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父との再会

本年、平成31年もよろしくお願いいたします!


◇◇◇◇◇


訂正内容:語尾、脱字、誤字の修正

 アコッセさんのいる本拠地に向け、私たちは朝早く出発した。今回も私たちに同行するのは、あの最初の避難場所からずっと私に同行してくれている、団員二名。二人に挟まれ、私たちは前進する。

 その途中、先生は様々な知識を披露する。


「最近の研究では、あの薬草は組み合わせにより、逆に人体に害を及ぼす恐れがあると分かった。問題がない組み合わせは……」


 そんな講義を受けながら、私たちは歩く。

 団員二人も、少しでもドヴァル先生に話を聞いていないと見なされると、叱責が飛ぶ。そのせいか、団員たちの顔は、げんなりとなっていく。


「お前らは団員だろうが! 医師のいない場では、己の知識だけが頼りになるんだぞ! 実際薬が足りんと、右往左往したのは、どこのどいつらだ! 私やジャスティーがいなければ、お前ら、患者に手も足も出せんかっただろうが! 少しは反省せんかい!」


 叱責が飛べば、全員肩をすくめる。二人が叱られているのに、私まで怒られているようだ。優しい父が、こんなに怒りっぽい人に従事していたとは、信じられない。


「先生……。あまり大きな声を出されると、敵に居場所を知られるので、控えてくれませんかね」


 やんわりと先輩団員が注意をすれば、しばらく黙る。だがまた薬草を見つけると、講義が始まる。そして……。


「大体、薬を十分に用意していないのが悪い! 医療知識を授けていないのも問題だ! 私がアコッセに、改善を要求してやる!」


 ドヴァル先生は燃え、私たち三人はいろいろ諦めた。


◇◇◇◇◇


「まあ! ジャスティーじゃない! 本当に無事だったのね、良かった!」


 アコッセさんが滞在する避難場所に着くと、レイネスさんが私を見るなり駆けてきた。そして、ぎゅっと強く抱きしめてくれる。


「レイネス、さん……」


 久しぶりに会えたレイネスさんは温かく、優しい心地が母を思い出させた。鼻が痛くなる。


「レイネスさん! レイネスさん! お母さんが! お母さんがあぁぁぁぁ!」


 親しい人と会え、ほっとしたせいか、私は大きな声で泣き出した。


「聞いているわ。辛かったでしょうに……。でも、貴女が生きていて、本当に良かった。モディーンも貴女を守れて、今ごろ誇らしいでしょうよ」

「あああああああああん!」


 レイネスさんは私の背中を撫でてくれる。まるで母が抱いてくれていたよう、優しく何度も、何度も……。

 しばらくして泣き止むと、レイネスさんがハンカチで顔を拭いてくれる。


「お父様は今、薬草を摘みに行かれているわ。もうしばらくすれば、帰って来ると思うから」

「……アローンさんは? 討伐から、帰って来た?」


 鼻をぐずらせながら尋ねると、頷かれた。


「ええ。フェーデ殿下も合流され、無事に解決できたわ。二人とも朝からアボッカセ奪還に向かわれ、今は不在だけど……。大丈夫。あの二人だもの、すぐに任務を終えて帰って来るわ。

 さあさあ、お茶でも飲んで休んで。どの避難場所から歩いて来たの? 襲撃者に出くわさなかった? 本当、無事で良かったわ」


「……ジャスティー?」


 名を呼ばれたので振り返ると、薬草を詰めた篭を持った父が、立っていた。

 たった数日会わなかった父は、やつれた顔に、無精ひげを生やしていた。まるで別人のように目にも光がない。だけど、会いたかった父に変わりない。私はレイネスさんの手から離れると、父の胸に飛びこんだ。

