耳の聞こえないエルフの少女
今日は色々あって、勉強と「なろう小説」のメンテナンスとも重なってしまい、保存することに時間がかかってしまいました。なので今日は一話しか更新できないかもしれません
ルカがテレビを止めた。
子供たちは一瞬、もう少し見ていたいという表情が顔に滲み出ていたが、すぐに笑顔に戻る。
見計らったかのように、ルカがゆっくりと口を開いた。
「いきなり止めてごめんね。大体2つ分の話を見終わったから休憩時間にしようと思ったんだけど…その様子だと皆まだ見てられる?」
周囲を見回してルカがクラスメイト達に問う。子供たちは顔を見合わせて、目をパチクリさせた。そしてリーダー格の男の子が席を立ち、ルカに向かって言葉を発した。
「勿論皆で見る!」
男の子の後ろで無邪気に笑っている子供たちの様子を見るとルカも流石に無理維持は出来ないと判断したのか、根負けした。降参の意味を込めて両手を上げて見せた。
そして静かにクラスメイト達に告げた。
「オッケーオッケー、皆の意思は分かったよ。じゃあもう休憩なしで第一章まで全部見ようか。探求心や好奇心はそがれる前に続けることが一番だからね!」
子供たちの間に歓喜の声が漏れた。友達と話しながら喜んでいる生徒もいれば、一気に脱力をしている生徒もいた。教師も一回ルカと子供たちの繰り返される交渉を目にしながら額に冷や汗が流れていた。
「それじゃあ席について。えっと、アスラ君だったかな?皆の代表として話に来てくれてありがとう。席に戻ってくれて大丈夫だよ」
代表として前に出てきた男の子、アスラと呼ばれる生徒に向けて優しく席に着くよう促した。
アスラが着席したのを見計らって言葉を続ける。
「それじゃあ、次の話を始めるよ。今日は第一章までだから少しゆっくりめに流していくよ。第二章は来週の水曜日にもう一度学校に来るからその時に見ようかなと思うよ」
「来週もう一度来る」その一言に教室中の生徒の目が変わった。
「来週も来てくれるの!?」「第二章はどんな話なの!」「予告みたいなもので良いからヒントちょうだいよ!」子供たちの中から歓喜の声と次の章に対する興味の声が混じっている。
「そこまで楽しみにしてくれるのは嬉しいけど、ネタバレは面白くないからね。僕としては宿題を先に出しておこうかな。今日見た分の話の内容の要点をノートに短くまとめて、来週僕の提出をして貰おう!」
子供たちからえ~という声が漏れた。宿題は嫌なのだ。実に小学六年生らしい反応である。
でも先程前に出てきたアスラが声を発した。
「宿題をしないで楽しい事ばかりするなんて、小学六年生としてよくないよ!」
その声が響いた途端、誰も反応しなくなった。その言葉にルカと教師は感心した。小学六年生の子がこんなにも真っ当な言葉を発することができるのかと。
「ありがとね。アスラ君が言ってくれた通りだよ。じゃあこうしようか。宿題をちゃんと提出した人が次回の第二章は見る事ができることにしよう!それだったら皆のやる気も高まるだろう?」
生徒たちは目を見合わせて確かに、と頷いた。ルカの飴と鞭の使い分けが大分洗練されたことに教師は気づき、苦い顔をしていた。
「じゃあこれで良いかな?」最終確認の質問をルカがすると「は~い!」一斉に声を上げ、楽しそうに目を輝かせていた。
「よし!じゃあ見ようか。ここからは休憩は取らないから水分補給やお手洗いは自分の好きなタイミングで行くようにしてね!」
ルカがテレビのボタンに手を掛け、ビデオテープが再生される。
