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二話 魔法国家(6)

「あ、悟だけできたの? 仕事は?」


駅まで車で迎えに来てくれたお姉ちゃんから、手厚い洗礼を受ける。


「日帰り弾丸だからね。仕事は有休」

「いや、そんなに急ぎで、本気なの?」

「本気というか、残念なことに現実……?」

「茜は?」

「ミライと留守番してる……実はちょっと調子が悪いんだ」

「は? 聞いてないんだけど?」


怒りを顕にしてくれるのはいいけど、車の運転はちゃんとしてほしい……。


「茜が心配させたくないからって」

「……もう、茜は……。どこか調子悪いの?」

「ちょっと鬱なんだ――ほら、霊視装置起点で色々起きたから……」

「それは、まぁそうかも……あっ! どうしよう、この前、康正のこと茜に言っちゃったよ!」

「あれはもう大丈夫っていうか、薬飲んでるからセーフだよ」

「良かった……」


運転に不安を覚えている間に神社に到着する。


――良かった……駅から近くて……。


安堵の溜息を吐きながら、お姉ちゃんと社務所に入る。

懐かしいあの広間は年季は入っているものの健在で、何度帰ってきても笑みが零れる。


広間でお茶を飲むと、早速本題に入る。


「こちら、パワーストーンです」

「うん。そうだね」

「握ります……祈ります……」

「――うわっ!」


手のひらの上に出た紅の炎に、お姉ちゃんは距離を取る。


「本気で使いやがった!」

「だから、信じてって言ったじゃん!」

「いや、普通信じられないって!」

「まぁ、それは分かる」


握って火を消すと、お姉ちゃんは戻ってくる。


「パワーストーンと祈りさえあれば、基本的に誰でも魔法は使える」

「え、私も使えるの?」

「使えるよ」

「やってみたい!」


いい歳した女性が目をキラキラさせながら手を差し出してくる。

とりあえず石を渡して祈り方を説明すると、案の定お姉ちゃんはすんなりと魔法を使えた。


「本当に使えたよ……」


白い炎を手で振って消しながら、お姉ちゃんは若干引いているのが面白い。


「これでご納得いただけましたでしょうか……?」

「はい。ご納得いたしました……」


石をテーブルに置きながら、お姉ちゃんは居住まいを直した。


「それで本題。この方法で魔法を使うやつらが、近々現れて世界征服を企みます」

「なんでそんなこと知ってるの?」

「霊視装置のパトロンだった人だから」

「あー……。悪の軍団に知らずに加担してましたのね?」

「……はい」

「で、霊視装置の機能の元になった茜が狙われてると」


僕は首を横に振る。


「違うよ、茜は狙われてるけど、原因は前世なんだ」

「なんかめちゃくちゃ話が複雑になってきたね」


お姉ちゃんは額を手でグリグリさせながら苦笑いをする。


「とりあえず、茜があっちの一団に狙われてることが分かってくれたらいいよ」


おやつに出してくれたチョコレートを一つ口に入れる。ビターなほろ苦いチョコレートが口に広がる。


「そして、地味に面倒なのが、茜はそのパトロンの暴挙を止めたいと思ってること」

「おうおう、茜。流石だねぇ……」

「うん。そうなんだよ……」


――そこを止めたいと言うのが、僕が茜を大好きな理由の一つなんだけど、面倒なのは面倒なんだよね……。


「それで、目下のところ、僕らの防衛手段が欲しい」

「――それで、康正のグループねぇ……まぁ、いっちょ本人呼び出しますか」

「今、家にいるの?」

「悟が来るよって言ったら、喜んで家で待機してるよ」


お姉ちゃんの言葉に思わず破顔する。


大学生でかなり大きいのに、まだまだ可愛いなと思った。


――まぁ、僕も茜もお姉ちゃんが家に来たらほいほい予定を合わせるから、似たようなものか。


自分自身に苦笑いしながら待っていると、お姉ちゃんが康正君を連れてきた。


「悟兄ちゃん久しぶり!」

「久しぶり、今日はちょっと色々相談があって来たんだ」

「相談? 何?」


純粋に首を捻る康正君は、とてもじゃないけど茜を通じて聞いていたような怪しいグループのリーダーとは思えない。


お姉ちゃんが先に切り出した。


「康正、康正がやってるカルト集団ってどんなのなの?」


棘のある言葉に康正君は目をカッと見開いて振り向く。


「カルトじゃないって! 人助けしてるだけ!」

「……」


なんだか既に親子間で認識の食い違いがありそうで苦笑いしてしまう。


「でもあんた、白龍のお世話になっておきながら、変な神様創って背中に付けてるじゃない?!」

「彼女は僕専用のサポーター! 降霊してるから色々手伝ってもらってるの!」

「降霊?! あんたそんな危険なことしてんの?!」

「前も説明したけど、お母さんが理解してなかっただけ! お父さんは知ってるよ!」

「は? 幸成は賛成してんの?!」


目の前で繰り広げられ始めた親子喧嘩に、思わず笑ってしまう。


――僕も将来、朋里と優希の話はきちんと最後まで聞くようにしないとな……。


子育てに関する教訓が一つ増えた。

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