第五十一話 再会、そして救出
聖アウェーク教会。
スフィンクスが陥落してからすぐ後の出来事。
「チラ!」
リントが教会の扉を壊すような勢いで開く。
顔を振り回して視界を全方向に広げようとするが。そうやって懸命に、その人を探す必要は全くなかった。
目の前に。可憐な茶髪、リントと同じ翡翠色の瞳の少女が。
笑顔で、腕組みと仁王立ちをしていたから。
「よう、兄貴。遅いじゃねぇか。待ちくたびれたぜ」
「ち……チラ!!!」
妹チラに向かって駆けだす、半泣きの兄リント。
救出まで一ヶ月。様々な困難を乗り越えて、ようやく元気なチラの顔を見れたリントは涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
「元気だったか!? お腹空いてないか!? 眠くないか!? どこか怪我してないか!? 健康か!? 何でも言ってくれ!」
「……兄貴」
「え?」
身体の隅々まで確認してくる兄の顔を、入口側に向ける妹。
「仲間が見てるってば」
「はっ」
そこにはガーベルとマルティーズの姿が。両者、実に冷ややかな目をしている。
『……シスコン?』
二人で声を合わせて言い放つ。
「いや違うって!」
大きな声で否定したリント。
「ははっ。面白くていい仲間じゃんか、兄貴」
「今のを見て!?」
「はいはい」と雑に受け流したチラ。
「俺は本当に大丈夫だって。飯も、寝るところも提供されたから。でもさ、今回で理解したよ」
チラは自身の胸に手を当てる。
「危機感が足りなかった。俺の固有技術は悪い奴に利用されちまう」
そして、覚悟をもって前を見据える。
「だからさ。今度はもっと色んな事考えて生きてくよ」
少女は今回の経験で自覚した。
己は、魔王と異界魔導衆、そして配下に対峙する、英雄補完協会の『極光の勇者』の血筋であり、世界を揺るがす能力を有しているという事実を。
彼女も、成長したのだ。
「しっかりしてるわね、チラちゃん。一人で抱えてどっかに行くアンタより」
「え」
「そうだな。俺達に連絡すらしなかったのは根に持ってるからな」
「ええ~!」
そんな三人を横目に、教会を出ようとするチラ。
「じゃ、行こうぜ」
「行くって……どこに?」
「どこって、勿論」と。弾む声で兄に返答する妹。
「飯屋に決まってんだろ! 腹減った!」
「はは、そうだね! 行こうか!」
「良いわね! 今日はマジでいっぱい食べるわよ! なんだかお腹、空き空き丸!」
「はぁ!? 表の後始末がまだ……ま、まぁなんとかなるか? 多分」
かくして四人はユキとウェル、更になんと気絶したスフィンクスを連れて晩御飯を食べに行くという暴挙に出たのだった。