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あれから3時間、走りに走り続けてもうヘトヘト!という時に森の出口に続く小道が見えてきた。途中で色々なモンストールに会ったが、大した話もせずに通り過ぎてしまった。
今思えばあそこで情報収集をしていればもう少し早めについたのではないかと後悔している。
15分ほど切り株で休憩し、水分補給をした。モンストールにとっての水分補給はエセンス粒子の補給の事である。モンストールのエネルギーの源もエセンス粒子のため、周囲にあるエセンス粒子を感知して吸収するのだ。
ただ、今の俺は人の姿に変身しているので口を開けて吸っている。少し口を大きく開けることに抵抗があるが、モンストールの体に転生してからはエセンス粒子が足りなくて行動不能に陥りかけた時もあったので止むを得ない。
元侯爵級天使としては礼儀を弁えなければアウラスから怒られていったので、口を大きく開けるなんてことは論外である。欠伸をするときも手で口元を隠すのが基本であったため魔物の様に口を大きく開けることに抵抗が生まれたのだ。
まあ、その事も含めて魔物に転生するというのは今までの常識が全く通用しなくなったことを意味している。
天使の時代では当たり前だったことが魔物ではしなくなり、逆に魔物になってからする様になったことが天使時代の時は野蛮だと教わっていた物事も少ない訳ではなかった。本当に魔物と天使の生活は雲泥の差である。
俺としては窮屈な天使生活より、自由翻弄な魔物の方が性分に合っていると思うがな~
そろそろ15分経ったか?早めに出ないと体力を消費してる事もあって、夕暮れまでには出口にたどり着けない可能性もあるのだ。
少し長話をしすぎた事で約20分経ってる事に気が付いた。この世界では時間を図る道具がない。なので他の天使たちがこの世界に堕とされたら成す術もなく途方に暮れていたことだろう。
だが、この俺は時空の天使アイオンである!この俺に時間を図ることなど造作もない事なのだ!
と言う訳で時間帯を図るために少し早歩きをしながらエセンス粒子の流れを読み取っていきたいと思う。
実はこれ、エセンス粒子を感知できる魔物であれば誰でも出来る技術なのだ。
なぜならエセンス粒子は時間帯によって流れが変わり、変化をもたらす。
その為、朝のエセンス粒子の流れに順応したモンストールは朝型となり、夜のエセンス粒子の流れに順応したら夜型のモンストールになるのだ。
ちなみにムーンデッドウルフは「ムーン」という言葉がついている通り夜型なのである。
ムーンとはこの世界では月という意味らしい。他世界の言語を習得していて良かったと今更ながらに思う。サッフォーとルアにしごかれながらやっていたのであまり良い思い出は無い…
しかし、俺は転生という特別な生まれ方をしたので朝だろうが昼だろうが夜だろうが、関係なしに自由に行動できるのである。本来のムーンデッドウルフであれば、朝や昼には弱体化しているので天敵のモンストールに殺されないよう、棲家で大人しくしているのだ。
ムーンデッドウルフは群れで行動する習性を持たない。文字通り一匹狼という奴である。なので、天敵に群れで襲われたとしても戦う事は殆どなく自慢のスピードでサッサと逃げてしまうのだそうだ。
格好いい見た目と威圧的な目は出来るだけ天敵に会った時に追い払いやすくするためだそうで…何か同族には悪いが…結構な臆病者だよな。いや、悪口言ってる訳じゃないんだよ?ただ単に事実を述べただけであって!……はい、言い訳でした。すいません。
俺は転生してから随分と独り言が増えた気がするが、気のせいだろうか?誰か教えてくれ!
