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国王の見解

 復興が進む中、アローンさんに呼ばれる。


「近々王城で、今回活躍した者に褒美を与えると国王が仰っている。お前も選ばれた。褒美になにを望むのか、考えておけ」

「褒美……」


 私の活躍は、エルフィールを植え替え、多くの人命救助に繋がったことと、女王確保に貢献したことの二点。

 その日を迎え、私はまだ着慣れない真新しい団員の服を着て、城へ向かう。

 通された広間には私だけでなく、コベルタ侯爵夫妻、ジュビー様、アローンさん、アコッセさん、ドヴァル先生。そして、フェーデも立っている。


「まだ復興中だから、大々的に宴を開くことはできないけれど、後でささやかながら宴の席を用意しているから」


 こそりと隣に立つフェーデが教えてくれる。

 広間には私たちを囲むように、多くの貴族や関係者の姿もある。

 あの日……。初めて祖父と城を訪れた日、向けられた視線とは全く違う視線を、今は感じる。私自身も胸を張り、バッタを捕まえた時とは違い、前を向いて立っている。


 やがて国王と王妃が壇上に立ち、国王がよく通る声で挨拶をすると、コベルタ侯爵夫妻に視線を送る。


「コベルタ侯爵夫妻。こたびは私の意思を汲み、長くユレントロ王国で活動し、インバーション帝国の兵力を大きく削いでくれたこと、感謝する。フレイブ王国へ送られるはずの戦力が失われ、多くの国民が助かった。褒美とし、コベルタ家を公爵とすることを、ここに宣言する」

「拝命賜ります」


 夫妻が揃って頭を下げると、会場中から拍手が起きる。


「ジュビー・カレッジェ。一度も戦闘に出たことのない身でありながら、自ら志願し、病に効く薬を作るために必要な薬草の入手に向かい、尽力してくれた。そなたの活躍がなければ、先に出発していた部隊は壊滅されていただろう。部隊と患者を救ってくれたことに感謝する。褒美を送りたいが、なにを望む?」

「恐れながら私は陛下からではなく、イデレータ殿下に褒美を賜りたく思います」

「ほう?」


 愉快そうに国王は声を弾ませるが、イデレータ王子の顔が引きつった。それを見逃さなかったのは、私だけではないはず。


「して、その褒美とは?」

「女性に誰彼かまわず触れる行為をお止め下さい。私は褒美として、そちらを要求します」

「……心掛ける」


 その返事が気に食わないのか、ジュビー様はイデレータ王子を睨むが、王子は知らぬふり。ジュビー様の苦労は、まだ続きそうだ。


「アボッカセ兵団、団長アローン。副団長アコッセ。こたびの侵略を受け、果敢に敵に挑み、民を守るよう団員を主導してくれた。これからもその力を発揮し、一層の活躍を期待する。褒美を送りたいが、そなたらはなにを望む?」

「賛辞を頂けるたけで光栄です」

「右に同じく」


 私には考えるように言ったのに、二人は褒美を辞退した。

 国王は気分を害した様子を見せない。二人は辞退すると、最初から分かっていたのかもしれない。


「そうか。意を変えたくば、いつでも声をかけてくれ。

 医師ドヴァル。そなたがいなければ、我が国は未知の病に立ち向かうことはできなかった。そなたのおかげで多くの命が救われた。感謝する。長く医師として勤勉に励むそなたにも褒美を送りたい。なにを望む?」

「はっ。私の復職と、医師ファイオスを私の部下とし、城に迎え入れることを許可していただきたい」

「よかろう」


 その時広間の片隅で、白衣を着ている一団が顔を青ざめた。きっとあの人たちが城に勤めている医師なのだろう。ドヴァル先生が復職するということは……。

 彼らの怒鳴られる日々が戻ってくるということか……。

 ドヴァル先生はわざと彼らに視線を向けると、にやりと笑った。それを見た一団の顔色が一層悪くなったのは、気のせいではないだろう。


「アボッカセ兵団員、ジャスティー。エルフィールが燃やされていることを知り、植え替え守った結果、多くの人命を救うことに繋がった。また自身を囮にし、侵略の首謀者を捕らえることに大きく貢献した。そなたの活躍に感謝する。そなたにも褒美を送りたいが、なにが良い?」


