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第2部 神の喪失  作者: 小島もりたか
1章 霊視装置
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二話 波紋(1)

「ねぇ、研究所にあるお母さんの『アレ』使っていい?」


突然のミライの質問に、私は目を瞬く。


「アレって……『アレ』?」

「そうそう、『アレ』。無限増殖させてる『アレ』」

「ツバサちゃんたちがOKならいいけど……」


あまり気が進まない。


「もうさ、装置のベースをお母さんの脳にしてみようかなって思って……まぁ、正確には今のベースもお母さんなんだけど」

「んあー、なるほど?」


実は、ミライのような皮膚にこだわった機械的生命体以外の、生物的な細胞部分は私の遺伝子がベースである。


……遺伝子というか、私の卵子から培養された細胞だけど。


そして、その元になる卵子は、最初に提供した卵子から生成された卵嚢から生まれている。不足分はその卵嚢から生み出された卵子から再生成され……となかなかの卵子生成ループが完成している。


そして、その卵子ループは研究所で行われており、ごく一部の人間しか知らない最高機密情報だったりする。


『お母さんは、ほとんどの機械的生命体の母だね』


と以前ミライに笑いながら言われたが、そこまで目立つことが好きではない私としては、あまり嬉しいことではないというか……恥ずかしい。


ちなみに村瀬に卵子提供のお願いをされた時、悟は「茜の遺伝子が後世まで残る」とかなり乗り気で、地味に引いた。


当時の開発メンバーで女性は私のみ。村瀬がお願いしやすいのも私、ということで依頼が来たのだけど……まぁ、承諾するしかなかったよねぇ……。


「僕、思ったんだ。僕が知る中で一番正確に霊視ができるのがお母さんなら、もう複数人の脳の複合系じゃなくて、お母さんの脳を再現した方が正確だって」

「私の脳が間違えてる可能性は?」

「そこは判明した時点で一旦誤検出にすればいいんじゃない? 今の複数人の結果をベースにお母さんの脳波に絞り込めば、今のモヤだけじゃなくてもっと詳細な表現ができると思うんだ」

「なるほど……それはやってみてもいいかも……」


これからどうやってモヤから詳細化するかで悩んでいたところだった。

ミライの案は試してみる価値があるかもしれない。


「じゃあ村瀬さんとツバサちゃんたちに生成依頼しておくね」

「……分かった」


これから村瀬の研究室の一角で私の脳が生成されるのかと思うと、少しぞわりと鳥肌が立った。



そして翌年の冬、霊視装置のベータ版が完成した。


「……おじいちゃん、おばあちゃん!」


悟が画面を見て顔を綻ばせる。

画面には悟の後ろに、二つのぼんやりとした人影が映っていた。色もあり、なんとなく人としての輪郭や表情も分かる。


水中で目を開いた時のようなぼやけた視界――うっすらとモザイク処理がかかった状態、とでも言えばいいだろうか。


とにかく、プロトタイプ版と比較すると格段に精度が上がっていた。


流石ミライである。


「うわーっ、プロトタイプの時も視認できて嬉しかったけど、これは知ってる人なら何となく分かるから、もっと嬉しい……!」


悟が目尻を指で拭った。


「本当はもっとはっきり見せてあげられるといいんだけどね……」

「繰り返しやっていけば、もっと精度上げられるよ。今回は一旦成果を出しただけだからね」


鼻をフンっと鳴らしながらミライが言う。


「お姉ちゃんとお母さん、こんな風に視えてるの?」

「そうだよ。お父さんにはひいじいちゃんとひいばあちゃんの霊がついてて、お父さんを守ってるんだよ」

「すごーい。あたしには誰かいるの?」

「ユキにはきれいなお姉さんが時々いるよ。あと猫と犬とタヌキとアルパカ」

「動物多くない? ペンギンはいないの?」

「あー、いる。いたわ……。ユキ、動物に好かれやすいよね」

「生き物好きだからうれしい」


優希に映してと言われて映してあげる。


「あ、これはワンちゃん?」

「そうそう。今いるのは犬と、猫と、アルパカ」

「タヌキとペンギンは?」

「今はいないよ。いつもいるわけじゃないから」

「ざんねん」


と言いつつも、優希は動物たちが映っているあたりを見て「いつもありがとー」と笑っていた。



ベータ版も動作確認してから、一つをクロウリーさん宛てに郵送する。

届くと、目をギラギラさせたクロウリーさんとケラーさんから、ビデオ通話で動作確認の結果報告があった。


「霊視装置のおかげで、パワーストーンの研究が大幅にしやすくなりました」

「それは良かったです」


――何か進展はありましたか?


と言いかけて口をつぐむ。藪から棒になりかねない。


「(アイゼンベルク様を霊視装置で映すと、画面がおかしくなります。不具合でしょうか?)」


訝しむような視線でケラーさんが問いかけてくる。

心当たりはありすぎるが、できるだけしらを切る。


「どうでしょうか……。実際の映像を記録していただき、送っていただけますか?」


ケラーさんは「(分かりました)」と頷くと、両手を組み、画面越しに私をまっすぐ見た。


「(……茜さんは、アイゼンベルク様に何か視えていましたか?)」

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