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第二十四話 失踪、疾走

「クソッ、こんな時に……!」 

「まだそんなに遠くじゃない……かも!」  


 まだ朝焼けが滲(にじ)む、アトスエンスの街。


 石畳(いしだたみ)の裏路地を銀髪の男が疾走していた。


 ガーベル君とわたしは街の出口である北の門、マルティーズちゃんは南の門へ向かってリントを捜索(そうさく)。


「招待状の内容が本当なら、まずいぞ」 


 招待状の文章はいたって簡潔(かんけつ)だった。


 しかしながら、リントという人間の立場を示すには十分すぎる内容。


『旧名(きゅうめい)リント・アルガルドレ。英雄補完協会(サポーター)・本部で行われる、第一種会議へ単(・)身(・)での出席を命ずる』 


 送り主の名は――トイガー・アルガルドレ。


 メルカ資料館で見た家名だ。


 確か、英雄補完協会《サポーター》の始祖(しそ)の家名。


 リントはそんなアルガルドレ家の、直系の血筋だったのだ。あの並外れた剣術にも納得がいった。


 今、異界魔導衆(ヴィジター)に囚われの身である妹のチラも恐らくそうであろう。


 こんなタイミングで呼び出すなんて。しかもそれに応じざるを得ない関係って。


 明らかに異常だ。ふざけてる。


「畜生。もう北の門じゃねぇか」 


 北の門。


 そこには、街の自警団(じけいだん)から派遣された兵士が二人いた。


「なぁ、翡翠色(エメラルド)の目をした奴が通らなかったか?」 


 ガーベル君が、呼吸を荒くしながら問いかける。


 兵士の返答は。


「いえ。こちらはまだ誰一人として通っておりません」  


 無慈悲だった。


 まだだ。それならば、と。


光る石――。通称、通信石(ストーンフォン)を、ガーベルが床に転がす。


すると、マルティーズちゃんのいる南の門の光景が石から空中に投影(とうえい)される。


「マルティーズ、そっちはどうだ!?」


頼む。まだこの街にいてくれ。


それならまだ話し合えるはず。一緒に解決法を探せるはず。


金髪の黒魔道士の返答は、こうだった。


「………………かなり前に、ここを通ってったってさ」


暗い声音(こわね)。話しぶりから、マルティーズちゃんも兵士に話を聞いたのだろう。


 ガーベル君が嘆息(たんそく)と共に、振り返る。


 眉間(みけん)を左手でつまみながら。


「一旦、貸し部屋(レンタルルーム)へ戻ろう。仕切り直しだ」 

「……うん」 


 無念にも、リントを引き留める事が出来なかった。


 ……わたしのせいだ。わたしが昨日の夜に話を聞いておけば良かったんだ。


 どうしようもない後悔が、わたしを襲った。

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