの?」
「アッハハハ、 そういうことじゃないわよ。 どこからどう見ても 、あんたは猫よ!ただ、 あんたが私たちの弟っていうのも ホント。」
「あぁ、よくわからない って顔ですね。 では、私から説明しますね。
こちらの いかにも 姉御肌の子がチャムチャムさん 。そして 、さっきからずっと黙ったまま大人しくゆったり気質の子がリックさんです。
この子たちは、昔 あなたのめぐさんが子供の頃に 一緒に暮らしていた子たち なんです。ですから 、君にとってのお姉さんとお兄さんなんですよ。」
「まあ、そういうこと 。それで、あんたの名前は?」
「あぁ、オレはリオだよ。えっと、 オレより前に めぐの家族だったやつがいたなんて、知らなかったから…、その…驚いて。で…でも 、めぐの一番はオレだから 、そこは譲れない。」
「アハハハ、面白い子! まあ、あんた めっちゃめぐの匂い ついてるもんね 。 四六時中 、めぐにべったりで膝に乗ったり、抱っこしてもらったり、ずっと寝るのも一緒だったもんねぇ〜。あたしたちもたまにあの水たまりに行ってたから知ってるわよ。」
「ゔ…。」
そんなところを見られていたなんて、 さすがに少し恥ずかしいかもしれない…。
「チャムチャム、 せっかく会えた僕らの弟なんだから、あんまりイジメたら かわいそうだよ。」
ここに来て、リック という 兄がやっと喋りだした。
「それにこの弟、 めぐの匂いも強いけど…、懐かしい匂いもしてる。ねえ、何か持ってるでしょ?」
え、 持ってるって何を…?
今持っているのは、 シリル から 朝 受け取った リュックとケース 、それに呼び鈴くらいで…。
「あ 、リュックの中に何か入ってる。」
リュックの中に手を突っ込み 、一番最初に気になったものを引っ張り出すと、赤いハートのクッションが出てきた。
「これ 、めぐの匂いがする!オレの好きな ふかふかだ!!めぐが編んでくれたのかな?
あれ?でもまだ もう1つ…これは。」
もう一つのものも出してみると、毛糸で編んである 青い花の模様のふわふわの毛布のようなものだった。この毛布からも、めぐの匂いがしていた。これって…。
「やっぱりあったね。僕たちも最後のお別れの時に、めぐが僕たち用のお布団を作って、送り出してくれたんだよ。」
「そう、 リックの言う通りよ。あの子はまだ子供だったけど、リックが旅立つ時 泣きながら一生懸命作っていたわ…。もちろん、私の時もあったけどね。」
そうか、 このハートのクッションと花模様の毛布はオレへの布団 だったのか。
寒がりで寂しがり屋のオレが、 めぐの匂いと毛糸の手編みのぬくもりで、どこでも暖かく眠れるように って作ってくれたものだったのか…。
このことを知って、 不安で迷いかけていたオレの心は決まった。
「シリル、オレやっぱり決めたよ。オレは、虹の花を探す旅に出る!めぐは、オレが"どこに行っても寂しがらずに眠れるように "って、これを作って持たせてくれた。 最後まで、オレに愛をくれた…。
だから、オレもそれに応えたい。虹の花を探しながら、他にも珍しい綺麗な花があれば、 持ち帰って めぐに送るんだ!虹の花が見つかるまでは、そうやって 旅を続けるよ!!」
興奮して、一気にまくし立てて話したせいで、息が上がってしまった。
「ふん 、ビビリで寂しがり屋のくせして、ホントに 1匹だけで旅に出れる気でいるの?
まだまだ子供ね!仕方ないから 手を貸してあげる!!」
「え…え?」
オレが戸惑っていると、リック兄さんが補足してくれた。
「チャムチャムが言いたかったのは…。
心配だから、『私たちがその旅について行ってあげる』っことだよ。もちろん、僕もそのつもりだよ。君とめぐの為にね。」
「おやおや、思っていたよりも、スムーズに話がまとまってしまいましたね。私の出る幕はありませんでしたね。」
シリルの言葉を聞いて、オレはその時やっと気付いた。シリルが、何故わざわざオレをここまで案内してきたのかも、この2匹の兄と姉を、オレに引き会わせたのかも…。
「シリル、ありがとう。…オレ、頑張るよ!」
シリルは静かに微笑んでみせた。




