ラウルからの告白
「ジャスティー、これを持って行け」
日々、転送部屋で魔法の研究を行っている皆から、矢の束を渡された。
「これは魔法具で、弓を引いて数秒後に、魔法が炸裂する。弓の矢尻に、色がついているだろう? 赤が火。青が水。緑が風。茶が土。黄が光の魔法を放つ。それぞれ五本しかない。お前は弓が得意と聞いている、大事に使え」
「ありがとうございます」
矢尻だけでは分かりにくい。そう思い、裁縫道具を借りると、その本数で分かるよう、糸をくくりつける。それから他の弓と一緒に、もらった弓も担ぐ。
結構な量となり、重みを感じる。
私とアコッセさんを含め、向かうのは二十人。
その内魔法が使えるのは、アコッセさんと、転移部屋の初老の男性、ザキさんの二人だけ。空を飛べる彼らを、なにがなんでも守らなければならない。そしてドヴァル先生に、エルフィールを届けることが、任務。
人数が少ないことは不安だけど、頑張るしかない。
セドナーの準備も終え、心を落ち着けていると、思いも寄らない人物が話しかけてきた。
「ジャスティー!」
「ラウル、どうしてここに?」
別の避難場所にいたラウルが、なぜか現れたのだ。
「昨日、伝令が回ってきて、この避難場所の防衛任務に就けと言われて。さっき着いたんだ」
「ここまで大丈夫だった? 襲撃者と遭わなかった?」
「ああ、敵に遭わず来られたよ。……殿下、例の病気に罹ったかもしれないって?」
「うん……」
「それでお前も一緒に、薬の原料を採りに行くんだって?」
「うん」
ラウルは私の両腕を掴み、揺さぶって来た。
「なんで! なんでまだ団員でもないお前が、そんな危険なことを手伝うんだ! ここに残っていればいいじゃないか! 生えている場所は、アコッセ副団長に教えたんだろ⁉」
「でも、私たちが植え替えたものだし……。そこまでの道中、少しだけど生えている場所も知っているの。細かい場所は、私にしか分からないから」
ラウルの手から逃れるように離れ、落ちつきを崩さず答える。しかしラウルは、なおも声を荒げて反対する。
「だからって……。いや、やっぱり納得いかない! お前、殿下が病気だから、自分で摘みに行きたいだけだろう⁉」
「そんなことないよ」
図星だが無理やり笑いながら、否定する。ラウル、お願いだから、それ以上は言わないで。
「絶対にそうだ! なんでだ! なんで、そこまでお前……。……っ。お前がどれだけ殿下を思っていようと、結ばれることはないんだぞ! 身分だって違うじゃないか! 目を覚ませよ! 現実を見ろよ!」
聞きたくなかったことを言われ、かっとなった私も、つい感情的に叫び返す。
「分かっているよ、そんなこと! だけど友だちだもの! 友だちを助けたいと思って、悪いの⁉」
「お前が危険な目に合うのが、嫌なんだよ!」
そう言うと、ラウルが強く私を抱きしめてきた。
突然のことに、瞬きを繰り返す。なに……? なにが起きているの?
「頼む! 行かないでくれよ! お前になにかあれば……」
状況を理解し、逃げようとする。
「ラウル……っ。離して……っ」
「嫌だ」
「ラウル!」
彼の手を振りほどこうと身をよじるが、ラウルの強い力に阻まれる。
「……お前が好きなんだ」
「え?」
「お前が好きなんだ! だから行ってほしくない! 危険な目に合せたくないんだ! ずっと前から……っ。お前が女だと知った時から、好きなんだ!」
「やだ……っ。ラウル! 離して!」
顔が近づいて来る。私はラウルの顔を、両手で押し戻すようにして、拒む。そして力が緩んだ隙を狙い、彼を突き飛ばす。
「こんな時になにを考えているのよ! ふざけないで!」
「ふざけているもんか! こういう時だからだろ⁉ ……ったく、本当……。いい加減にしろよ! 何度言えば分かってくれるんだ? どれだけ殿下を思っても、永遠に報われないって……! そんなの辛いだけじゃないか!」
「報われるとか、そういう問題じゃない!」
私たちはお互いに大きく呼吸しながら、見つめ合う。
「分かってよ、ラウル……。フェーデを助けたいの……。その助けとなる、エルフィールの生えている場所を知っているのは、私だけなのよ……っ」
「ジャスティー」
いつの間にか、父が私たちの傍まで近寄っていた。今までの会話を聞かれていたかもしれないと思うと、急に恥ずかしくなる。
「少しいいか? 出発前に大事な話があるんだ。ラウル、さっきのは忘れてあげるから、二度と娘に無理強いをしないでくれ」
……やっぱり聞かれていた。
ラウルも顔を赤くせさ、小さな声で謝ってきた。
「……すみませんでした」
「行こう」
ラウルの謝罪には答えず、父は私を連れ、医療室代わりのテントへ向かった。
お読み下さり、ありがとうございます。
ラウルはこの回のために作った人物でしたが……。
私の実力不足で、彼がジャスティーに惚れる所を、上手に書けませんでした。申し訳ありません……。
長年男だと思っていたら、実は女の子。そこから意識してしまい……。
というはずなのに、途中、ほぼラウルの出番なし。
気がついた時には、アボッカセ襲撃が始まり、完全にやらかしました。
長編を書くのも、難しいですね……。
でも、まだ当分先の最終回まで、頑張って書きます!




