戦闘終結~2~
修正内容:脱字修正
「爆ぜろ!」
至近距離で魔法を放たれるが、すぐに魔法具の石を割る。
防御に成功すると、発生した煙にまぎれ、女王から距離を取る。
「魔法具まで持っているとは……!」
防御されると思っていなかったのか、女王は悔しそうに言う。
私は短剣を構え、呼吸を整える。
彼女を侮っていた。この人も日頃から訓練を受け、鍛えているのだろう。剣の突き出しを数え切れないほど繰り返したのに、疲れた様子が見受けられない。
「だけど魔法具には、限りがあるでしょう?」
その通りだ。残る防御魔法具の数は……。
「爆ぜろ!」
考えているとルーチェが助けてくれた時のように、光線が走る。あの時、この光線の走った所が爆発したと思い出し、光線から離れるよう、走って逃げる。
「爆ぜろ!」
一つの光線が爆発すると、ややあって女王は次の魔法を放つ。
この魔法には光線という道しるべがあるので、ある意味、爆発する場所が分かりやすい上、爆発の規模も範囲も、ルーチェより劣っている。これならば、脚力があれば避けられる。
「炎よ!」
今度は真正面から巨大な赤黒い炎の球が向かって来る。
石を使い防御すると、炎が霧散する中を突っ切り、次の魔法を放たれる前に、女王を攻撃するため向かう。
女王は魔法を放つ間隔に間がある。その時間を利用する!
待っていたのか、女王は余裕ある顔で剣を突き出してくる。しゃがむようにしてそれを躱し、地面に片手を付き、右足を使い彼女の足を払う。
「くっ」
そのまま彼女のドレスの裾を引っ張り、倒す! 女王が右手に持っていた剣が宙を舞う。
体勢を崩した彼女の首元に短剣の刃を向かわせるが、腕を掴まれ阻止されると、ヒールのある靴で腹部を蹴られ、投げ飛ばされる。
急いで起き上がり距離を開けると、彼女も起き上がる。
美しく整えられた髪は乱れ、ようやく呼吸を荒げている。手の甲で汗を拭うのと一緒に、顔に張り付いた髪を払う手。
「全く、どこまでも忌々しい小娘ね……!」
短剣にはめられた、アローンさん。ルーチェ、エニュス、リファレント王子、イデレータ王子か贈られた石は、全て使い切った。
そんな中で確信する。やはり女王は一度魔法を放つと、次の魔法まで時間が必要なのだと。
また魔法を使えば、その直後、攻撃をしかける!
改めて私たちは向き合う。
ざあっ、と風が吹き、枝から離れた葉が散る。
私はマシェットと対峙した時のことを思い出していた。あの時も森の中で戦い……。
体は熱く心臓がどくどくと脈打っているのに、頭は冷静なのか周りが見える。草木の揺れる姿、葉が動く様子……。そして……。
「炎よ‼」
先ほどより大きな炎の球が向かって来る。
私はフェーデから贈られていた石を、二つ同時に割る。
ルーチェたちから誕生日の贈り物で魔法具をもらったと話すと、フェーデは翌年、私に二つも贈ってくれた。
この大きな炎の球を防ぐには、一つでは無理。だから残り二つを使って、防ぐ! 後は……っ。
「まだ持っていたの⁉」
女王が悲鳴に近い声をあげる中、防御魔法を放つ短刀を投げ、矢を構える。
ここから先は、普通の矢で十分!
炎が霧散していく向こうで、女王の足を這っていた蔓が、突然素早く起き上がると彼女を襲う。
「なに⁉」
驚く女王の体を縛り付け、一本の蔦の先に付いていた石が、女王の額に押し当てられる。
やがて石は埋められるよう、額に沈んだ。
「な、な……っ。こんな、蔦……っ。風よっ、風よ!」
あの時のメッチェルのように、風魔法で蔦を切るつもりだろうが、手遅れだ。
「無駄よ、女王。貴女の額には、魔法を封じる石が埋められた。貴女は二度と、魔法を使うことができないのよ!」
女王の目が驚愕に見開かれる。
額に手を当て確かめたいのだろうか、腕は動かない。下ろした状態で蔦に巻かれ、逃れようと身をよじるが、蔦はそれを許さない。
「私は貴女を許さない! 母を……。祖父を、メッチェルを! 多くの人を不幸にした貴女を、絶対に許さない! だけど私は貴女を殺しはしない! 貴方に裁きを下すのは、私ではない‼」
そして矢を放ち、女王の腿を貫く。
「あああ!」
体に蔦を巻いたまま、痛みに叫んだ女王は倒れる。
私は大きく肩を上下に動かす。
足を貫かれ、これで女王は簡単に逃げることはできない。今はこれで十分。裁きは国王に委ねよう……。
女王と向かい合っている時、偶然気がついた。蔦が地面をゆっくりと這いながら、先を伸ばしていることに。
それを見て、マシェットと対峙した時を思い出した。
あの時はいつの間にかマシェットの体に、蔦が巻き付いた。だからきっと今回も、蔦が巻き付き、女王の動きを封じてくれるのだと分かった。
そう、彼が私を助けてくれるために……。
「フェーデ……」
名を呼ぶと、茂みから現れたのは、顔色の悪いフェーデだった。
私は涙ぐみ、鼻を鳴らす。
絶対、貴方だと思った。だって貴方はいつも私を助けてくれるもの……。
「無事で、良かった……」
「フェーデ!」
がくりと膝をついた彼に、慌てて駆け寄る。
そうだ、フェーデは熱が……! そんな体でここまで来たなんて……!
「大丈夫⁉ 魔力切れ⁉ それより熱は⁉ 駄目だよ、無理したら!」
「いや……。熱なら薬を飲んだから、もう大丈夫……。操作魔法が難しくて、疲れただけだ。それより彼女……。ホーベル王国の女王だろ?」
「うん」
フェーデに肩を貸し、二人で女王のもとへ向かう。
地面に転がったまま、女王は憎しみを込めた目を向けてくるが、私たちは怯まない。
フェーデは私から離れ、一人で立つと女王に告げる。
「ホーベル王国、女王。フレイブ王国への侵略行為の疑いで、貴女を捕らえる。法廷は世界連合のもとで開かれ、裁きは神が下すであろう」
お読み下さり、ありがとうございます。
言葉はなくともジャスティーは、フェーデの思惑を理解した訳ですが……。
こうやってみると、当初プロットになかったマシェット編は、大きな存在となりました。
残り四話。
最後まで頑張ります。