…まあそんな冗談はさて置き、どうやら今は午後の2時くらいの様だ。夕方まではかなり時間がある。運が良ければ人里には辿り着きたいものだ。
30分ほど早歩きで行くと小道の出口も見えてきた。外に出ると、広大な草原の奥に更に広い海が広がっていた。
「お~!綺麗な海だな!天界から見ると下しか見えないが、地上から見るとここまで綺麗な水平線になっているのか!」
思わず声に出てしまった。ハッとして声を小さくしようと思ったが既に手遅れである。
一人で顔を赤くしていたら、一人のエルフが寄ってきた。それも目の色が金と紫のヘテロクロミアである。別名オッドアイとも言われる左右で目の色が違う希少な組み合わせである。
エルフとは長命種であり稀に永命種とも呼ばれる永遠の命を持つエルフも生まれると言われている種族である。殆どの者が美形でかなり色気のある種族だ。
エルフは白髪が殆どと聞いていたが、彼女を見るとブルーブルージュと呼ばれる髪色をしている。身長は165㎝程で大分整った顔立ちをしている。と言ってもまだ14、15歳くらいの少女である。
しかし、エルフは長命種であるが故に成長が途中で止まってしまうのだ。なので20代くらいで止まる者もいれば、10代前半の少年少女の姿で止まってしまう者もいる。それはそれで少し不便な体質である。そして一番の特徴は耳の形だ。人間の様に丸みがある訳ではなく。
横に伸びていて先に行くほどとがった形になっていくのだ。
さて、どうしようか。黙っていても何も進まないが、特に話す事も無い。寧ろあっちから寄ってきたのだから話題があるのではないかとも思ってしまう。べ、別に女の子と話すのに慣れてないって訳じゃないんだぞ?これでもサッフォーとかユラとかアイラとかとも話してたし…別に…別に…
「慣れてないって訳じゃないんだよぉ!!!」
アイオンの大声が一気に草原に響き渡った。隣にいたエルフの少女が大声でフラフラしている。
「す、すまない!つい心の声が漏れてしまっただけで、驚かすつもりは無かったんだよ!」
フラフラしているエルフの少女の肩を掴んで必死に説得しようとしている。第三者から見たら完全に不審者扱いされるところだっただろう。3分後、ようやく意識がはっきりしてきたエルフの少女にしっかりと謝った。
「本当に申し訳ない!この世界に来たばかりで不安が募っていたんだ。決して脅したりするつもりは無い!誤解しないでほしい!」穴があったら入りたいという言葉があるだろうが、まさしく今この状態の俺が言うのに相応しいだろう。
頭を下げながら少女の様子を窺っていると
オドオドしている様子で指で何かを表している。恐らく手話である。という事は彼女は耳が聞こえないのか!生まれつきか事故かは判断しかねないが、ギリギリ分かるという程度の知識で手話の様子を見た。
どうやら分かりやすい様に一文字一文字を丁寧に表してくれてるようだ。
えっと「お・ど・ろ・か・せ・て・す・い・ま・せ・ん・も・し・よ・け・れ・ば・わ・た・し・の・む・ら・に・き・ま・せ・ん・か」と表している様だ。
つまり「驚かせて申し訳ない。なので一度村に来てくれないか?」というお誘いである。俺も手話は一応サッフォーに叩きこまれたので平仮名で返す事は出来る。
「こ・ち・ら・こ・そ・も・う・し・わ・け・な・い・そ・の・お・さ・そ・い・よ・ろ・こ・ん・で」
こんな感じだろうか?少女の顔を見ると、パアッと花が咲いたように明るくなっていた。
どうやら伝わったようだ。指をさして村の方に案内してくれている様だ。
少女が足早に走っていくのを付いて行こうと同じスピードで走る。
約10分後…エルフの村に到着した。村人全員が見知らぬ者に対して警戒をしていたが、少女が頑張って説得してくれたおかげか認めて貰えたようだ。接待室のような場所に連れていかれ、この村の村長と思われる男性エルフとその側近の何人かが部屋に入ってきた。
どうやら言語を聞いていると古エルフ語しか話せないようなのでこちらも古エルフ語で接する。ジュラから習っておいてよかったぁ
俺が自分たちとの言語に合わせた事に気づき感謝を示していた。
先程の少女の話を聞くと村長が言う限りは…
「あの子は昔、人間に拉致されたことがあり、ストレスや恐怖によって耳が聞こえなくなり喋る事が不可能になってしまったのです。しかしあの子の両親が命がけで救ったことによりあの子は救われました」
「あの子のご両親は?」そう聞き返すと目を伏せた。その仕草だけで何となく察することができた。
「お察しの通りで御座います。そのためこの村全員であの子を支えてまいりました。しかし、我々にも限界が来たというものです。手話を使う事が出来るエルフは皆、村のために出稼ぎに行ってしまいました」
「出稼ぎ」エルフの様な種族は大抵、森で過ごすことが多い。自然の恵みを得て生活するのだ。しかし、限界は来る。人間たちの発展により森にも影響が出ているそうだ。
つまりは、自然の恵みの代わりとして食事や金を稼ごうとして人間の町へ行く事が多いのだ。そして、殆どの者が帰ってくることは無い。
「成程。事情は分かりました。しかし、僕をこのよう場所に連れてきたという事は何かあるのでしょうか?」ここは応接室の中でも最高級の部屋だ。逆に何もない方がおかしい。
「…はい、そうで御座います。あの子…メアの耳を治してほしいのです!身分不相応の願いだという事は分かっております。しかし、どうしても元の状態に戻してやりたいのです!どんな対価でも払います」
「どんな対価」その言葉に俺は反応した。俺はスキルの発動方法が知りたい、彼らはメアさんを元の状態に戻してやりたい。winwinの関係が築けるのではないだろうか?
