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11/14

洞窟の中で出会ったのは…

オレたちが長老様とムギさんと別れて、出発してから一日が経とうとしていた。長老様の話では、"色変りの桜"があるらしい桜の森は、一度山を下りその先の山を登った先にあるということだった…。聞いただけで、ゾッとするような距離だと思った…。

でも、大変なのは最初から分かっていた事だからと、もう一度自分を奮い立たせた。それに長老様曰く、桜の森の桜は何故か分からないけど、一年中咲いているのだとか…。だから、オレたちがそこに向かうのにどれだけ時間がかかったとしても、桜は待っててくれるって事だ!

それだけでも、正直ありがたい。なにしろ、オレたちの足じゃ…(というか、実質オレだけの足だけど)かなり時間が掛かりそうだから…。オレはコノハさんみたいに飛べないし、ムギさんみたいに時速80kmで走れるわけじゃない。それに、両肩にはリク兄とチャム姉さんがいる…。本当に何故、オレだけが毎回歩いているのか…。

「リオくん、今日はこの辺で泊まりましょう。リオくんもたくさん歩いて疲れたでしょう?私も少し羽を休めたいです。」

「うん、そうしよう。オレも疲れちゃった。」

「では、ゆっくり休めそうな場所がないか、ちょっと見て来ますから、リオくんはここで少し待っていて下さい。」

オレはコノハさんを見送ったと同時に、力尽きて座り込んだ。本当にすごく疲れた…。山を登っていたときも辛かったけど、下るのも辛い…というか、下る方が足にくるかもしれない…。

そんな風にオレがヘバっていると、早々にコノハさんが戻って来た。

「リオく〜ん、お待たせしました!良い所を見つけましたよ!!こっちです。」

オレは力を振り絞って、コノハさんについて行った。

そうして、やっと辿り着いたと思ったら、目の前には大きな横穴があった…。

「え…?ここ?今日ここで寝るの?」

「はい!雨風が防げますよ!!それに、壁があった方が、家の中みたいで安心するじゃないですか。」

コノハさんが余りにも興奮して、嬉しそうにしているので、オレは何も言えなかった…。

「何言ってんのよ!雨風が防げるって?テントがあるんだから関係ないでしょうが!!それにどう見ても、ただの洞窟よ。家には見えないわよ。リオ、あんたも言いたいことがあるなら言ってやんなさいよ!我慢する必要なんてないんたから!!」

チャム姉さんな言葉に、コノハさんはシュンとしてしまった。そんなコノハさんを見たら、ますます口を出しづらくて、モジモジしていると…、リク兄が耳元で「大丈夫だから、言ってごらん。」とポンポンと頭を撫でてくれた。

「オレ…、この洞窟?っていうの…少し怖い…かも。」

「そうか。ちゃんと言えて偉かったな、リオ。そしたら、ここは間をとったらどうだ?この洞窟の入ってすぐの所にテントを置いて、その中で寝る。そして、それ以上中には行かない。どうだ?」

「そうですね。私はリオくんがそれで大丈夫ならば、それでけっこうですよ。」

「オ、オレもそれなら…。」

「よし!じゃあ決まりだな。」

リク兄のその言葉を合図に、オレたちは それぞれ動き出した。

「誰もあたしの意見は聞いてくれないのね。」

洞窟の中には、チャム姉さんの言葉だけが響いていた。


オレたちが夕食を終えて ゆっくりする頃には、外は真っ暗になっていた。やはり入り口とはいえ、洞窟の中だといつもより夜が一層 暗く感じた。

「ん?何か聞こえます。」

「え?何も聞こえないけど?」

「いえ、確かに聞こえます!私たち ミミズク種やフクロウはとても耳が良いのですよ。なんて言っても、顔全体で音を集めて聞くことができますからね。そして 、左右で耳の穴の高さが違うので、音の発生源をたどるのも 得意なんですよ。」

