女王の次なる一手
すみません、やはり今回も短いです……。
もたらされる戦況は、悪くなるばかり。ついには恐れていた一報が、女王に届いた。
「ルーチェが現れた……?」
わなわなと震えるのは、怒りか焦りからか、本人にも分からない。女王は、そこに居るはずもない、ジャスティーとルーチェを睨むように、目を吊り上げる。
「アコッセ副団長に接した部隊も、壊滅いたしました。正直に申し上げます。これ以上の深追いは、避けられるべきです。ホーベル王国を手中に収めたのです。今回はそれで良しとし、フレイブ王国は諦め……」
「諦める⁉ ここまできて、撤退はあり得ない!」
メッチェルの言葉を遮り、興奮した様子の女王は叫んだ。
対してメッチェルは落ちつきを失わず答える。彼は今、自分が冷静さを失えば、事態はより悪い方向へ進むと分かっているからだ。
「どうか冷静になられて下さい。アボッカセの町には、アローン団長。森にはルーチェと、武人としての能力は未知数ですが、魔法使いとして名高い、ジュビー・カレッジェがいます。名立たる彼らの相手ができる魔法使いなど、そうはおりません。お願いです、引き際を見誤らないで下さいませ」
「はっ。相手ができる魔法使い? それなら私の目の前に、いるじゃない」
女王は真っ直ぐ、自分と向き合う男を指す。
「皇族の血を引きながら、生家により身分は低いものの、大きな魔力を抱く、貴方がね!」
「………………」
メッチェルは返事をしなかった。
女王が意固地になっているからだ。こうなるとなにを言っても、彼女の耳には届かないことは、長年の経験から承知している。
「貴方だって、攻撃魔法に特化した魔法使いでしょう? だからこれまで平気で、敵国でも一人、動き回れた」
「……戦闘は得意ではありません。この体型からお分かりになるかと」
わざと、ゆさゆさと体を揺らしてみせるが、女王は意図に気がつかない。
「ふふっ、卑下することないわ。そうよ、貴方が体術を使わずとも勝てる状況を、作り出せばいいのよ。残った魔法使いに、城にある全ての防御魔法具を持たせ、ルーチェに向かわせなさい。いくら化け物だろうと、魔法を使い続ければ、いつかは魔力も尽きるのよ。そこを貴方が突けば……。ね? 簡単でしょう?」
確かにその策が成功すれば、ルーチェを葬ることは可能だ。
しかしどうしたことか、メッチェルには嫌な予感が拭えない。
長年かけ練った策が今や、無残にも散ろうとしている。この案もそうなるのではないか。やはり今が引き際だと思えてならない。
しかしなにを言っても、今は無駄。いくつもの言葉を飲みこみ、メッチェルはゆっくりと答える。
「……必ずのお約束はできませぬ」
「あら。貴方が私の命令に背いたり、達成できなかったりしたことがあった?」
幼い頃より主従関係を結び、誰よりも信頼している男。女王はメッチェルが断らないことを分かっていて、命令を下す。
「作戦変更。一人ずつ、確実に仕留める。まずはルーチェ。魔力を持たないゼバルの孫娘など、後からどうとでも処理できるもの。そうよ。私自ら赴き、孫娘に制裁を与えるというのも、一興ね」
今日も赤い紅を引いた唇が、にいっ。と大きく横に伸ばされた。
メッチェルはその言葉を聞き、目を閉じる。
まさか現場にまで出向くと言い出すとは……。
女王は止まれない。止まろうとしない。ならば自分は、彼女の望む結果を得られるよう、働くしかない。
これからどんな未来が訪れるのだろう。神はその結末を知っているのだろうか。
そんなことを考えながら女王の前から下がると、私室で着替えるため、廊下を歩きながら首元のタイを乱暴に引っ張った。
お読み下さり、ありがとうございます。
次回も短くなるかと……。
すみません……。




