第三十三話 英雄補完協会・本部~会長室~
フロアマップによると、会長室が二階らしい。
そこにリントの居場所のヒントがありそうだ。遠くて滅茶苦茶しんどいけど、そこに行ってみよう。
というかなんか、人の気配が一切ないな。なんでだろう。ここにいる人達、全員出てっちゃったのかな。
どこか不気味だ。やめてよ。わたしホラゲーとかまじで苦手だから。
そんな事を考えながらせっせと飛び跳ね、二階手前の階段についた。
ここは気合い入れないとな。
「ふっ! ふっ!」
わたしはこの状態だと意外と跳躍力がある。(元々運動神経悪かったけど)
しかし疲れるものは疲れるし、床に打ちつければちょっと痛い。
そこは人間の状態とあまり変わらないのだ。
「はぁ、はぁ」
でも、リントが困っている、リントの妹のチラちゃんが助けを求めている。
だから……ゆっくりと、着実に急ごう。矛盾してるかもしれないけど。
息を切らしながら、休みながら。
そうして、やっと階段を登りきった。
くそう。長距離走をやった気分だ。もう階段は勘弁してくれよな。
まだ直線距離がある。近いはずなのに、遠く見える。誰かに運んでほしいが、そうも言ってられない。
「あと一息……!」
ラストスパート。一気に駆け抜けた。
……会長室の前。
本当にここで合っているか、フロアマップを出して見直す。
「良し」
どうやら合っていたようだ。
やっとここまで来た。
頼むから彼の居場所が割り出せそうな情報をくれ。
そう願いながら。
ドアノブに飛び乗り、ギギ。と音を立てて木製の扉を開ける。
この扉だけ、異様に重い。気の所為だろうか。
その部屋は。
両壁は本でいっぱい。正面には羽根ペンや用紙が山積みになった机と、革製の椅子。
……位の高い者の部屋であるのは間違いないな。
「誰も居ない……?」
もぬけの殻。とあればやる事は一つ。
「机の上、荒れたらごめんなさいっ、と」
資料が山積みの机に飛び乗る。
着地、と同時。
つるっ、と机の上で横転。
「うわわっ!?」
なんてドジなんだろう、わたしは。こういう所だよな。全く。
書類を拾い集められないため、申し訳なく思っていると。
契約書のような用紙に視線が落ちた。
その、内容は。
「は? え?」
理解を拒みたいものだった。
だが、理解してしまった。
……今回なぜ、トイガーが躍起になってリントを呼び戻したのかを。
英雄補完協会会長
三日後、 英雄補完協会・本部の訓練場にて。
リント・アルガルドレの提供により和平約定を締結とす。
刻限を過ぎた場合、全面戦争を仕掛けるものとする。
異界魔導衆
英雄補完協会は、 異界魔導衆に脅しをかけられていたのだ。
それと、チラちゃんの一件といい、間違いない。
なぜかは分からないが、王家の血筋が狙われている。
……全面戦争。
アルガルドレ家と魔王。
百年にも渡る永き争いに。何者かがここで終止符を打とう、というのだ。
「あいつら、チラちゃんのみならず、リントまでも……!」
真犯人を捜すのは後だ。まずはリントを助けよう。
幸いにも、契約書にはリントが今いるであろう場所も記されている。
契約が交わされる場所は。
この純白の屋敷の裏庭にある訓練場、だった。
「行かなくちゃ」
息切れや、疲れなんて知ったこっちゃない。
わたしは部屋を飛び出し、急いで裏庭に向かった。
世界の命運と、パーティーメンバーのリント。彼の命が懸かっている!