「得意気に話すのは結構だけどね。今はそんな場合じゃないわよ!リック、どうする?」

「う〜ん、僕たちは何も聞こえないからなぁ…。おそらく、まだ それなりに距離があるんだろう。コノハさん、それはどんな音で、どこから聞こえてきますか?」

「えっと、これは…鳴き声ですかね。そして、洞窟の奥から聞こえてきますね。」

「え?お、奥?じゃあ、この洞窟にはオレたち以外にも何かがいるってこと?オレ…怖いよ。」

オレは、怖くて縮み上がってしまった。オレは怖いの苦手なのに…。どうしてこんなことになるんだ…。

「それで、鳴き声を聞いてどんな生き物がいるかわかりますか?」

「う〜ん、キューキューというような声 なんですけど…。私は本などでの知識は多い方ですが、実際に見たことのある動物は少ないので…、鳴き声だけでは…。 ただ、何かに困っているような、悲しそうな声のように感じます。」

「そうですかぁ…。何かに困っている…ですか。まあ、 こちらに敵意とかがあるわけじゃなさそうなら、とりあえずは安心かな。」

「困っている」と聞いて、オレがムギさんとした約束を思い出していた。「困っている方を私の代わりに手助けしてあげて下さい。」ムギさんはそう言っていた…。

怖い…、すごく怖い…けど、オレはムギさんと約束したんだ!強くなるって決めたじゃないか!!

オレは、なけなしの勇気を振り絞って言葉を吐き出した。

「ねぇ…、困っているなら…助けてあげようよ。」

思い切って声を出したつもりだったけど、震えてしまってあまり響かなかった。

「リオ、おまえ怖がっていたんじゃないのか?」

「こ、怖いよ。…今でも怖い。けど…、オレたちだって、ムギさんや村長さんに長老様それにコノハさんにだって、助けてもらってここまで来られたし…。こ、今度は、オレたちの番かなって…。」

「レオくん、あなたはなんて偉いんでしょう。私、感動しました!私もリオくんに賛成です!!」

「ふん、さすがあたしたちの弟ね!あたしも手伝ってあげるわよ!!」

「う〜ん、みんながその気なら、僕も手を貸すよ。じゃあ、まずはその声のする方に行ってみるしかないな。」

「みんな、ありがとう!!」

オレは、みんなの優しさがとても嬉しい。よし!怖がっている場合じゃない。みんなが一緒なら大丈夫だ!!

オレたちは、基本的に夜行性で夜目の効く、コノハさんを先頭に、真っ暗な洞窟の奥を目指すことにした。洞窟の中は、空気がじっとりと湿っていて、何だか 肌寒かった。奥に行けば行くほど、それが増していく。最初は本当に真っ暗く感じたけど、少しずつ 目が慣れてきたおかげで、だいぶ 歩きやすくなってきた。

それに、両肩には リク兄とチャム 姉さんが居てくれる。"大丈夫、怖くない"オレは、そう自分に言い聞かせながら進んでいた。

すると…、オレの鼻先に"ピチョンッ"と、洞窟の天井から伝ってきた雫が落ちてきた。オレはびっくりして飛び上がった。リク兄とチャムお姉さんは、そんなオレに驚きながら、地面に振り落とされてしまった。

