生気溌剌な火
「"MAPFER”」
そう唱えたバトラの傍に無数の緋色の円が出来る。
「さあ、とっとと終わらせようじゃあねえか」
「同感ね」
そう返されたバトラがニタリと笑った。
その直後、イズが一気にバトラとの距離を詰める。
(先手必勝!魔法を使わせる前にもう一発ブッ飛ばす!)
そして氷を纏った拳をバトラの胴体へと打ち込む。
その直前にバトラは何かに引っ張られるように、その拳を左へ躱す。
「ッ!?」
イズが驚いたのも束の間、彼女の左頬に強い衝撃が走る。
そして続けざまに右頬、その直後に腹に攻撃が入った。
「がぁッ!」
声を漏らし、思わず膝をつく。
(うぅ…気持ち悪い…今の鳩尾に入っちゃった…)
「おーい、もう終わりか?」
上から声が聞こえたイズが見上げると、薄ら笑いを浮かべてバトラが見下ろしていた。
「だ…まれ…!」
「あーあ、いい感じに鳩尾に入ったな?それは気の毒だなァ」
そう言ってしゃがみ、イズの髪の毛を掴む。
「このままお前を縛って連行する。おとなし―」
「"極雹” 」
イズがそう呟いた瞬間、その周囲が暗くなる。
「あ?…なッ!?」
すぐに異常に気づいたバトラはその場から飛び退く。
その直後に巨大な氷の塊がイズ諸共、周囲の全てを押しつぶした。
◇ ◇ ◇
(なんだこの人…?犬耳がついていて…あれは、人魂?)
ユハは突然現れた犬耳の少年に警戒する。
「…誰ですか」
「僕の名前はゴーニャ・ライレイだ!よろしくな!!!」
ユハの質問に犬耳の少年は元気な声で答える。
「…えっと―」
「僕は君に会いに来たんだ!…あーすまない、君の名前を教えてほしい」
「ユハ・ソノトです」
「ユハというのか!よろしくな!!!」
「あ…はい…」
その勢いに気圧されるユハだったが、ゴーニャはそれを気にしていないようだった。
「なあユハ、君は今この樹海を出ようとしているよな?」
「は…はい」
「そうだろう!こんな鬱蒼とした樹海なんて君も嫌だろう?だが心配しないでくれ、君たちはこの樹海を出ることができる!」
「ほ…本当ですか?」
「ああ!信じてくれるかい?」
「いや突然現れた人の言葉なんて、信じられるわけないじゃないですか!」
「はっはっは!確かにそうだ!君の言う通りだ!!!」
元気いっぱいのゴーニャに、ユハは警戒を強める。
「ここに何しに来たんですか。さっきから怪しすぎますよ!」
「まあ落ち着け!僕も君たちとは争いたくはないんだ!」
「は…?あんなことしておいてよくそんな言葉を吐けますね!?」
ユハのその言葉にゴーニャはポカンとする。
「あんなこと?…ああ、あいつらか。安心して良いぞ、僕は奴らとは違う!」
「いやだから信じれませんって!あいつらの仲間じゃないという証拠がないじゃないですか!」
「ふむ…証拠か。よし、それなら今から僕が奴らを倒し、君の仲間に会わせてあげよう!」
「は…?」
ユハの困惑の顔にも気にせず、ゴーニャは傍に浮かぶ火の玉に自らの手を突っ込んだ。
「"不壊皇”」
直後、ゴーニャの体が燃え上がる。
「ちょっ火が…!」
「ん?ああ、安心しろ!これは僕の魔法だからな!僕自身がダメージを負うことはない!!!」
そう言いながらゴーニャの体がさらに激しく燃え上がる。
「ユハ、今から僕は空から君の仲間を捜す!」
「そ、空から!?」
「ああ!だが空を飛んでいる間、僕は音が聞こえなくなる!だから何か気になることがあれば、そこの"照得留都の火”に向かって喋ってくれ!そうすれば君の声が僕にも届く!!!」
「…いや待ってください。なんで一緒に行動することになってるんですか!?あなたが怪しいのは変わりませんよ!?」
「ふむ…じゃあユハ、君は一人でこの樹海のどこかにいる仲間を見つけ出すつもりなのかい?本当に?」
「そ…それは」
ユハが反論しようと言葉を詰まらせるのを見て、ゴーニャは言葉を続ける。
「…ユハ、君は本当に君一人だけの力で出来るのか?人の手を借りなくてもいいのかい?」
(確かに…俺だけじゃこの森で二人を捜せない…この人は怪しさ満点だけど、ここは仕方ないか…!)
ユハはゴーニャの目をまっすぐ見据える。
「分かりました。一緒に捜しましょう。今は猫の手も借りたいです」
「…?」
しかし、ゴーニャからは返事をせず、不思議そうな顔をしていた。
「…あの?」
「あ、ああすまない。少し聞きなれない言葉を使われたものでな、少し混乱した。…よし、ユハが助けを求めるのなら、僕は喜んで君に力を貸そう!!!」
ゴーニャはそう宣言した後、傍に浮かんでいた"照得留都の火”にもう一度手を突っ込み、引き抜く。
「…それ、もしかして俺も手を突っ込まなきゃいけないんですか?」
「いや!この動作は僕だけでいい!!!…まあ別に手を突っ込んだって構わないぞ?この火は熱を持たないからな!!!」
「へ、へえ…」
好奇心に駆られたユハは"照得留都の火”に近づき、手をかざした。
「おお…本当だ、熱を感じない」
「すごいだろう?ああ、でも僕には触らない方がいい!熱はないが火傷するからな!!!」
「は、はい!わかりました!」
そう答えたユハにゴーニャは溌剌とした笑みを向けた。
「よし、それじゃあ出発するぞ!とりあえず…僕たちはどこに向かえばいいんだ?」
「なにも考えてないんですか!?」
「ああ!どうしたものか!!」
暫く二人は考えた後、ユハが声を上げた。
「うーん…あっ」
「どうした?」
「イズと一緒に行くハズだった場所…確か少し開けていた場所だった気がします…!」
「なるほど!つまりこの樹海の開けている場所を捜せばいいんだな!!!」
「はい!」
「よし!じゃあとりあえず、この樹海の開けている場所をしらみつぶしに当たるぞ!ついてこい!!!」
◇ ◇ ◇
マジで何なんだよこのガキ。
世界情勢に興味がねえアタシでも流石に"氷の魔法”を使う魔法使いが、世界中の魔法使いの中で5本指に入るぐらいにクソ強えことは知っている。
だからこのガキはおかしいんだ。
普通、同じ魔法はこの世界に存在しないハズだろ。
というか、このサイズの氷を生み出すのにどれほどの魔力を使った?
こんな見上げることが出来るレベルの氷塊を作るなんて普通じゃ無理だ、人間もエルフもドワーフも獣人も…生み出す過程で魔力が切れちまう。
…このガキは普通じゃねえな。
なにか裏がある、そんな気がする。
だが、自分の氷塊で潰れやがった…流石に死んだか。
とりあえず、オルアを呼んで今後の事を―
「待ちなさいよ」
「!?」
こいつ、マジか…この状態でまだ生きてんのか?
「しぶといな…てめえ」
「ありがとう、それは素直に誉め言葉として受け取っておくわ」
「そうかよ」
…こいつ、どこからどうやって喋っている?
氷なのに、中の様子が何も見えねえ。
何かマズイ気がする…ならば先手必勝といこうか!
「"DONWE” …!」
読んでくださりありがとうございます。第10話です。私がこの物語を書き始めて1年が経ちました。これからも牛歩で頑張ります。1年で10話って遅すぎるな…




