女王との対峙
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修正内容:一部加筆あり
「今の音……!」
魔法の爆発音に違いない。きっと爆発が起きたそこに、ルーチェはいる。
先ほど助けてくれた時よりも、大きな音だ。離れていてもそれが分かる音は、森を震わせた。
鳥たちは甲高い声で叫びながら、一斉に飛び立つ。他の動物たちも怯え、慌てた様子で音の聞こえた方向から逃げて来る。私は彼らとは違い、逆走する。
「…………っ」
木々の枝葉の隙間から、もうもうと空に煙が漂っているのが見える。その量も、助けてもらった時の比ではない。
これほど大きな魔法をルーチェが使うということは、きっと相手が、相当の手練れに違いない。早く加勢しなければ!
「氷よ!」
突然右側から声がしたと思うと、氷柱が尖らせた先を向け、真っ直ぐ走ってくる。
声が聞こえたことで、ぎりぎり避けると、氷柱は木に刺さり、その周囲を凍らせた。
「あらあら。こんな所で会えるなんて、奇遇ねえ。いえ、運命かしら」
右側に視線を向けると、左手を突き出し、赤い口紅を引いた美しい女性が立っていた。ドレス姿なのに、なぜか剣を携えているその人の顔には、見覚えがある。
驚いた私は大きく目を見開き、しばらく瞬きを忘れる。
まさか、そんな……。なぜこの人が、ここに……?
さらに彼女の背後に、ロープを着こんだ者たちが十人ほど立っている。その中にルーチェが追いかけた魔法使いの姿がある。
この魔法使いがここにいるなら、ルーチェは一体、誰と戦っているの? まさかこの魔法使いに負けたの?
ううん、そんなはずはない。ルーチェが負けたなんて信じない! きっと他の誰かと、今も戦っているはず!
「貴女、ジャスティーでしょう? ふふっ、噂に聞いてはいたけれど、確かに美しい娘だこと。あのゼバルの孫とは、思えないほどね」
「……貴女は、誰?」
警戒しながら、震える声で尋ねる。答えを知りながらも、質問せずにはいられなかった。
「私はインバーション帝国皇女……。いえ、ホーベル王国女王」
堂々と答えられ、息を呑む。
やはり……! 彼女が女王として即位した時の新聞記事に、写真が掲載されていた。服装は違えど、間違いない。本当に女王本人だ!
「どうして貴女がここに⁉」
「フレイブ王国が総力戦で挑んでくるから、応えようと思って」
にこりと笑うその顔に、優しさや温かみはない。ただ『笑う』という形を作っているだけで、笑うという本来の感情が込められていない。
「それにね」
しゃあ……。
女王はゆっくりと音をたてながら、剣を鞘から抜き出す。
「ずい分と私の邪魔をしてくれる貴女に、自らお礼をしなければと思って」
抜いた刃の面に、すっ、と白く細い指を走らせると、鞘を捨てる。そして視線を私に向けたまま、背後に控える魔法使いたちに命ずる。
「貴方たち、ここはいいわ。彼のもとへ行きなさい」
「しかし女王陛下。全員がそちらへ向かえば、貴女を護衛する者がいなくなり……」
「二度言わさないで。魔法も使えない娘に、私が敗北するとでも? 早くルーチェを倒してきなさい!」
肩越しに彼女が睨めば全員口を閉じ、すぐに背を向け、ルーチェのいるであろう方角に走り出した。
彼らはきっと、ルーチェと戦っている誰かの加勢に向かう気だ!
「行かせない!」
あれほどの爆発を起こさなくてはならない相手と戦っているルーチェへ、これ以上敵の増援を認める訳にはいかない! なんとしても止めなくては!
急いで火の矢を放つ。
女王の横をすり抜け、彼らに当たると思ったのに……。
「封ぜよ」
女王にすら到達せず、見えない壁に阻まれた炎は霧散する。
「防御魔法……!」
「ジャスティー。貴女の罪は、なにかしら⁉」
言うなり女王は踏み出し、私に向かってくる。
……速い!
とてもドレスをまとっているとは思えない!
瞬時に詰め寄られ、剣の先を突き出される。幸い避けられたものの、洋服の胸の辺りが切られる。
「エルフィールを植え替えたこと? メッチェルを追いこんだこと? ゼバルとメッチェルの関係を漏らしたこと? いいえ、違う! なにもかも、全てよ! 上手く事が運ばなくなったのは、全て貴女のせいよ!」
腕を引き、突き出す。ただそれだけなのに、俊敏に動かれ、全てぎりぎりで躱す。
「く……っ」
「貴女が余計な真似をしなければ、フレイブ王国を手中に収めるなど、楽勝だったのよ!」
美しい顔を怒りで歪ませ、変わらず剣を突きだしながら彼女は叫ぶ。
「死招き草の密売、栽培により、国として弱体化したフレイブ王国に、未知の病を蔓延させる! それでこの国を手に入れるはずだったのに! 私の功績となるはずが! それをよりにもよって、エルフィールの植え替えですって⁉ 私たちが何年この計画に費やしたと思っているの! 人の苦労を知りもしないで……! 憎らしい娘だこと!」
「その考えが……! 侵略行為が、間違っているのよ! なぜそれが分からないの⁉」
長く腕を上げたまま、突き出しを繰り返していれば、いつか疲れも見えてくる。特に女王は興奮しており、制御ができていない様子だから、余計に疲労は早く訪れるはず。
きっと好機はくる……! それまでは、なんとしても躱し続けてみせる!
お読み下さり、ありがとうございます。
女王を最後どうするかは、ギリギリまで悩みました。
①帝国へ逃げ帰る(?)
②ホーベル王国宰相夫婦から、よくもうちの娘を!ホーベル国を!全てお前のせいだ!この悪魔め!と私怨で襲われ絶命
③ジャスティーと対峙
ざっくらばんに書くと、こんな選択肢でしたが、やはり諸々の背後に潜んでいた、言わばラスボスと対峙するのは、主人公の役目だろうと思い、③を選択しました。
宰相に罪をあがなわせるという意味で、②も捨てがたかったのですが……。
改めて書き出すと、③にして良かったなと、私の中ではなっています。
そして先日、最終回までの下書きが完了しました。
下書きと言っても、下書きの下書きという、大まかなものですが……。
そんな訳でラストが見えてきましたが、最後まで頑張ることを止めず、より良くなるよう精進することを心がけようと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。




