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ルーチェの戦い~2~

ブクマ登録、ありがとうございます!


◇◇◇◇◇


修正内容:セリフの一部、言い回しを変更

 世界連合に加盟している国同士で、軍事力を持って戦争を開始する場合。まず世界連合の本部へ開戦を申請し、本部から相手国へ、開戦日時の連絡を入れるという取決めがある。開戦の申請許可が出るには数日以上、審査期間が必要とされるのが、通説だ。


 では、ホーベル王国が乗っ取られたような場合はというと……。

 あいまいな領域の話となる。知略で攻め、軍事力を使用していないので、申請は不可でも問題ない。現在フレイブ王国へ行っている行為には、アボッカセ襲撃という軍事力を利用しているので、本来は申請を行わなくてはならない。だがそれを行わないのが、インバーション帝国という国だ。


 取決めを破るのだから、そのたび世界連合の議会では、問題として取り上げられる。毎回のように世界連合からの除名も検討されるが、もし除名すれば、さらに好き放題暴れることが容易に想像できる。連合に加盟していることが、これでも一種の抑止力になっているのだ。

 だからこれまでどの国も、強い姿勢を貫けなかった。それが帝国を助長させていると分かっていながら、報復や侵略を、恐れた。


 それによしとせず立ち上がったのが、フレイブ王国である。

 秘密裏に信頼できる国々と連絡を取り、帝国に立ち向かう時を窺っていた。それがまさに、今なのだ。


「は、ははっ。気でも狂ったか! フレイブ王国の現状を考えてみろ! お前らは、あの帝国に狙われているんだぞ⁉ 帝国と協力関係にある我が国に牙を向けば、それを名目に、堂々と帝国は動き出す! その覚悟がお前らにあるのか⁉ 帝国を恐れているのは、お前らもだろう!」

「帝国が動き出すことなど、百も承知。そして私たちは、恐怖に立ち向かいます」

「なんだと?」

「帝国の軍事力は、確かに強い脅威です。しかしそれを笠に、世界の平和を脅かしてきました。国を守るためには、帝国に逆らわずが常套でしたが、そんなもの! いつまでも続けていいはずがありません!

 帝国はその中心だけが豊かさを保とうと、侵略した国々に奴隷労働を課す! 奴隷が死ねば新しい奴隷を求め、侵略を行う! その繰り返し! その果てになにがあります⁉ やがて搾取する国はなくなり、自ら働くことを止めて久しい帝国も、いずれ滅ぶでしょう!

 フレイブ王国は世界の未来のため、帝国に立ち向かうことを決めたのです!」


 その時、城の外から聞き慣れない、ウーウー。と鳴るサイレンが流れてきた。


「なんだ⁉ なんの音だ?」

「世界連合より発令。この放送終了から一分後、フレイブ王国からユレントロ王国への開戦を、許可します」


 サイレンの後に続く声は、まるで空から降ってきているようだった。若いと分かるが感情はなく、男女の区別もつきにくい、不思議な声だった。


「繰り返します。世界連合より発令。この放送終了から一分後、フレイブ王国からユレントロ王国への開戦を、許可します」


 その声の主よりも、内容が問題だった。わずか一分後から、戦争開始を世界連合が認めたのだ。思いもしない事態に、ユレントロ国王は叫ぶ。


「馬鹿な! こんな短時間で許可が下りる訳が、ない!」

「ええ、前々から世界連合には、ユレントロ王国への開戦を、申し立てておりました。審議も終わり、いつでも開戦可能という状況にしていたのです。実際に開戦するかは、夫と私への対応次第でしたので、世界連合からユレントロ王国に連絡がなかったのでしょう」


 最初にユレントロ国王に語りかけた王子が、口を開く。


「世界連合本部は、神に一番近い人たちが集う、人類発祥の地。世界を統べる神に仕える、神官の住まう土地。本部に務める者は、人類の始祖の血縁者のみ。そんな神官でもある彼らが、一分後という決定を下した意味、分からないか? 神も帝国の行いに、我慢の限界なのだろう。世界の取決めを無視し、平和を乱す帝国に……。

 ここに集った我々もフレイブ王国の考えに同意し、連盟を組むことを宣言する! 世界連合! 申請する! 我が国も、フレイブ王国の連盟として、ユレントロ王国との戦争に参加する!」


 次々と同じ発言が飛び、それに呼応するよう、世界連合の放送が続く。


「申請受諾。フレイブ王国、並び……」

「そうか……。帝国に歯向うか……。愚かな道を選びおって……。これで貴様らの国は、帝国に敵と認識されたわけだ! このことを私が報告すれば、帝国がお前らの国々に、開戦の申請を行うだろう!」

「なら、立ち向かうまで!」


 全く恐れのない、堂々としたルーチェの姿に、国王は気圧される。


「百も承知と言ったはずです! その可能性を考えた上で、私たちは、帝国の恐怖から脱することを決めたのです!」

「以上で放送を終えます」


 空からの声が途切れる。

 これより一分後、戦の幕は上がる。


「開戦と同時に、その女を血祭りにあげろ! 帝国に恩を売れば、道は開ける! その女の首を土産にすれば、従属国と新たに誓約を結べるはずだ!」


 根拠のない国王の甘言に酔い、武器を持つ兵の手に力がこもる。

 それでもルーチェは怖がる素振りを見せない。むしろ余裕すら、感じさせた。

 国王はそれでも有利なのは、自分だと言い聞かせる。

 この場には魔法使いとして恐れられているが、女一人。地味な夫は戦力になりそうもない。

 勝てれる。必ず勝てるはずだ。

 兵の中に、こちらの魔法使いも混ぜている。人数だけで言えば、有利なのはこちらだ。


 一分後……。


「爆ぜろ」


 ルーチェの魔法が放たれた。

お読み下さり、ありがとうございます。


今回は短いですが、区切りが良かったので……。

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