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戦闘終結~1~

ブクマ登録ありがとうございます!


修正内容:サブタイトルを変更しました。





 今残る魔力を注ぎ込んだ、渾身の一撃だった。しかし……。


「……そんな……」


 辺り一面は黒焦げになっているのに、メッチェルは無事だった。彼の足元すら、焦げていない。つまり、防がれたのだ。

 それを証明するように、メッチェルの手から割れた防御魔法具の欠片が、大量にこぼれ落ちる。


「……危ない所でした。防御用の魔法具と合わせ、防ぐことができましたが……」


 無事だったとはいえ、成功できるかはメッチェル自身、半信半疑だった。それほど先ほどの一撃は凄まじいものだった。

 瞬時に自分の防御魔法だけで防ぐことは無理だと判断し、持っている全ての魔法具を使い防ぐことにしたが、間違いではなかった。そうしなければ今ごろ、消し炭と化していただろう。


「おや、足元がおぼつかないご様子ですな」


 大量の汗を流しながらもルーチェの姿に気がつくと、メッチェルはほくそ笑む気分になる。

 魔法具のおかげで、メッチェルは魔力を温存することに成功。対するルーチェは全力で挑んだため、魔力はほとんど底をついている。足元がふらついているのが、その証拠だ。


 そんな場面に、先ほど姿を消した魔法使いが仲間を引きつれ、姿を現した。

 状況は最悪だと、倒れそうになりながらルーチェは思う。


「ルーチェ殿、貴女は素晴らしい魔法使いです。きっと歴史に名を遺せたでしょう。それだけにこんな場所で果てるとは、さぞご無念でしょう。ですがこれは、生きるか死ぬかの戦いなのです。せめてもの情けです。苦しまず逝けるよう、我々の全力で貴女を攻撃しましょう」


 メッチェルが腕を振り合図を送れば、現れた全員が魔力を膨らませる。


 自身の魔力が多いという理由だけで、ルーチェは防御用の魔法具を持ち歩いていなかった。何度もリファレントから、万が一もあるので持ち歩くようにと言われていたのに。

 己の慢心が招いた結果、ここで全てが終わってしまう。

 悔しいが足元がおぼつかず、体術も無理。魔力も尽きかけ、ろくな魔法が使えない。

 ユレントロ王国に残っている夫とは、最後にどんな会話を交わしたのか、すぐに思い出せない。

 また必ず会えると信じていた。平和な世で彼との子どもをこの手に抱き、家族で生きたかった。そんなことを切れそうになる意識の中、思っていると……。



「重みよ!」



「封ぜよ!」



 彼らの魔法が放たれるより早く、聞き覚えのある力強い男の声が響く。それに咄嗟に反応できたのは、メッチェルだけだった。


 ずん! と目には見えない重力が、魔法を放とうとしていた魔法使いたちを襲う。

 メッチェルはその力に抗うものの、力に差があるのか、頭上からの重みに耐えられなくなり、片膝をつく。

 抵抗できぬまま地面にめり込まれた魔法使いたちに、とどめを刺す魔法が放たれる。



「土よ!」



 突如として空中に現れた、岩石とも言えるほどの土の塊が、彼らの上にのしかかったのだ。悲鳴を上げる間もなく全員、塊の下で息絶えた。

 なんとか体を動かし、唯一塊から逃れたメッチェルは、四つん這いで荒い呼吸を繰り返す。そのままの体勢で首を動かし、声のした方向……。左を見れば、一人の男が立っていた。

 それは町にいるはずのアローンだった。供の者をつけず単身で現れた彼は、険しい顔で睨みながら、一歩ずつ近づいてくる。


「貴様がメッチェルか」


 ルーチェ同様、新聞の写真で顔を知っているアローンは、殺気を抑えられなかった。

 メッチェルが返事もせず立ち上がると、アローンは剣を抜き、一気に間合いを詰める。


「インバーション帝国! なぜ平和を取り乱す!」

「封ぜよ!」


 すぐさま魔法を使い、飛びこんできたアローンの剣による一撃を防ぐ。


 がきん!


