表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2部 神の喪失  作者: 小島もりたか
2章 遺物
13/18

一話 目的(1)

「メーラーの設定とりあえず切っとこう」

「はひ……」


そう言って、悟は私のパソコンのメーラーの設定を切ってしまった。代わりに悟のパソコンに私のアカウントを紐付ける。


「もう、お母さんったら、気を抜くと無理をするんだから……」


ぷりぷり怒りながらも、ミライは私にオレンジジュースを持ってきてくれた。

悟が改めてクロウリーさんからのメールを開く。


「これは……まぁ……どうしようね?」

「クロウリーさんには鬱のこと伝えてたっけ?」

「伝えてなかったよ。とりあえずそれで数ヶ月は逃げられるかな?」

「そうだねぇ……一時的だけど。結局は鬱が寛解したら来るよね?」

「うん、そう思う」


悟とミライの会話を、遠くの場所から眺めるように聞く。薬が効いているようで、メールを開いた直後のパニックは治まっていた。


「やっぱり、アイゼンベルクさんの目的の一つは、パワーストーンの力の解明の可能性が高いね」

「茜がクラゲ侵攻で透視した時は、世界の崩壊を喜んでいる節があったはずだ。それを加味すると……」


「パワーストーンを使って復讐しようとしてる可能性があるね。対象は個人じゃなく、社会そのものかもしれない」


ミライの分析に、小さく心臓が跳ねる。


「でも、なんで復讐したいのだろう? 彼は富豪だ。世間一般的には不幸そうには見えない。富豪の一族に生まれた悩みはあるだろうけど……」

「こればっかりは、分からないね……」


悟とミライは同じタイミングで私を見たが、お互いに見つめあって首を横に振った。今の私には思い付かなかったけど、何か案はあったらしい――今の私には負荷が高いと見なされて選択されなかったようだけど。


機械的生命体のミライは悟の遺伝子情報を元に肉体を構成している。年々成長するにつれ、若い時の悟の姿に近付いている。クローンではないけど、似た存在――不思議な感じだ。


「とりあえず、茜の現状を報告して、先延ばししよう。今はそれしかできない」

「いっそ、メンタル崩壊して元に戻れなくなったって言っちゃうとか?」

「バレるから、たぶん無駄だねぇ」

「それか、僕らが伝えちゃう? 祈りの方法を」

「それは……」


悟の顔色が悪くなる。


「いざという時の手段にしよう……」

「そうだね……。何にせよ、お母さんは何もしない方向で」


悟とミライが頷きあって、その日の作戦会議は終わった。



しかし翌週、ありえないことが起きた。

始まりは、玄関のチャイムだった。


『宅配便でーす』

「はーい」


――何か注文してたっけ?


画面に映った宅配員さんのダンボールの大きさから内容を推測しながら玄関を開く。


ガチャ


「こんにちは」

「――え? なんで……??」


ありえない出来事に思わず後退るが、開いたドアの隙間に足が差し込まれて閉じることはなかった。


――確かにインターホンのカメラには、宅配の人が映っていたはずなのに……。


「(急に来てしまいすみません。体調は大丈夫ですか?)」


私は目の前にいるクロウリーさんと、アイゼンベルクさんが受け入れられないまま、首を横に振る。


「あ、あの、どうして……?」

「(闘病中と聞きまして、お見舞いに来ました)」

「少し、お邪魔させて貰いますね」


そう言って、二人と護衛の男性三名がスタスタと我が家に入ってくる。私はクロウリーさんと護衛に支えられながら、リビングに連れていかれた。


「今の私では対応できないので、夫を呼びますね……」と抵抗するも、「すぐ帰るので大丈夫です」とスマートフォンを持つ手を優しく掴まれた。


まるで自分の自宅であるかのように、アイゼンベルクさんはリビングのテーブルのミライの椅子に座ると、私を向かいの私の椅子に座らせた。


「(こちら、少しですがお見舞いの品です)」


高級そうなフルーツの盛り合わせと謎の缶詰、そして茶封筒を渡してきた。

缶詰にはラベルがなく、銀色の容器がキラキラとしていた。

明らかに分厚い茶封筒を受け取るのは嫌だったが、断ったところで理由をつけて渡されるので仕方なく受け取る。


「温かい、素敵なお家ですね」

「ありがとうございます」

「そちらの缶詰は、今では入手困難なクラゲになります――お好きだったでしょう?」


ブフッと思わず息を吹き出してしまう。


「い、いや、別に好きだったわけでは……ないですよ?」

「え? あんなにノリノリで料理動画に出演していたのに?」

「あれは、食料問題を解決するためです。別に好きでクラゲを食べていたわけじゃないです」

「そうだったのですか?」


鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情をするクロウリーさんに少し困惑する。


――いや、本当に、好きで食べていたわけじゃなかったんですよ……?


「とりあえず、今は入手困難で、好事家の間でかなり価値が高い物になってます。良ければまたお食べください」

「ありがとう、ございます……」


なんか不服だったけど、とりあえず貰っておくことにはした。

不服だったけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