「分かりました。では治した際には2つ願いを聞いてもらっても良いですか?」
その言葉に村長は驚いた顔をした。どんな名医にも治せなかった耳を治すと言ったことに対してだろう。
「勿論です!たった2つの願いでメアの耳が元の状態に戻る事が出来るなら、悔いはありません!」
そうしてその日のうちに契約をして、メアの耳を元に戻すために術式を展開した。術式やスキルの展開の仕方だけ1つ目の願いとして先に教えてもらったのだ。
話を変えるが諸君、俺がどうして治せるのか…その理由を知りたいのではないかね?
そうだろう、そうだろう。聞きたいよなぁ?なぁ?ならば教えてやろう。俺が治すことのできる理由を!
術式を展開しながらで申し訳ないが効率のためだ。
俺はスキルを確認した際に、前世の時空の天使としてのスキルがいくつか残っていることが分かった。
その中で時空操作のスキル:マニプレスリスパクトをそのまま引き継いでいたのだ。このスキルの権能はいくつかあるが、一つは対象の時間を操る事が出来るのだ。
過去だろうが未来だろうが、何かを元に戻す際に使う便利な能力である。
余談だがこれでアウラスの壊れた私物を治していたのだ。
これは生物にも使う事が出来るスキルで、敵を討つときに対象の寿命を未来に行かせることで寿命となりそのばで体が骨にしたりする事が出来るのだ。しかし永命種の場合はあまり意味がないので傷を治したりする際に過去に巻き戻したりして使っていたのだ。
これこそが不治の病でも生まれつきでなければ治すことができる秘密なのだ!生まれつきの場合は生まれる前に戻してしまうので存在そのものが消えてしまう。だから使う事は出来ないが、今回は事故という事で元々ではない故にこのスキルを使えたのだ。さてそろそろ集中集中!
それから約15分後、術式を解除しエセンス粒子を取り込む。久しぶりにした事と、ムーンデッドウルフになったばかりという事でかなりのエセンス粒子を失った。幸いにもエセンス粒子の濃度が高いエルフの村なので簡単に回復で来た。
確認のため、一応本人に確認を取ってみることにした。すると、見事に喋る事が出来たのだ。事故が起きたのが約10年前だそうなので、喋っていない状態が続き片言になっていたが意味は十分伝わった。
村の人が泣いてるのを見ると思わず俺までウルッときてしまった。
そしてその日の夜は俺への感謝とメアさんの回復を祝して大規模な宴が開かれることになった。俺は久しぶりの食事に思わず感動してしまった。エルフの料理は自然の恵みを最大限まで利用していて、本当にエルフ独自の技術を使っていたのだ。
その日は飲んで食べてを繰り返し、気づけば俺とメアさん以外のエルフは寝落ちしてしまっていた。
実質、二人っきりの空間だが特に喋る事も無いのでかなり気まずい。なのでこれからどうするのかをメアさんに聞いてみた。
「えっと、わ、私はアイオンさんと、い、一緒にいたいです!」
と大声で宣言したのだ。「俺と一緒にいたい」つまりは俺の旅に付き合ってくれるという事だ。
村長から聞く話じゃメアさんは既に21歳なのだとか。なので冒険に行く事に関しては問題ないと俺は思っている。しかし、そう簡単に故郷を出ると言うのは難しい話である。どんなモンストールも親との別れは辛いものなのだ。それも含めてメアさんには確認をしたが、本人は無理にでも行きたい!との事だった。
と言う訳で俺は、まだ決めていなかった二つ目の願いとしてこのエルフの村を俺の拠点にする、という事にした。そうすれば俺の活動範囲も決まり、俺の前世の記憶も使って発展するだろう。
そのことをメアさんに話し、納得してもらったうえで今日はお開きにした。




