穿ち、墜ちる
~イズとバトラが戦闘している頃~
「あの……」
「ん?どうした?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあって……ゴーニャさんって何でこの森に来たんですか?」
「ああ、ちょっと人を捜しにな」
「そうなんですね……見つかりそうですか?」
「ああ!見つかりそうだ!だから、君が気にすることは―」
ゴーニャの言葉が途中で終わり、本人も空中で止まった。
「……ゴーニャさん?」
ユハが声をかけたが反応はなく、ゴーニャはただ一点を見つめていた。
「……見つけた」
ゴーニャはポツリと呟く。
「見つけたって、何をですか?」
「っああ……すまない。今、捜していた人を見つけたんだ。しかもその人は、君の目的地にいる」
「……なら!」
「ああ!行くぞ!」
そう言った直後、ゴーニャはユハを置いて一人凄まじい速度で飛んで行った。
「……え?ちょ、ちょっと待ってくださーい!」
◇ ◇ ◇
~炎の柱が現れる少し前~
シヒリ樹海に突然発生した濃霧の中では、バトラが濃霧を生み出した本人である、オルア・パレンリから報告を受けていた。
「結界が壊せないって……破壊用の"隔破釘”はどうなったんだよ」
「ポキリ、と根元から逝きました」
「……マジで?」
「マジです」
それを聞いたバトラは大きなため息をついた。
「報告書に書くことが……多すぎる……」
「ですね。……にしたって今回の任務、何かいつもとおかしくないですか?」
「まあ、そうだな。何を捜索するのかを上に聞いても、『黒髪の男の捕縛』とソイツが持ってる『武器の破壊』だけしか言わなかったんだよな……作戦の概要もアタシたちに伏せられてることなんて今までになかったのに」
「?……ウブレジェーさんでも分からないんですか?」
「ああ……アタシらはいつもみたいに室長が持ってきた研究やってたんだよ。そしたら副室長が血相抱えて研究室入ってきて『コレを使って今すぐ対象を追跡しろ』って言って黒いボロ布渡してきたんだよ。で、理由聴いたら『お前が知る必要はない、今すぐやれ』って言われてよ、しぶしぶ言われたことやって今につながるってワケだ」
「……やっぱおかしいですね。実行する側の人間への情報共有をしないって……そんなの道理に合わないじゃないですか」
「ああ、アタシたちのような特別な立場の人間にも言えない何かがあるんだろうな。……まあ、それについて何も考えずに追求するほど馬鹿じゃねえ。アタシたちは黙って任務を―」
「"橋針線”」
「!?」
突如、上空から炎を纏った何かが急接近する。
それにオルアは驚きつつも回避の態勢を取る。
「"LYNZSSH”」
しかし、バトラは回避よりも先に攻撃を上空に打ち上げた。
小さな炎と巨大な拳が衝突する。
その瞬間、爆炎と共に巨大な火柱が立ち上がる。
その火柱は拳を飲み込み、爆風を生み出し、周囲の木々をなぎ倒していく。
「……ッ!ウブレジェーさん!」
「大丈夫だ!」
「……いつの間に」
「衝突する瞬間にヤベぇと思ったから、急いで避けたんだよ。ってか集中しろ、新手だ」
そう言われたオルアが火柱へと目を向けると、その中に人影があることに気づいた。
「……来るぞ」
「うっす」
二人が攻撃の構えをしたと同時に、人影も攻撃の構えを取る。
「"楽好歌”」
「"TOARUP”」
オルアがその言葉を聞いたと同時に、すぐ横でガンッと音がした。
すぐさまオルアが横を向くと、炎の剣を持つ獣人の男と緋色の光を纏ったバトラが小競り合いをしていた。
「我が王をどこに隠した……!」
「何のことだよ……ってかお前は誰だ……よォッ!」
そう言ってバトラが獣人に殴りかかるが、獣人はそれを剣を使って弾いた。
隙だらけになったバトラに獣人が切りかかろうとしたが、緋色の手に足を掴まれ前に倒れた。
それを好機と見たバトラが"LYNZSSH”と唱えた。
しかし獣人の下に緋色の魔法陣が出現した直後、獣人の体から爆炎が発生した。
さらにその直後にその場が爆発し、爆風が周囲を駆け抜ける。
(クソッ……!肺が焼けるほどに熱いし痛ぇ!……なんだアレ)
バトラが驚きのあまり目を見開く。それを見て驚くのに無理はなかった。
なぜなら、その目の先では未だに『爆発』が続いていたからである。
ドオン、ドオンと音を立てて佇むその爆発は、まるで何か意思が宿っているかのようにゆらゆら揺れていた。
「……"住塁烙”」
『爆発』から声が微かに聞こえたかと思うと、その『爆発』がバトラめがけて突進する。
「なんじゃそりゃ……!"LATLVIK”!」
バトラがそう唱え、両掌を押し出した。すると巨大な両掌が出現し、迫ってくる『爆発』を受け止めた。
その様子を見ていたオルアは、ただ見ていることしか出来なかった。
(クソっ、ウブレジェーさんを助けに行きたいが、あの中にどうやって入る?俺じゃ足手まといになるだけか?どうすればいいんだ……!)
「どうにかしてあの男を……」
「"心星”」
その声と共に、バトラたちが競り合っている場所の上空に巨大な青白い剣が顕れた。
「また誰か来やがった……!」
バトラが反応したと同時に上空の青白い大剣は『爆発』をめがけて急速に落下を始めた。
それを感じ取ったのか『爆発』はバトラとの競り合いを止め、その規模を小さくしていく。
その小さくなった『爆発』から獣人の男が出てきたと同時に剣が先ほどまで爆発があった地点に刺さり、青白い光と共に爆ぜた。
(出てきた!反撃といこうか!)
バトラが獣人の男の元へと駆けだした。
しかし、獣人の男は駆け寄ってくるバトラを気にせずに空を見ていた。
先ほど、大剣が墜ちてきた空。その上空から声が聞こえる。
(なんだ……この音?いや、これは……声?)
バトラもそれに気づき、歩みを止めた。
段々とその声は大きくなり、そして―
獣人の男をめがけて何かが墜ちた。
「何だ……!?」
何が起きているのか分からないバトラが声を出す。
砂埃が舞い、その中からバチバチと音と共に声が聞こえる。
「久しぶりだなクソ男……!」
「そういう君も久しいな!いつぶりだ?いやそんなことはどうでも良いか!僕たちにとっては時間は無限のようなものだ!」
誰かと獣人が話す声が聞こえる。
砂埃が晴れ、彼らの姿が現れる。
そこにはメイド服を着た桃髪の女と腕に炎を纏った獣人の男がいた。
「お前と一緒にするな……!ゴーニャ・ライレイ!」
「なぜだい?君も長寿の者ではあるだろう?シケリ・キエンテ!」
読んでくださりありがとうございます。第12話です。最近アンダーテールの良さに再び氣づきました。