 ごくりと喉を鳴らす。

 アローンさんに言われてから、ずっと考えていたことを震える声で答える。


「両親の罪を、許して頂きたいと、願います……」

「ほう? 両親の罪とな? して、両親の罪とは?」


 国王が身を乗り出すようにし、尋ね返してくる。


「はい。父と母は長い間、私に偽りの運命のナンバーを伝えていました。それは子である私と離れたくない一心からでした。どうか二人をお許し下さい」

「ナンバーを偽ることは珍しい話ではないぞ?」


 国王がじっと私を見る。

 その目はまるで、お前が何者なのか、この場で皆に披露しろ。そう言われているようだった。


 国王をはじめ王族には、私がフェーデの運命の相手だと伝えている。父は長くその真実を隠匿していた罪を、問われる可能性がある。沙汰は後日知らせるとまで、言われている。


 フェーデの相手が見つかった知らせは、侵略で多くの方が亡くなり、国が喪に服している状態なので、まだ国民には公表されていない。

 その喪も、今日この場をもって一応の終わりを迎えることが決まっている。


 隣に立つフェーデが手を握ってくる。

 私はその手を強く握り返し、国王に向かって答える。


「私の真の運命のナンバーは、第三王子、フェーデ殿下と同じナンバーです。長い間王族に真実を隠し、偽っていた罪を許して頂きたいのです」


 途端にざわりと広間が騒がしくなる。


「不敬だ! 偽っていただと⁉ そんなこと、許されるものか!」

「そもそも、そんな団員服を着ている娘が、フェーデ殿下のお相手だと⁉ 信じられるか!」


 野次も飛び出す。それでも私たちは俯かない。


「陛下、これは由々しきことですぞ! 忠誠心を疑われる行為に他なりません! そんな娘を王族の相手として迎えるおつもりか⁉」

「それに彼女は野蛮ではないですか。昔、素手で虫を捕まえた所を見ました!」



「誰が発言の許可を許した」



 静かだが響く声で国王が言えば、人々は黙る。


「陛下、発言の許可をお許し願います」


 そんな中、フェーデの声が響く。


「許可する」

「こたびの彼女と同じ功績をたてた私への褒美ですが、王族の運命の相手が平民の場合、両親と引き離すという法の改正を望みます」


 再び場が騒然となるが、国王は気にしない。


「ふむ、そうよなあ。私もその法については、以前からおかしいと考えていた。そなたら考えてみろ。自分の子と無理やり引き離され、二度と会えない状況を。そなたらは耐えられるか? 両親と、子と……。愛する者に、二度と会えない状況に」


 多くの者が俯き誰も答えようとしない中、アローンさんが一歩前に出ると、よく通る声で発言する。


「陛下、発言の許可を願う」

「許可する」

「先ほど辞退いたしましたが、私もフェーデ殿下と同じ褒美を所望いたします」

「み、右に同じく」


 慌てた様子でアコッセさんも同意する。


「あい、分かった。形式上、議会に通すことになるが、私の権限をもって、必ずや法改正を行ってみせよう。ジャスティー、そなたの願いを叶えよう。ただし二度目はないぞ、ファイオス」

「ありがとうございます!」

「承知しております!」


 父を私の声が重なった。

 満足そうに頷くと、国王は優しい眼差しを向けてくる。



「エルフィールを救うというのが、そなたの宿命だったのかもしれんな」



 突然の国王の言葉に、私は戸惑う。

 周りの人たちも顔を見合せ、国王の言葉の意味について、目で会話している。


「アローンとモディーンが運命の相手に選ばれた時から、神はこの未来を望んでいたのかもしれぬ。そなたがエルフィールを救い、我々がインバーション帝国に立ち向かう未来を。

 皆も知っての通り、インバーション帝国は長年高い軍事力で、世界連合の取決めを無視し、好き勝手に動いていた。それを神は、よしとしなかったのだろう。だが我々は帝国を恐れ、怯えて立ち上がろうとしなかった。今回の一連の件は、私に立ち上がるきっかけを、神が与えてくれたのかもしれん。

 ……エルフィール。あれは実に不思議な植物だ。光って種を飛ばすなど、他にない。あれこそまさに神の恩恵だ。そのエルフィールを、神は守ってくれるに違いないと考え、そなたがアボッカセに向かうよう、いろいろ仕組まれたのかもしれぬ。

 だがそれは、神が作った道ではない。ジャスティー、そなたが自身で選んだ道だ。それこそが、神の望んだ道。そなたは知らぬ間に、神の望みを叶えたのだよ。

 もちろんこれらは、私個人の見解だ。だがな、私はそう信じておる。

 両親と無理やり引き離され、実の祖父から虐待を受け、命を狙われ……。目の前で母を亡くし……。けして平安な人生とは言えん。それでも諦めず、前を向いて強く生きる、そなたのような国民がいてくれることを、私は誇りに思う」





お読み下さり、ありがとうございます。


これまで一日に一話の公開でしたが、ラスト三話は一気に公開します。


補足ですが、ジュビー。あまり活躍がありませんでした。

それでも褒美を与えられるのは、アボッカセ襲撃時、領地や家に閉じこもり、国を守ろうという姿勢を見せなかった貴族がいるからです。

戦闘に不慣れやらなんやら言い訳し、立ち上がらなかった者と違い、戦闘経験のないジュビーは前線に向かった。

そんなジュビーの働きを見せつけ、お前ら反省しろという思惑が、国王にはあります。

ジュビーはその思惑を察しており、それで国王ではなく、イデレータに褒美を求めました。

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