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ルーチェvsメッチェル

 ルーチェが魔法使いを見つけると、その者は道具を使い描かれた円の中心に立っている所だった。


「あの円は……」


 転送魔法用に組まれたものだと、瞬時に理解する。

 おそらく味方をここに転送するつもりなのだろう。ならば、阻止すればいいだけのこと。

 魔法使いはルーチェに気がつき、急いで転送魔法の展開を始める。


「爆ぜろ!」


 ユレントロ王国でも、幾度となく爆発魔法で阻止してきた。今回も問題ないとルーチェは思っていたが……。



「封ぜよ!」



 爆発前に転送魔法は発動し、男の声が響き渡り、爆発が防がれた。


 手加減をした訳ではない。これまで同様、問題なく阻止できると考えていたが、慢心していた訳でもない。それなのに防がれた。

 桁外れの魔力を持つ自分の魔法を防ぐことができる魔法使いは、世界広しとはいえ、多くはない。

 しかも、そんな魔法使いがホーベル王国にいるなど、聞いた覚えがなかった。


 一体、声の主とは……?


 防がれた魔法が煙となり霧散する。その煙が晴れた先に、一人の太った男が悠然と立っていた。

 この転送魔法を用意した魔法使いは、 まさに煙に巻かれたよう、どこかへと姿を消した。だが逃げた魔法使いなど、どうでもいい。問題なのは、立っている男。


「……メッチェル⁉」


 新聞の写真で顔を知っている。間違いない、この男こそ、メッチェルと呼ばれている男だ。

 この男が自分の魔法を防いだ? 魔法使いという情報はなかったはず。ゼバルはメッチェルについて知る限りを供述したが、一言もそんな話を語らなかった。つまりゼバルは、彼が魔法使いという事実を知らなかったということか?


「おやおや、コベルタ侯爵夫人ではありませんか。いち早くここに辿りつくとは、流石でございますね」


 ルーチェが地面にふわりと降りると、メッチェルは悠然とした態度を崩さずお辞儀をし、ゆったりとした口調で話しだした。


「お初お目にかかります。私はホーベル王国、女王の側近を務めております。本名はとうの昔に捨て、任務の度、変えております。ですが貴女方には、メッチェルという名前で伝わりますでしょう」


 やはり……。警戒心を抱いたまま、ルーチェは礼を返す。


「初めまして、ルーチェ・コベルタと申します。メッチェル様、お会いしとうございました。フレイブ王国の国民であった、マシェット・シューペスとゼバル・デュシパートが、大層お世話になりまして……。ゼバル・デュシパートは最期まで、貴方に会いたがっておりました」

「ほっほっほっ。ゼバル殿にそこまで好かれていたとは」


 上着の襟を正しながら笑うメッチェル。こちらの言いたいことを理解していながら、平然とそんなことを言うとは、食えない男だ。


「それにしても、美しい女性に会いたかったと言われるのは、やはり嬉しいものですな」

「ふふっ。貴方も私に会いたかったのではなくて?」

「そうですな。おや。つまり私たちは、両想いということですかな?」

「そう言われますと、そうですわね」


 手を口元にあて、笑うルーチェ。メッチェルも朗らかに笑う。二人はしばしそうやって笑い合うと表情を変え、ほぼ同時に魔法を放つ。



「雷よ!」

「爆ぜろ!」



 二つの魔法はぶつかり、火花を散らす。


 ルーチェは驚いた。

 この感覚……。間違いない。メッチェルは自分と同じくらい、魔力を有している。先ほど放った魔法を防いだのは、まぐれではない。間違いなく、彼の実力だと。

 それを理解した途端、焦燥感にかられる。

 なにしろ自分はこの場に来るまで、何度も魔法を使用している。それに比べてメッチェルは、魔法を使っていない。すなわち、魔力の残量はメッチェルの方が多い。同じ規模の魔法を打ち合っていれば、先に自分の魔力が尽きてしまう。



 ばちいぃ!



 大きな音をたて相殺された魔法が消える。


「ほう。噂通り、素晴らしい魔法使いですな」

「お褒め頂け、光栄ですわ。まさか貴方様がこれほどの力を持つ魔法使いとは、思いもしませんでした」

「ほっほっほっ。切り札を隠すことは、常套でしょう。しかし惜しいですなあ。せっかく機会なので、全力の貴女と戦いたかった」


 やはりメッチェルも気がついたらしい。悠然としつつ、どこか冷めた目を向けてくる。

 力が拮抗しているからこそ、先ほどの手合せで互いの力量を計れた。魔力の最大値はほぼ互角。しかも攻撃魔法に特化したタイプという点も同じ。


「それでも我が主のため、インバーション帝国のために。全力で貴女と戦いましょう。結末は見えておりますが、侮れる相手ではありませんからな。油断は禁物と言いましょう」

「貴方ほどの魔法使いに、そこまで言われるとは……。光栄ですわね。ですが私、むざむざ倒される気はございません」


 二人は口を閉じたまま、にっと笑う。



「雷よ!」

「爆ぜろ!」



 再び互いに魔法を打ち合う。


 しかしただ打ち合っていては、こちらが魔力切れを起こし、負けてしまう。ならば短期決戦で勝つのみ!

 ルーチェは下ろしていた左腕を振る。

 それと同時に、新たに爆発魔法を生みだす。


「爆ぜろ!」


 二重の爆発魔法は、メッチェルの雷魔法に押し勝つよう、光の筋をゆっくりとだが進めていく。


「あああああああああ!」


 ここで押し勝たないと好機は二度と訪れないだろう。ありったけの力を、ルーチェは魔法に加える。


「くうっ⁉」


 やがて雷魔法は消失し、瞬時にメッチェルの真横を太い二重の光の筋が走り、大爆発を起こした。

お読み下さり、ありがとうございます。


明日(2月6日(水))の更新はありません。


やっと下書きが、すべての戦闘を終えた先まで書けまして……。

とはいえ最終回は、まだ書けていません。

最終回はこうしようと決めてはいますが、こうか?やっぱり、こうか?と、あれこれ悩んでいます。

どういった内容だとこの作品にふさわしい最終回なのか、うんうん唸りながら、考えています。


そんな最終回まで、もう少し作品は続きますが、それまでお付き合い頂けると幸いです。

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