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二話 魔法国家(3)

「お母さん、本気で言ってるの?」

「――わりと本気……かな?」

「無理筋じゃない?」

「――でも、できる限りなんとかしたい……本来はティーノはそんなことしないと思うと、私のせいに思えるし……」

「茜のせいじゃないし、前前世のハナのせいでもないよ。ハナを殺したのはエルザって人なんでしょ?」

「確かに私を殺したのはエルザだと思うけど、私も死ぬのを受け入れてたし……」


申し訳なさそうに頬を掻く茜の頬を抓る。


「いだいいだい!」

「死ぬのを受け入れていたとしても、殺されたのはハナのせいじゃないよね?」

「?!」


ハッとする茜の表情を見て少し満足する。


「そもそも、どうせエルザって人もアイゼンベルク家の人の命令でやったんでしょ? なら、エルザも――まぁ、実行したのはダメだけど……一番悪いのはアイゼンベルク家の人だよ」

「そう……だね」


茜は懐かしそうに遠くを見るような表情をしながら、僕に抓られた頬を擦る。


「でも、アイゼンベルクを助けたいの?」

「……だめ?」

「ダメではないけど……まぁ、できる限りの範囲内で協力はするよ」

「ありがとう」

「僕もするけどさ……」

「もう、二人とも大好き!」


茜にギュッと抱き締められるだけで、僕と――たぶんミライも、なんでもしてあげたくなってしまうのだから……我ながらチョロいと思う。


「でもどうやって暴走を止めようね? アイゼンベルクの目的は社会への復讐の可能性が高そうだけど……」

「そもそも、僕も前提で話しちゃってるけど、茜が言った『暴走』も確定じゃないよね?」

「あ……まぁ、そうか……」


三人そろって顔を顰める。


そう、アイゼンベルクは限りなく暴走――社会的に悪いことをしようとしそうだけど、確定ではない。


一パーセントの確率で、ただ魔法を世に広めたいだけのファンタジーおじさんの可能性もある――いや、それはそれで暴走か……。


「でも、かといって何もしないのはダメだよね?」


「うん」と僕と茜も頷く。


一番手っ取り早いのは、茜をアイゼンベルクに直接会わせてヒアリングして、説得することだけど、それは無しだ。そもそも拉致されかけていたところだし。


「一度、クロウリーにジャブを打ってみようか」


流れ上、茜からの連絡の方が効果的と判断し、茜のメールアカウントと名前を借りる。


件名:情報提供料に関しまして

本文:

クロウリー様

お世話になっております。茜です。

昨日提供しました、パワーストーンの起動方法の情報提供料に関してのご相談です。

情報提供料に関して、アイゼンベルク様とご相談することは可能でしょうか?

ご確認お願いします。


メールを送信後、クロウリーから十分もしないうちに返信が来た。ミライと茜が覗き込んでくる。


「言い値で払うって……流石ね……」

「え、お父さん、一兆ドルって吹っかけすぎじゃない?」

「え、それで送信……」


二人のドン引き具合に、我ながら笑いが止まらない。クロウリーから即返信が来た。


「ほら、怒ってるよ……」

「ジャブじゃなかったの?」

「ジャブだよ?」


二人と話しながらも、クロウリーに返信を打つ。


――アイゼンベルク様の今後の展望を教えていただけるのなら、情報提供料は不要です……で送信っと。


「あ――ハッタリね」

「そうそう」

「どう来るかな?」

「さあ?」


五分ほどすると、返信が来た。


「なになに? 『アイゼンベルク様は、魔法で世界を清浄化し、統一した後、茜さんをその世界の王妃とすることを望んでいます』……?」


ミライがメールの文面を読み上げている間に、握っていたマウスがパキりと嫌な音を立てた。


頭に血が上っていくのを明確に感じる。


茜は額に手を添えて「無理無理無理」と呟き、ミライは「キモっ」と両腕を擦る。


追撃でメールが来た。


本文:

そのうち改めてお迎えに上がるそうです。

悟さんは、覚悟を決めた方がよろしいかと思います。


「……」

「?」


震える手でノートパソコンをゆっくりと閉じ、深呼吸する。


「――ど突いたろか?」


僕の中でアイゼンベルク陣営が、明確に敵になった二度目の瞬間だった。

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