「いったぁ。ちょっとリオ!あんたビビリ過ぎよ!!」

「ご、ごめん。鼻に雫が落ちてきたのにびっくりしちゃって…。大丈夫?」

「大丈夫だ。リオ、僕らがついてる。そんなに怖がる必要はない。」

「う、うん…。」

気を取り直して、もう一度リク兄とチャム姉さんを肩に乗せ 直して歩き出そうとすると、コノハさんが急に止まって オレの頭の上に着地した。さすがにちょっと重い…。

「コノハさん、どうしたの?」

「ここから先は、皆で固まって慎重に進みましょう。とても近いです。私は風切り音を消して飛ぶことができますが、リオくんも足音を出さないように歩けますね?」

「うん、オレも一応 猫だからね!実際に狩りをしたことなんてないけど…。それでも、そういう歩き方は知ってるよ。」

「では、私もなるべく リオくんの目線に合わせて低く飛ぶので、リオくんも私のすぐ後ろにピッタリとくっついて歩いて来て下さいね。」

「うん、わかった。」

小声での会話が終わると、コノハさんはすぐに飛び始めたので、オレも慌ててそれに続いた。

それにしても、地面の湿っぽさがどんどん増してきたように感じる。地面がすごく硬いから、まだ泥濘んではないけど…。このまま進んで、地面がドロドロになってしまったらどうしよう…。足が泥だらけになるとか…、想像するだけでゾッとする。オレはこれでもキレイ好きなんだ。

「リオくん、心の準備はいいですか?もうそこを曲った先に居るはずです。」

「え?う、うん。わかった。」

オレは深呼吸を一つして、コノハさんの後に続いた。

すると、本当に角を曲った先に何か居る…。目が慣れてきたとはいえ、この暗さと距離ではよく見えない。でも、これ以上は近づけない。コノハさんも止まった。この距離なら、オレにもちゃんと鳴き声が聞こえたけど、オレたちに気付いたのか…すぐに鳴き声は止んでしまった。

「あのぉ、私たちは旅をしている者ですが。この洞窟の入り口で休んでいたら、あなたの鳴き声が聞こえたもので…。何かに困っているのなら、私たちで良ければ力になります。ですから、そちらに行ってもよろしいですか?」

コノハさんはまたオレの頭の上に止まり、向こうに居る子を刺激しないように、優しくゆっくりと声をかけた。けれど、それでも警戒させてしまったのか、全然返事が返って来ない。

「え、えっと…オレ、リオって言います。猫です。

…う〜んと、いきなりで怖いかもしれないけど…、ここに居るのは、オレのことを助けてくれてる優しい仲間なんだ。だから、全然怖いことなんてないから。

君を探しに来たのだって、君の鳴き声を聞いて悲しそうで、困っているみたいだったから…。その…、助けられないかなって思ったからで…。だから、もう少し近くに行ってもいいかな?」

上手くまとめられなかったけど、オレの気持ちを正直に言ったつもりだ。これで、少しでも伝わればいいんだけど…。

すると、奥の方で影が少し動いたのがわかった。少しは、こちらの気持ちが伝わったのかもしれない。でも、まだ完全に信用してくれてもいないみたいだ…。その気持ちはオレもよくわかるから、無理にみんなで近づいて怖がらせたくもない…。どうしたら…。

「リオ、僕とチャムチャムを降ろしてくれ。僕ら2匹は身体が小さいから、相手もさほど恐怖を感じることはないだろう。だから、まずは僕らだけで近づいて行ってみようと思う。」

「え、でも…、まだ相手がどんな子かわからないし…。」

「大丈夫よ!あたしたちはリスよ。逃げ足だけは速いから!!」

「まあ、そういうことだ。いざとなれば、僕だって素速く動けるから。」

絶対ウソだ!リク兄が今まで素速かったことなんて一度もなかった。寧ろ、リスとは思えないほどのんびりで、すぐ疲れてしまうところしか見たことがない…。まあ、それはオレにも言えることなんだけど…。

オレが迷っていると、コノハさんが助け船を出してくれた。

「では、こうするのはどうですか?リックさんとチャムチャムが近づいている間、私はいつでもすぐに飛んで行けるようにスタンバイしておきます。それなら、いざという時すぐに助けられますし、安心でしょう?」

「…わ、わかった。それでお願い!」

「よし!決まりだな!!ゆっくり降ろしてくれ。」

オレはリク兄に言われた通り、相手を刺激しないように、ゆっくりと静かに2匹を両肩から降ろした。

「じゃあ、今から僕らリスの2匹だけ、そっちに行くから。君よりも大分小さいから、怖くはないだろう?」

リク兄はチャム姉さんより前に出て、水音をたてないように一歩一歩ゆっくりと近づいて行った。

やっぱり、こういう時のリク兄はとても頼りになる。ただ、奥に行けば行くほど水笠は増しているようで、降ろしたばかりの頃は、リク兄たちの膝が隠れるくらいの水笠だったのに、今では身体の半分くらいが水に沈んでいた…。オレだったら耐えられない…。

