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一話 抵抗(8)

再び私は紙を広げてペンを持つ。

傍らに木陰ちゃんとの通信端末を置き、今ある情報を書き込んでいく。

真ん中のメインは『打倒ティーノ』にした。


「ちなみに、これをするとアイゼンベルクが困るってこととかある?」

『うーん……メインストーンの破壊は困るかもしれませんね』

「メインストーン?」


聞いたことがない単語に、私は目を瞬かせる。


『茜さん、見たことあるはずですよ。記録が残っていますから――大きな水晶です』

「あ、初めてこの島に来た時に、実験協力で視たやつね!」

『はい、それです』

「メインストーンは何に使ってるの?」

『アイゼンベルク様の情報構造体を拡張させて、より神たらしめています』

「……なんかやばそうね」

「それはもう神々しい姿になってるわね」

「……」


――いい歳したオッサンが何をしているのだろうか……。


少し頭が痛くなる。

しかし、それが清浄化という名の虐殺とセットになっているので笑えない。

中二病は他人に迷惑を掛けてはいけないのに……。


「そういえば、メインストーンは大きな水晶だったけど、やっぱり大きい方が出力が強かったりするの?」

『現状、大きさだけではないようです。小さいものでも、大きいものより出力が強い場合もあります』

「なるほど……」

『パワーストーンについては、高位の情報構造体にアクセスおよび命令する情報構造体が存在している、というところまでしか調査は進んでいません』

「あー、それは私たちと同じだね」


私たちはそこから、パワーストーンを無効化する装置を作り出した。


――悟に一妻多夫を同意してもらった“フリ”をして来てもらって、魔法装置を持ち込み一斉破壊とか……?


しかしながら、装置が怪しすぎるので、たぶんアウトだろう。


――そもそも、破損で無効化できるとか、そんな都合のいい話はないよねぇ……。


それなら、旧文明の遺物として残ってすらいないだろう。


「うーん……だめだ、一朝一夕じゃ思いつかない」

『メインストーンを破壊したところで、困るだけで魔法自体は使えますしねぇ……』

「とりあえず、研究施設を爆破してみる?」

「“とりあえず”で滅茶苦茶強行策だね」

「メインストーンがバラバラになれば、効力も弱くなるかもよ?」

「研究施設を爆破したことがバレたら、私たちどうなるかな?」

「茜は無事かもしれないけど、木陰と私は廃棄一択でしょうね」

「ちょっとリスキーすぎるから、それは最終手段にしようか?」


「そう?」と、何故か少し残念そうなエルザ。意外と破壊願望があって驚いた。

見た目は女神なのに!――まぁ、本物は見た目は女神、中身は死神だったけどね。


――悟と連絡が取れないのが痛い。


悟はまだ魔法装置という切り札は使っていないようだが、その切り札を敵陣のど真ん中であるここで、ぜひ使いたい。


かといって、再び最初から魔法装置を作るには設備が足りない――そして何より、培養された私の脳が足りない。


――他に魔法装置を作る手立てを、まずは考える?


今さらだけど、どこまで木陰ちゃんとエルザを信じていいのか分からないのも不安要素だ。

エルザが説明してくれた設定のこともあるけど、実際に私は確認していないので、嘘の可能性は消えない。


もしここで魔法装置について二人に話し、アイゼンベルクに漏れてしまっては、悟たちの戦略に支障が出る。それはできる限り避けたい。


「ねぇ、パワーストーン以外にも魔法を使う手立てはないの?」


エルザの言葉にはっとする。


「確かに、パワーストーンの情報構造体を分析して、他のものに埋め込めば、パワーストーン以外でも魔法を使うことが出来るかもしれない……」


しかし私はすぐに項垂れる。


「でも、検証に使うためのパワーストーンがないと無理だよ……」

「一つくらい、盗んでこようか?」


物騒な発言に、私は背筋が伸びる。


『だめだよ、エルザ。ここの石は全部厳重に管理されているから、ちょろまかしたらすぐ見つかるよ』

「残念」

『……あのぅ、茜さん』


恐る恐る木陰ちゃんが問いかけてくる。


「なに?」

『茜さんって、霊が視えるんですよね?』

「視えるよ」

『浮遊霊とか霊、もしくは精霊等は、何か戦略に使えないでしょうか?』

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