 アローンの振り下ろした剣が、なにかを打ちつける音が響いた。

 メッチェルは体術に自信がない。いや、人より劣っている自覚すらある。

 これまで攻撃されれば、己の魔力で攻撃を返したり、防いできたりしてきた。それで足りていたので、体を鍛えることに意味を見出せなかった。まさかそれを悔む日が訪れようとは……。


「貴様らの行いで、どれだけの人が命を落とした! 貴様らの幸せは、人の命を奪わなければ得られないものなのか⁉ そんなもの、幸福と呼べるか‼」


 激しい怒りだ。まるで鬼のようだと、メッチェルは顔を青ざめる。

 重い一撃を防げてはいるが、伝わる感覚から焦りが生まれる。

 まずい。尋常ではない力で押してきている。このままでは防御魔法が破られる可能性がある。

 ならばと威力は弱くなるが、防御魔法を展開しつつ雷魔法を放つ。弱くても、雷は雷。当たれば無事ではすまない。


「雷よ!」

「効くか!」


 魔法の呪文を口にすることなく、雷ははじかれる。握られている剣の柄に、防御魔法具の石が埋め込まれていると気がつく。

 メッチェルはじりじりと後退する中で、ルーチェが息を荒げながらも、顔の前で腕を交差する姿に気がついた。

 真っ直ぐ自分を捉え、機を窺っている。あの構えは……。


「く……っ」


 目の前の男だけではなく、ルーチェにも注意を払わなくてはならない。

 彼女が通常の魔法使いなら、すでに魔力切れを起こし意識を失っていた。それなのに今でも立っていられるのは、巨大な魔力を身に宿し、自然回復のスピードも速いからだ。


「はあ……っ、はあ……っ」


 まだ魔力は満足に回復していないが、それでもルーチェは立ち、その時を待っていた。

 きっと自分の放つ魔法に見当をつけ、メッチェルは警戒している。

 だが見当をつけているのは、アローンも同じ。自分の魔力がある程度回復すれば、きっとその時を作ってくれるはず。ルーチェはそう信じていた。

 そしてその時が訪れれば、風魔法で風を刃物のように尖らせ、斬りつける。命を奪うことに躊躇はない。

 この男をを生かしておけば、後々大きな脅威となり、再びフレイブ王国を脅かすに違いない。それほどの力を有している男だ。多くの者が嘆き悲しみ、苦しむ姿はもう見たくない。だから今ここで、終止符を打つ!


「雷よ!」

「くうっ」


 メッチェルの魔力が弱まってきていると分かったアローンが呪文を唱えれば、全身を貫くよう、雷が降る。

 魔法具は先ほどの爆発で使い切った。剣と雷、そしてルーチェの魔法から身を守るには、自分の魔力を使うしか道は残されていない。

 頭上、正面、ルーチェの方向……。右側の三点を重点に、防御を展開させる。


「ぐあっ」


 それでもまるで重力魔法を食らったかのように、強烈な衝撃を頭上から受けた。

 目には見えない防御壁が雷に負かされ凹み、頭を押さえてくる。その衝撃により、無意識に頭上へと、さらに魔力を割く。それをルーチェは見逃さなかった。



「風よ!」



 交差した腕を大きく振ると、風の刃はメッチェルへ飛んで行く。

 メッチェルはすぐ風魔法が向かってくる右側に、防御を重点的に展開させようとするが……。

 ぎらりと、正面に立っているアローンの持つ剣先が光る。


 そうだ……。こちらにも防御を……。雷は消えている。頭上に割いていた魔力を、正面と右側に……。



 ぱりんっ。



 悠長に考えていた訳ではない。なのに、防御壁が割れる感覚が走る。

 ルーチェの風魔法が、防御壁を打ち破ったのだ。

 そこから威力を落としたものの、刃は消えることなく到達すると、メッチェルの腹部を切り裂いた。


「うわあっ」


 痛みにより集中が途切れ、防御壁がガラスのように崩れていく。

 今が好機だと、アローンはすかさず呪文を唱える。


「雷よ!」


 メッチェルの得意とする雷魔法だった。

 もちろん意図しての魔法である。防御魔法を展開しつつ放つくらいなので、きっと得意にしているに違いないと当たりをつけ、わざと自尊心をも傷つけるため選んだ。


 果たしてメッチェルの全身を、雷が貫いた。


 焦げた匂いを感じながら、やはり自分の予感は的中した、撤退すべきだったのだ。

 最期にそう思い、メッチェルの意識は彼岸へ消えた……。







お読み下さり、ありがとうございます。


最終回まで残り五話くらいかなと、計算しています。

推敲の結果、五話を超える可能性も高いかなとも思いますが……。

はてさて、どうなることか。


とりあえず次回は場面が変わり、ジャスティーと女王の戦いも……?です。

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