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二話 魔法国家(5)

霊視装置の影響で、神は視認可能な存在になった。


従来の『人知を超えた』存在である神はいなくなり、人間が創造し、制御可能な存在になってしまった。


一神教はまた違う扱いかもしれないけど、結局は制御ができるようになってしまったのは変わらない。


そこまでを望んでいたわけではない。


ただ、茜の傍にいる理由が欲しかっただけだった。


――一番罪が重いのは、僕なのかもしれない。


途中から、何が起きてしまうかの推測ができるようになった。


が、僕は茜の傍にいたいがために、そこは無視してしまった。


――僕とアイゼンベルクは表裏一体なんだ。


茜を奪おうとするのは、嫉妬するし全力で阻止する。けど、アイゼンベルクの気持ちが理解できないわけではなかった。


「おぉ!」

「よし、ミライもできる」


手のひらに灯った紫の炎を興味津々で観察するミライの頭をワサワサと撫でる。


「――ふっ」


ミライがドヤ顔で握って消すので笑ってしまった。


――確かにワクワクするよな。


僕もミライくらいの年齢なら、絶対にそうした自信がある。


「――さて、検証もできたことだし――防衛のためのパワーストーンを手当たり次第に集めよう」

「手に入るかな?」


確かに、パワーストーンは霊視装置が流行しだした頃に爆発的に売れたけど――


「今は需要がなくなって、人気も落ちてきてるはずだから、集めやすいはずだよ」

「――まぁ、霊視装置を通して見たらオーラが見えるけど、それだけだったもんね」

「そうそう」


ということで、ネットのフリマアプリ等で片っ端からパワーストーンを購入する。


クラゲのせいで株が暴落して貯蓄はかなり減っていたけど、今は霊視装置の権利料でまた懐は潤っている――皮肉にも、財源はアイゼンベルクだ。


ミライと手分けして買い集めて、とりあえず百個は購入した。


「はぁ、疲れた……明日からは現地買いする?」

「そうだね……とりあえず目標は千個だから、まだ十分の一だ。頑張ろう」

「うん」


正直、千個でも足りないだろうけど、今度は人材の問題になってくる。

ミラ島の住人は約千四百人――この人数が全員魔法使いとして世界征服の戦力として動く可能性があるためだ。


「あの狂信者たちがアイゼンベルクのために魔法を使うとか、恐ろしすぎない?」

「狂信的に祈るほど、魔法が強くなるのは恐ろしいね」


ミライと検証した結果、祈りが強いほど魔法の効果も強いことが分かった。


――正直、狂信的なミラ島の人々とは戦いたくないけど、恐らく戦わなければいけない。


クラゲ侵略時、ミラ島のお世話になっている時も、礼拝堂で熱心に祈る姿を確認していた。

この場合の信仰力は魔力に繋がる。


これを見越して孤児たちを引き取って自分の狂信者に仕立て上げるのだから、やはりアイゼンベルクは恐ろしい。


「アイゼンベルクには千四百人の上級魔法使いがいるってことだもんね……」


ミライの苦笑いに僕は頷く。


「あとはアイゼンベルクがパワーストーンをどれだけ確保してるかってところだけど……まぁ、この数年で千四百個は軽く集めただろうな……」

「霊視装置があったら偽物も買わなくて済むからね」

「はぁ……とりあえず僕らも、ミラ島に渡る分が少しでも減るように集めないと……」


「そうだね……」と呟きながらもミライはまだ、淡々とパワーストーンを購入してくれているので、笑ってしまう――もう休んでいいのに。


――じゃあ僕は次の準備を始めますか……。


スマートフォンを取り出し、メッセージアプリを起動する。


悟:お久しぶりです。ちょっと相談があって連絡しました。

悟:茜から康正くんが中心のグループがあるって聞いてるけど、今どんな風になってる?


しばらく返信はないかと思ったけど、すぐに既読になり返信が来た。


淑華:お久ー。

淑華:ちょっと茜ったら、悟に言っちゃったの?! 恥ずっ!!

悟:茜に言ったことは基本筒抜けだよ……。

淑華:まぁ、そうかww

淑華:それで何だったっけ?

悟:康正くんの集まりって今どんな感じ?

淑華:さぁ? あんまり聞かないようにしてるから、分からないかなぁ

淑華:康正がどうかしたの?

悟:ちょっと人手が欲しくて……。

淑華:また何やらかすつもり?

悟:僕らはやらかしてない。巻き込まれてるだけ!

淑華:はいはい。で、どうしたの?

悟:信じてほしいんだけど、近々、魔法使いが現れて世界征服を始める。茜がそいつらに狙われてるから守りたい

淑華:……は?

淑華:は?

淑華:正気?

悟:それがね、正気な上に現実なんだ……。

悟:近々、実演と一緒にそっちに相談に行くつもり。何時なら空いてる?


何とかお姉ちゃんのアポを確保して溜息をつく。


「淑華姉ちゃん?」

「そうそう」

「なんて?」

「めちゃくちゃ頭の心配されたけど、とりあえず会う約束はしたよ」

「……まぁ、心配されるよね」

「……うん」


僕は確かめるためにも、石に祈りを捧げて起動する。


手のひらの上に浮く水球を見つめる。動画の中でしか再現できなかった現象が、現実のものとして発生している……。


――これは実際に見ないと理解できない。


淑華姉ちゃんの反応を想像して、ふと笑みが零れた。

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