第三十二話 固有技術成長過程全書(オリジナルスキルチャート)
英雄補完協会・本部の一階。
組織の本部、というのはどこか違和感のある内装だった。
煌びやかなシャンデリアに、ワインレッドの絨毯。
これは恐らく、古くから王族として名を馳せてきたアルガルドレ家の栄耀栄華。
それを残す為のものだろう。ここの主、トイガー・アルガルドレがどのような性格をしているか、伺い知れる……というのは偏見か。
とはいえ、広すぎる。どこから探したものか。まずはフロアマップみたいなのを探さないと。
「えっほ、えっほ」
わたしは懸命に飛び跳ねる。
いやー。道具袋としての移動が、ここまで不便とは。
一人になって痛感した。いつも誰かの腰にひっついていたからね。
しかし時間がない。
ある程度、探索する部屋に目星をつけよう。
「ここはどうかな」
一階の、突き当たりの部屋。ここを探索してみる事にした。
ガチャリ。扉のドアノブに乗っかり、開いてみる。
「おっ、運がいいな」
ここは、ちょっとした図書館のような部屋だ。
中へ入り、見取り図が書いてそうなものを探す。
ぐっ……どれも同じに見える。まずいな。
とりあえず、一冊取り出してみる。
袋の紐をひっかけて……っと。
「えいっ、と」
赤い本を取り出してみた。
うわっ、埃が凄い。ぺっぺっ。
「どれどれ」
本の内容を確認する。
タイトルは『固有技術成長過程全書』か。
流石に気になるな。ちょっと読んでみるか。
固有技術には二つ、成長の『過程』が存在する。
一つ目の過程は『特化型』。多くの者がこの道を辿る。
二つ目の過程は『万能型』。初めからこの道を辿るのも、特化型から派生するのも希少だ。
ここまでは知ってるぞ。
パーティーのみんなは、特にわたしを分析したガーベル君によれば、わたしが万能型になるらしいけど。褒めても何も出ないよっ。
ページをめくる。
固有技術には四つ、成長の『段階』が存在する。
これは聞いた事無いぞ。
まずは第一段階の『 第一の試練』。自らの固有技術を開花。きっかけを掴めるかは運次第でもある。
次に第二段階の『第二の試練』。固有技術の基礎を繰り返し、応用を体得。めげることなかれ。花開く時はいつか分からぬ。
そして第三段階の第三の試練。他者の固有技術を見て、受けて、盗め。自らの固有技術に大きな進化をもたらすだろう。
さらに四つ目……ここは文字が掠れていて、とてもじゃないが読めなくなっているな。真、という文字だけが見える。気になる。
四段階か。今わたしは三つ目なのかな。みんなから色々教わってるし。
次の段階が最後なのかな?
……もしかして、あと少しで覚醒して無双しちゃう!?
なーんてないよね。そんな都合いい展開。
そして最後のページを見てみた。
そこには、こう書かれている。
『生きとし生けるものそれぞれに、個性的な才能が必ず存在します。わたくしは、それが目覚める過程が見たいのです。そう、どのようにして成長するのか。諦めないで。どうか試練を経て、かけがえのない成長を。そして』
少し、行数を空けて。
『せっかくなら楽しも! うえーい!』
……自分にも当てはまる所があって、共感して感動してたのに。最後の一文で雰囲気が台無しだよ。
てか、わたくし……? 著者は女性なのかな? なんとなくボイス付きで聴こえるのは気のせい?
まぁいいか。
要するに……地道に、楽しみながら頑張れって事だな。
当たり前だろって思ったけど、意外と当たり前って気がつきにくいからね。
パタと本を閉じて。
「さて、地道にフロアマップ探すか」
結局わたしは、本を出しまくって部屋を散らかしながらも小一時間で会長室の場所を突き止めたのであった。後片付けは誰か、よろしくね。




