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黒刀の勇者  作者: 阿化佐棚
シヒリ樹海編
11/14

化け物

「"DONWE” …!」

 バトラがそう唱えると、大小様々なサイズの緋色の円が8つの大きな円になり、氷塊を囲む。

 その円から淡く緋色に光る人間の拳が顕れたかと思えば、氷塊へパンチを立て続けに打ち込み始めた。

 ドドドと音を立てて氷塊へ連撃を与えるうちに、氷塊には亀裂が入った。

 それを見たバトラはニヤリと笑みを浮かべ、攻撃の勢いを強める。

「おいおい意外と脆いじゃねェか!拍子抜けだなぁ!?」

 バトラがそう啖呵を切ったすぐ後に、氷塊に大きな亀裂が入った。


「!?」

 その瞬間、亀裂から紫色の何かが漏れ出ていることにバトラは気づいた。

「なんだコレ…誰(・)の(・)魔(・)力(・)だ(・)…?」

 そう思ったのも束の間、氷塊にさらに亀裂が入った。

 その直後、氷塊は複数の大きな破片となって砕け散り、魔力が周囲を包み込む。

「くそッ」

 バトラは悪態をつきながら、素早く緋色の腕を防御に転じた。

 そのおかげでバトラがいる場所に氷塊は来ることはなかった。

 それと同時に、バトラは周囲に満ちている魔力が尋常ではないことに気が付く。

(この魔力、ヤベぇ!凄まじい程の悪意を感じる!コッチを害す気しかねえな!?)

 そう思ったバトラはすぐに行動に移す。


「"LYNZSSH(リンゼス)”」

 そう唱えた瞬間、バトラの足元に緋色の円が顕れ、それと同時に掌がバトラを乗せて空へと上がる。

 掌はある程度上がったところで静止した。

「…思ったより、魔力は広がってねェのか…?」

 バトラはそう呟き、下を確認した。

「…ッ!」

 バトラが何かに気づき、急いで体を反らす。

 次の瞬間、槍のように鋭い氷がバトラの体のすぐ上を通過した。

「ッぶね…ッ!?」

 そう言いながら体を戻したバトラは目を見開いた。


 そこには別の氷の槍が数本、バトラの目と鼻の先にあったからである。

「チッ!」

 舌打ちをしたバトラは避けられないと悟ったのか、顔の前で腕をクロスさせ、少し身を屈めた。

 そのすぐ後に、バトラの腕と腹に氷の槍が2本ずつ刺さる。

「がッ!」

 血反吐を吐き、後方へ倒れ、掌から墜ちる。

 しかし、墜ちる最中に体をねじり、氷の槍が体に4本刺さっているにも関わらずバトラはその足で着地した。


「…ふー」

 深呼吸をして緋色の手に氷を抜かせ、警戒しながら魔力で回復を始めた。

 それと同時に周囲を覆っていた魔力も晴れ、その中からイズが現れた。

 しかしその姿は先ほどまでとは違い、右頬の一部や左の手背などが氷に代わっていた。

 その姿はまるで、氷に身体を侵食されているかのようであった。

「…アンタ、化け物かなにか?」

「お前みたいな形(なり)のヤツに言われたかねェな」

「そう…それで、どうかしら。そろそろ撤退したっていいんじゃない?それ、結構痛かったでしょ」

「ああ、バッチリ効いたぜ。でもな、アタシは仕事で来てんだ。引くに引けねェ事情があんだよ。ガキはまだ知らねェだろうがな」

「…じゃあもう一回その体に氷ブッ刺してあげる!」

「おう、やれるモンならやってみろ!次は喰らわねェぞ!」

 そうお互いに叫び、二人は臨戦態勢に入る。


「"シロトラ”」

「!?」

「…」

 誰かの声がどこからともなく聞こえてきたかと思うと、霧が通常ではありえない速さで周囲に満ち始める。

「誰!?」

「やっと戻ってきたか…」

 そう二人が反応する数秒の間にも霧はさらに濃くなり、とうとう二人はお互いが完全に見えなくなった。

「…ちょっと遅かったんじゃないか?オルア」

「すんません。ここの結界、意味わからな過ぎて時間かかっちゃいました」

「…いや、別にいい。結界が壊せたのなら結果オーライだ。とりあえず今―」

「ウブレジェーさん。違うんです」

「…何が?」

「ここの結界、結局壊せなかったんです」




 ◇ ◇ ◇




「…結局、逃げたのね」

 イズはそう言いつつ、その場にへたり込む。

「はぁぁ~…つっっっかれたぁ…これからどうしようかしら…」

 イズは考えを巡らせるが、良いアイデアが思いつかないまま時間が過ぎる。

 それに耐えかねたのかイズは立ち上がり、霧の範囲外に行こうと歩き始めた。

(この霧、何か違和感はあるんだけど、特に害がある感じではないのよね…)

 霧の性質に不思議を感じながら歩くうちに霧が薄くなり、段々と周囲が晴れてきた。

(ここは…結界の『核』の部分からかなり離れてるわね。なるほど、霧に入ったモノの座標をごちゃごちゃにしたのね…)

 そう納得しながら、イズは次の一手を考える。

(先にユハと合流した方が…良いかしら。シケリの方に行っても、私じゃ足手惑いになるだけだし…)

 そう考えたイズがユハを捜そうと魔法を使おうとした時だった。


「ッ!?」

 突然周囲が明るくなり、イズは驚きの顔を見せる。

 何が起きたのかと思い、周囲を確認したイズは己の目に入ったそれに言葉を失う。

 彼女の目に入ったものは、巨大な炎の柱。

 それはイズが先ほどまで居た結界の『核』の方角に鎮座していた。

 それと同時に、周囲の木のいくつかが突然炎に包まれる。

「な、何よ…これ」

 イズは狼狽えながらも、必死に今の状況を飲み込もうとする。

 しかし、そんな彼女を差し置いて森は炎に包まれていった。

「…ッああもう!」

 その様子を見たイズは我慢できずに、炎の柱へと全速力で走り出した。

(ユハを捜さなきゃいけないのに…!なんで今日に限って変なことがこんなに!?)

 そう心の中で愚痴を叫びながら、彼女は森を駆ける。


 この先にいる者の、策であるとも知らずに。

読んでくださりありがとうございます。第11話です。今回ちょっと短めです。最近dアニメストアの契約を切りました。結局、けいおんと呪術廻戦見ただけで使わなくなっちゃったんでね…

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