二話 介入(7)
「ねえ、そもそも魂を結ぶとどうなるの?」
「君なら、もう半分くらい答えに辿り着いているんじゃないかい?」
「はぐらかさないで」
「はぐらかしてないよ。考える君も好きなんだ」
「もう……」
そんな言い方で逃げられては、責める気持ちも削がれてしまう。
――魂と魂を結ぶか……。
視界を切り替える。
「あ――」
霊視をして気が付いた。
――確かに繋がっている。
私の方から、ティーノに紐のような光が伸びてくっついている――つまり、私から伸びた紐は、ティーノの神部分と繋がっている……たぶん。眩し過ぎて見えにくいけど。
――いや……うん、ティーノの魂と繋がるってことは、そうだよね……うん。
「確認してなかったんだね」
意外そうなティーノの言葉に私は頷く。
「ティーノといる時に霊視すると目が疲れるからね」
「……それは、申し訳ない」
「もっと光量落とせない?」
「そこの制御はまだできないねぇ……」
ティーノは、さして申し訳なさそうでもなく肩を竦めた。
――魂と魂を繋ぐ……。
つまりそれは、情報構造体を繋げるということだ。
情報端末同士を繋げる感覚に近いのだろう……。
「私達は、感覚、感情、意識の共有ができる……?」
「そうだね」
「――っ!」
――ということは、私の計画とか諸々がバレバレだったってこと?
「そうだね。筒抜けだったよ」
笑うティーノに私は憤慨する。
「許可もなく私の心を一方的に覗くなんて、酷い!」
「それは暗殺しようとしてるから?」
「それは……いやいや、暗殺関係なくだよ!」
超ド級の恥ずかしさが嵐となって私の心を掻き乱していく。
――なんか変なこと考えたりしてたかな?!
「大丈夫、基本的に暗殺と家族の事ばかりだったよ」
「心の声の返事しなくていいよ!」
「ごめんごめん」
楽しそうに笑うティーノが心底憎くなってくる。
「あなただけズルい! 私も覗く……!」
「基本的に君の事ばかり考えてるけど、大丈夫?」
「うっ! それはそれで覗きたくない……」
――絶対に、私にだけダメージ来るやつじゃん!
「そうかな?」
「はい、そこ、心の声に返事しない!」
「覗いてはいいの?」
「ダメでーす……ロック方法はないの?」
「あったとして、教えると思う?」
「そうですね、教えませんね」
私はぼりぼりと頭をかいてから、頬杖をついてティーノを見つめた。
「ちょっと、悟のセクシーショットはいらないよ……」
「……だめ?」
「それはちょっと悟が可哀想なんじゃないかい?」
「大丈夫、悟は許してくれる」
「君のしたことなら許すだろうけど、普通は怒るよ?」
「そう……?」
「……私の顔を色んなものにコラージュするのはやめてくれないかい?」
「……だめ?」
「これは、なかなかな精神攻撃だね」
ティーノが笑いながら私の額を突く。
「嫌なら覗かないで」
「今後はバレないようにするよ。逆に、君も何時でも私の心を覗いていい。それが魂を結んだ結婚ということだ」
「……」
「ふふふっ、上手いこと嵌ってくれたね」
「くぅ……」
頭を抱えてテーブルの上で悶えていると、ティーノは私の頭を撫で繰り回した。
――ん? 待てよ?
ふと、閃きが走る。
――逆に、虐殺行為の説得もやりやすくなるんじゃないの……?
「虐殺行為じゃない、清浄化だね」
「……」
「反逆とばかりに、私の顔で変な踊りを踊らせないでくれるかな?」
「……」
「流石に犬のお尻を嗅いだことはないよ?」
「嗅いでたら逆にビックリだよ」
「……とにかく、君の考えは正解ではある」
「え……やっぱり……」
「嗅いでない。清浄化の方」
「――いてっ」
ティーノに頬を抓られる。
「逆に、君が清浄化に賛成する可能性もあるけどね」
「それは……」
――たしかに、可能性としては、ある……?
「――いや、ないない!」
「でも、犯罪ばかりを犯したり、利益ばかりを追求する人間は、選別されてもいいとは思わないか?」
「それは……いやいや、だからって勝手に殺していい訳がない!」
ティーノは、否定する私を見てゆっくりと微笑んだ。
「流石だね、茜――私は君のそんな性格にもとても惹かれるよ」
「なんで急に口説きモードに入るかな?」
「素直な私の気持ちを伝えたまでさ」
あっけらかんと言う姿に、私は頭を掻く。
「……」
「私を睨みながら、私のバニーガール姿を想像するのはやめた方がいい」
「意外と似合うんじゃない?」
「私にそんな趣味はない」
「着てみない?」
「君が望むのなら……いや、着ない」
「残念」
「私は一応国王なんだけどな」とティーノが呟いたけど、あえて無視してやった。