しかし、リク兄たちがあの水に耐えてくれたお陰で、無事あの子の目の前まで行けたみたいだ。

「どうだ?全然怖くないだろう?僕たちは君を助けに来たんだ。話してくれないか?何がそんなに悲しくて泣いていたんだ?」

「…ボク、お家に帰れなくなっちゃったんだ。」

リク兄が優しく語りかけると、相手の子は少しだけ答えてくれた。オレたちの所まで、かろうじて聞こえる程度だったけど、しっかりと聞き取れた。

「そうか。帰れなくなったというのは、迷子になったということか?それとも、何か事情があって帰れないのか?」

「えっと…。ボク…遊んでたら、いつの間にか知らないところにいて…。帰り方がわからなくなっちゃったんだ…。」

「わかった。僕たちが力になるよ。だから、もう泣かなくても大丈夫だ。」

「そうよ!あたしたちみんなが助けてあげるから、元気を出しなさい。」

「う、うん…。ありがとう。」

よかった、どうやら話がまとまったみたいだ。

「とこらで…、もうテントまで戻らない?あたし、もう溺れそうなんだけど…。」

よく見ると、話がまとまったことで安心して緊張が抜けたのか、相手の子が少しずつ動くようになった。でもそれと同時に、動きに合わせて小さい波が起きていた…。

本当に小さな波だけど、身体の小さいリク兄とチャム姉さんにとっては大きいようで…。ただでさえ、身体の半分が水に沈んいるのに、波が起きるせいで、顔ギリギリのところまで水がかかり始めていた…。

「だ、大丈夫?早く戻って来て!!」

「わかってるわよ!水笠がすごくて動きづらいのよ!!ていうか、リオあんたが迎えに来なさいよ!!!」

「え!オ、オレは無理だよ!!そんなに水がある所…行けないよ!!!今でもギリギリなのに…。」

「もう、図体ばっかりデカイくせして!ホント怖がりね!!」

「じゃあ、ボクの背中に乗って!ボク、水大好きだから、平気だよ!!」

オレとチャム姉さんのやり取りをずっと黙って聞いていたと思ったら、突然あの子は腹ばいになって動き出した。そして、リク兄とチャム姉さんを背中に乗せ、こちらまでスィ〜と滑るようにして近づいて来た。

そうしてくれたお陰で、やっとオレたちにも相手の姿がちゃんと見えるようになった。

しかし、その姿はオレが全く見たことのない動物だった…。暗くてよく見えないけど、全体的に暗めの色なのかもしれない。そして、顔は小さめで、すごく長細い身体をしていた。尻尾も長いけど…オレより少し太めかな?

「ああ、やっと分かりました!あなた、コツメカワウソですね。さすがにあの距離では、私にも判別は出来ませんでしたが。ここまで近くで見ることが出来れば分かります。ただ、コツメカワウソがこんな陸地にいるのはとても珍しいです。あなた迷子とのことでしたが、相当な距離を移動したのですね…。」

「う、うん…。そうみたい…。」

やっと、泣き止んで元気になってくれたのに、コノハさんが現実を突きつけてくれたお陰で、また不安そうな顔に戻ってしまった。

「だ、大丈夫だよ!!朝になったら、オレたちと一緒に君のお家を探そう?ね?」

「うん、…ありがとう。」

コツメカワウソくんは、オレの言葉にまた笑って答えてくれた。本当は、「コツメカワウソってどんな動物?」とか、「お家ってどんな所にあるの?」とかいろいろと聞きたいことはあったけど…。

一刻も早くこんな水浸しの所から離れて、暖かいテントの中に戻りたいから…、今は黙っておいた…。

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