訪問
夏休み、ぼくは桜と部屋でアイスを食べている。
桜が来たので、冷房も入れた。
…
不思議な時間が流れる。
夏なのに、アイスのおかげで寒い。
冷房の音だけが響き渡る部屋。
うたでも流しておけばよかった。
桜が来るのをわかっていたら、アイスを食べることをわかっていたら…
来るの知ってたら、もっと色々準備できたのにな。
もっとおしゃれして、髪も整えて…
「ねぇゆうた、アイスって溶けるよね」
「え、うん」
なぜそんな当たり前の話を…
あ、沈黙に耐えられない状態ってこと?
じゃあ、なんか気の利いた言葉を言わないとじゃないか。
なんにも考えてなかったから、このバニラアイスのように、頭が真っ白なんですけど…
えっと、えっと…
「時間もアイスも一緒だね」
「え、どういうこと?」
「だって、アイスはすぐに溶けちゃうし、時間もあっという間に流れちゃう。大切にしたいものこそ、どこかにあっという間にいなくなるんだよ」
…
それって…
「桜は、大切にしたい時間がなくなっちゃったの?」
「ううん、まだ大丈夫。でも…時間の問題かなって」
それは…田口さんに先輩をとられちゃう的な?
「まだ大丈夫なら、諦めないでいいんじゃない?それに、アイスは溶けるけど、美味しさって忘れないでしょ?たとえ大切な時間が思い出になったとしても、思い出は心に残るよ。ね?だから、大丈夫」
「そっか、そうだよね」
桜は、にっこりした。
ぼくは、好きな人に恋のアドバイスをした。
あぁ、あんなにたくさんの本を読んだのに、全く進展しないぼくと幼馴染。
なんなら先輩とのアドバイスするとかさ…
ぼくは、どうしたら正解なのだろうか。
…
気の利いた言葉をかけてあげることすら、できません。
唯一、思いつく言葉といえば…
カルボナーラの夏休み…
意味がわからない。
なぜそんな言葉が思いついてしまったのか…
しかし、にっこりした桜をみて思うことがひとつだけある。
この笑顔は、ずっと安定していてほしいと。
だから、ぼくは決めた。
桜の荷物持ちになると。
別に、めしつかいになるということでは、ありません。
ただ、ただぼくは…
桜のすべてを一緒に背負う気持ちで、寄り添う。
そういうことだ。
一緒に背負ってやろうじゃん。
桜、ぼくは桜がどう決めようと、きみの見方になるよ。
偽カレだって、任せろってなもんだ。
ただ、先輩には…二股をどうにかしていただきたいのが本音だ。
先輩には、ぜひムチをプレゼントしたい。
そして、桜にはあめを。
そもそも、先輩がなぜ二股しているのか、理由はわからない。
なにか、ちゃんとした理由がある可能性は、あるかもしれない。
シカシ
エビデンスがないんデス
ないけどショウコインメツ滅滅
ホロビロ
桜の前にぼくが壊れそう。
……
でも、やっぱり二股は…きこえがよくないよ。
じゃあ、三股ならいいよね?ってなるわけがないんだが…
まさか、三股四股とかしてないよね⁉︎
あの先輩、かっこいいし…まさか、告白されたら断れない優しいタイプだったりしないよね?
だれでもようこそ劇場の人じゃないよね⁉︎
だれだよそれってなるけど…
こればっかりは、先輩しか知らない交友関係…
「ねえ、ゆうた?さっきから難しそうな顔してるね?大丈夫そう?」
⁉︎
「あ、うん。大丈夫…」
「なら、よかった。アイツ…いや、アイスごちそうさまね。」
え、今…
アイツって言わなかった?
グチなら、全然聞くのにな。
だれかにグチを聞いてもらうと、効くよね。
スッキリするっていうかさ、なんか、ね。
「アイツって、今言いかけたよね?」
「ううん、言い間違いだよ」
「そっか、ならいいんだ」
「うん、あ!てか、ここに来た理由なんだけど…」
「なに?」
「本、わたしもゆうたがいつも読んでる本貸してもらいたいんだ」
?
「なんで?」
「えっ、なんか…なんとなくだよ」
…
「そっか。でも、ぼくが読んでる本って、たたかいとか転生とか現実離れしてるけど、それでもいい?」
「うん、面白そう」
桜は、いい幼馴染だ。
なぜぼくが読んでる本が知りたいのかわからないが、とりあえず貸してあげることにした。
桜は、ありがとうって言って、本を持ち帰った。
続く。




