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第2部 神の喪失  作者: 小島もりたか
1章 霊視装置
6/19

一話 成功(5)

謎の機械を持ったそれなりの大所帯の人間が高級車から降りてきて、神社で謎の行動をするのは、それなりのホラーだろう。


それなりに大きな神社の社務所へ挨拶に行くと、意味が分からなかったようで不思議そうな顔をされた。


「えっと――つまり、うちの神社の神様が見られるってことですか……?」


私より年上の女性が、怪しむような目つきで私たちを見る。


「お母さん、お化けが視えるんだ。小さい頃からお化けを証明するために、ずっとあの霊視装置の発明を目標に頑張ってたの。今日は開発の支援をしてくれた人にお披露目してて、ここの神社に神様がいるから、実験させてほしいんだ」

「あらぁ……」

「ちなみに、お母さんとお父さんは機械的生命体の開発者の一人だよ」

「あら、あそこの……ありがとうございます。よかったら、私も見せていただいてよろしいですか?」

「はい、どうぞ――」


――ミライ、コミュ力強すぎ!


子どもならではの説得力だと思いつつも、悟と目を合わせて苦笑いする。ミライは私たちにドヤ顔していた。


「――これですね。御神体の鏡の少し上くらいです」

「うわー! うちの神社の神様が見られるなんて……」

「(こちらの機体も同じ出力なので問題なさそうですね)」


クロウリーさんが楽しそうに境内を散策している。御神体を見つめては目を擦り、肉眼では見えないことを確認しているのが、なんとなく面白かった。


「アイゼンベルクさんは、日本の神様はどういう認識になるんですか?」

「(我々が信じている主の別の側面として考えています)」

「ここにいる神様は優しい部分、あっちは厳しい部分……のような感じでしょうか?」

「(そうですね。あなた方日本人は神をそれぞれ別の存在と認識している一方で、我々は神をとてつもなく巨大な存在と信じています)」


そうしてアイゼンベルクさんは満足そうに笑んだ。


「(我々があなた方と出会えたのも、神の導きであり、意志と考えています。主は我々人類に姿を見せようとしているのです)」

「……」


そのあたりまで行くと、私たちにはついていけない宗教観だ。

しかし、このあまりにも整いすぎたアイゼンベルクさんの宗教観には、どこか違和感を覚えてしまう。


――何もかも綺麗に整えた建前にしか思えない……。


でなければ、アイゼンベルクさんが管理しているミラ島で、本当に神を信じている人がいないわけがない。


――アイゼンベルクさんが霊視装置を使って求めているものが分からない。


パワーストーンも利用しようとしている。

恐らく、霊視装置があれば研究は格段に進むだろう。


ミラ島の住人からの信仰を集めている。

彼が持つ情報構造体は、神のそれに限りなく近い。


そして、クラゲ侵攻時の狂気……。

彼は人類の破滅を望んでいる……?

でも、何で?


彼は富豪だ。お金に困ったことはないはずだ。


幼い頃、家族に問題があった……?

でも、それで人類全体を恨めるだろうか?


神が直接助けてくれなかったから?

それなら今も信者でいる理由がない。


――気になる。けど問いかけてはいけない。引きずり込まれる。


そんな私の考えを見透かすように、アイゼンベルクさんは私に微笑む。


「(あなた方には本当に感謝しています。これで我々は先の研究に進めます)」

「僕たちも、援助のおかげでまだプロトタイプですが、目標を達成することができました。ありがとうございます」

「しかしながら、まだ先に進みますよね?」


ニコリと貼り付けたような笑顔でクロウリーさんが言う。

初めて見る表情というのもあるが、笑顔なのに目が全く笑っておらず、瞬く間に背中に冷たい汗が流れる。


「……できるところまで、進んでみたいと思います」


悟の言葉に、クロウリーさんはようやくいつもの無表情に近い笑みに戻る。


「期待しています」


クロウリーさんの着ている木陰ちゃんのTシャツが、やけに浮いて見えた。


恐らく、この霊視装置は時代を大きく変えてしまう。

でも、もう私たちにはどうすることもできない。


私たちは、私たちの命も関係性も惜しい。


明言されてはいないが、命を人質に取られているようなものだ。


――私たちは……私はどうすればよかったのだろう?


最初からクロウリーさんと関係を持たなければよかったのだろうか?


しかし、それは結果論でしかない。


この巨大な権力の前では、私たちはあまりにも小さな存在でしかなかった。

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