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第2部 神の喪失  作者: 小島もりたか
1章 霊視装置
3/18

一話 成功(2)

「なんで邪魔してたの?!」

「前世に関する記憶だから、今の僕は覚えてないよー!」


ちょっと刺々しく言ってしまったら、思いのほか下手に返されて出鼻を挫かれる。


「でも推測はできるでしょ?」

「うーん……文明に対して危険だったからじゃないかな?」

「文明レベルで?」

「うん。革命が起こるよ」

「そんなに?! ちょっと怖くなってきたんだけど……!」


私が霊視装置を発明したいのは、私の目標であるからなのはもちろんだけど、原点である『私の頭はおかしくない』の証明というのが大きい。

たかだかその証明ごときで、世界に革命が起こるとは正直思わなかったし、思いたくもなかった。


「だってそもそも、あのアイゼンベルクさんが欲しいって言ってるんだよ? 怪しいって……!」

「まぁそれは分からなくもないけど……悟は気付いてたよね? なんで止めなかったの?」

「大切な茜との、人生を賭けた共通目的だったから」


サラッと言う悟に、ミライは「お父さんはお母さん第一主義だからそうだよね」と呆れながら頷く。


――解せぬ。


そもそも発明しようって半ば詐欺みたいに誘って勉強漬けにしたのは、どこのどいつだったろうか……?


――まぁ、後悔はしてないけど。


悟は眉間に皺を寄せながら、額を掻く。


「――正直、霊視装置の完成品がアイゼンベルク氏の手に渡るのはとても危険だと思う。けど、僕らはアイゼンベルク氏に捕捉されてしまっている。今さら開発を止めて夜逃げしたところで、茜は拉致されて研究させられるんじゃないかな?」


悟の嫌な予想に、思わず顔が歪んでしまう。


――私もそんな気しかしないよ……!


「だからこそ、僕の個人的な意見としては、アイゼンベルク氏の真の目的は置いておいて、さっさと開発してさっさと渡して解放してもらう方がいいんじゃないかって思ってる。世界がどうなろうとね」


「僕は茜と家族が一番大事だから」


悟はそう言い切って、コーヒーを一口飲んだ。


「さすがお父さん、極まってるわ……」


ミライが小さく拍手する。


「前のミライは妨害して時間稼ぎしながら、開発しなくて済むルートを探ってたんじゃないかな。クラゲのせいでしっちゃかめっちゃかになったけど」

「それなら、筋が通るね……」

「いっそアイゼンベルク氏の寿命が来たら良かったんだけど、寿命なくなったからね、あの人……」

「首すげかけは流石にどうかと思うけど……」


20代にしか見えない男性が、実は70代とか、かなりのホラーではないか?


「とにかく、僕はさっさと開発してしまう方に一票」

「僕も」

「最早私の出る幕なし……」


それからはトントン拍子で脳波の解析が進んだ。

まずは私と河井と朋里の脳波の解析結果を比較、次にお姉ちゃんとおばさん……。

計五人の解析結果が一致するところまで持ってこれた。


次は、検出方法の再現装置の作成だ。

ざっくり言うと、私たち五人の脳波を再現できる装置を作る。

これは、ミライが本業の機械的生命体の研究の方の処理もあったため、ちょっと時間がかかった。それでも約半年程度だろう。


そして同時並行で、私たちは出力装置を設計する。

理想はMRグラスだけど、プロトタイプはディスプレイ型にすることにした。


そもそも、プロトタイプの検出装置は二リットルペットボトル六本分の大きさだったので、MRグラスにするには無理があった。


「これが……パワーストーンのオーラ?」


プロトタイプの霊視装置で、初めて情報構造体を投影した。

カメラを通してディスプレイに映った石の周りには、黄色いモヤがかかって見えた。

私にはどちらかと言うと炎に近い見え方をしているが、『何か』映っている分には一致する。


「……よし、普通の石には何も出てないね」


ミライの言葉に、沸々と喜びが湧いてくる。


「やったー!! 成功!!」

「やったね、茜! ミライ!」

「とうとうだね!」


三人で手を合わせたり抱き合ったりして、喜びの舞を踊る。


私の人生の目標の達成が、いよいよ目前に迫ってきていた。


まだ、本当に成功しているかの検証は終わっていない。

だけど、今は皆でこの喜びに浸っていたかった。


――よーし、次空いた日に無害な地縛霊がいるとこ巡るぞ!!


その日の夜はワクワクしながら、子供たちや研究チームのメンバーに第一報を報告して回った。


この時の私は、これから世界に何が起きるかも全く考えていなかった。

いや、うっすら考えてはいたが、もはやどうしようもない流れができていたので、考えないようにしていた。


地球温暖化で短くなった秋が一瞬顔を覗かせた時期、気が付けば冬が目前に迫っていた。

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