 レイネスさんは少し寂しそうに笑うと、私たちを二人にしてくれようと考えたのか、なにも言わず立ち去った。


「お父さん! お父さぁん!」

「ジャスティー! よく無事で!」


 私も父も、涙を流した。


「お父さん、お母さんが……。お母さんが……っ」

「ああ、聞いている……」

「私のせいで……。私がお母さんを守れなかったから……。お母さんが私をかばったから……。ごめんなさい……っ」

「なにを言う! モディーンは……。母さんは、いつもお前を助けられないと悔んでいた……っ。だから今回お前を守れて、晴れた気持ちでいるはずだ」

「でも、でも……。守ってくれなかったら……。きっとお母さん、生きて……」

「馬鹿なことを言わないでくれ! 自分が助かっても、お前が目の前で傷つく姿を見れば、モディーンは……」


 だけど私は、あの時もっと周りに注意を向けていたらと後悔し、自分を許せない。

 背後からの敵に気がついていれば、母は私を庇うことなく、一緒に父と再会できたのに。


 驕っていた。


 マシェットの一撃を防いだこと、アローンさんたちから訓練を受けていたこと。それで自信をつけていたが、私は実力以上に、自分を驕っていた。だからきっと、罰が当たったに違いない。


「おい、ファイオス! ここも薬が足りんのか! お前がいながら、なんでこんな状況になっている!」


 再会している場に大股で割り込んできたのは、怒りで顔を赤くしているドヴァル先生だった。

 先生は到着するなり、現状を確認すると言っていたが、薬が足りていないことで怒りが沸いたらしい。


「ド、ドヴァル先生⁉ なぜここに⁉」


 思いもよらない人物の登場に、父は驚いた。


「医師が足りないと思ったから、駆けつけたに決まっているだろう!」

「城で働いているはずでは⁉」


 父の涙は止まり、なぜ先生がいるのか理解しようと必死になっている。


「そんなもの、とっくの昔に辞めとるわ。今は薬草の分布図を作ったり、新種の薬草がないかを探したりしながら、旅をしている。その最中、アボッカセ襲撃の報を聞いて、急いで駆けつけた」

「そうでしたか……。先生、お久しぶりです。お元気そうで……」

「ふん、なんだ。薬草を摘みに行っていたのか」


 父の言葉を遮ると篭を奪い、素早く中を確認する。父は慣れているのか……。


「本当、お変わりなく……」


 小さな声で、そう言った。


「ファイオス、よく娘に知識を授けていた。褒めてやる。おかげで薬不足が多少は解消された。まさか避難場所に、医療知識がある者が一人もいないとは、思いもしなかったわい」

「薬草を教えていれば、いつか役立てるかと思い……」

「南の方はどうだ。薬は足りているのか」


 父の答えを遮り、自分の知りたいことを質問する。本当、自由な人だと思う。


「伝令からの話だと、なんとかやっているそうです。あちらは医療関係者も多く……」

「それだ!」


 自分より背の高い父の顔に、指をつきつけるドヴァル先生。


「なぜそいつらは、北の避難場所に向かわない。医療関係者が足りないことを知らんのか?」

「あ、いや、それは……。多分、襲撃者を恐れ……」

「どこのどいつだ! そんな弱気な奴は!」

「いや、あの……。本人と直接話をしていないので、実際どういう理由かは……」


 明らかにドヴァル先生に圧されている父は、冷や汗をかき、しどろもどろと答える。名指しすれば、ドヴァル先生が叱り飛ばしに行くと言い出しかねないと、分かっているのだろう。決して名前を明かそうとしない。


「それより先生! 先生に助けて頂きたいことが!」

「なんだ」


 どうやら父は、矛先を変えることにしたらしい。


「最近、南で未知の病が流行していまして。隣町も多くの患者が苦しんでいます。アボッカセ周辺にも、ついに患者が発生し……」

「未知の病? 症状は?」


 それまで怒っていたドヴァル先生の顔が真剣なものに変わる。父の顔もすっかり、医師のものに変わる。


「初期症状は、まるで風邪のようです。その後、体のしびれや錯乱が始まります。やがて目鼻やいたる部分から出血が起き、多くの患者が命を落とします。助かったとしても、意思疎通が困難な寝たきりとなり……」

「そいつは……。ホーベル王国の風土病じゃないか?」


 心当たりがあるのか、ドヴァル先生はすぐに答えを導き出した。

お読み下さり、ありがとうございます。

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