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香奈は夏休み、出来る限りずっと大翔と過ごした。
大翔は退院したばかりだから、しばらく部活に出なくて良いらしい。
二人でいろんな時を過ごした。
海に行った。
綺麗な夕日を二人で眺めた。
買い物に行った。
お揃いのペンダント、ずっと付けておくことを約束した。
大翔の家に行った。
初めて肌を重ねる事になったわけだが、大翔が例の大人モードではなかったら、多分香奈はパニックになっていただろう。
二人は濃厚な時を過ごした。
今までお互いがじれったく感じた分、ずっと触れ合っていた。
そして九月、二学期が始まった。
香奈はいつものようにちはる、紗羅、志保に囲まれていた。
「あんた…ちょっとキレイになったんじゃない?」
「え?ホントに?うわーい!」
「恋でもしてんの?
恋するオトメはキレイになるって言うし。」
「やーだ、もうキレイだなんて!」
「小綺麗って言った方が正しいかもね。プ
ま、人並みに目が当てられるようになったかな。」
「なッ!」
「夏休み連絡取れなかったし、どうせ引きこもってたんでしょ。
この根暗ァー。」
言いたい放題だ。
香奈はもう限界域に達した。
「うるさいうるさいうるさぁ〜い!」
夏休み前と同じように、三人が黙った。
顔を上げてみると、一枚のプリントが差し出されていた。
「はい。」
大翔だ。
「…ありがと…」
大翔はクスッと笑って香奈の首筋に手をのばした。
大翔の手によってお揃いのペンダントがスルスルと出てくる。
「ちゃんと付けてたんだ。」
「…ん、まぁ…。」
大翔が香奈の頭に手をのばし、引き寄せた。
大翔のカッターシャツから同じペンダントが出てくる。
友人三人は絶句した。
大翔はそんな三人を横目に香奈のおでこに軽くキスをした。
「また後で、な。」
「うん。」
この後香奈が友人三人だけでなく、クラスの女子(伊織以外)に囲まれたのは言うまでもない。