↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/56

第二十二話 順調にして、香る未来

朝焼けが綺麗な、早朝。


閑静な住宅街に並んだ、一際(ひときわ)大きな一軒。ここの貸し部屋を出て、廊下を歩くリント。


勿論、わたしも腰についている。


冷え込んでいる空気と、この世がひっくり返るような壮大(そうだい)な眠気に気を失いかけていた。


「みんなを起こしに行かないとね。ユキは朝、苦手なタイプかな?」

「………………え?」

「はは。聞くまでもなかったか」


なんだかちょっとコケにされた気がするが、反抗する気力すらなかった。ZZZ。


「あ、おはようございます」


リントが誰かに挨拶した。


あぁ、ウェルさんか。


「おはようございます、リント様。本日も訓練でございますか? お疲れ様でございます」


可憐(かれん)な桃色の長髪、 柳(やなぎ)のようにスラリとした長身、細身。まとうメイド服は彼女の清楚(せいそ)さをこれでもかと引き立てていた。


ウェルという名前で、ここの物件の管理人さんだ。


彼女が両手を前に重ねて、お辞儀。そんな丁寧な仕草でリントに応じた。


「はい。今から二人を起こしに行きます」

「ふふっ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」


柔らかな微笑(びしょう)のウェル。


ひらひらと手を振りながら、通り過ぎて行った。


ふわりと、大人びた薔薇の香りを残して。


正直、どこかの一族の使用人だと言われても違和感ない。わたしが男の子だったら惚れてしまうかも。


「……」

「リント? どうしたの?」


なぜか恥ずかしそうに顔を背けるリント。


あーっ、もしかして。


「ふーん。好きなの? ウェルさんの事」

「いや……そういうのじゃ」

「じゃあなんだっていうのよ」

「うーん。理由は分からないけどなんかドキドキする、かな。目が離せないというか」


思春期の男の子かよ。いやそうなんだけど。


ちなみにわたしも――。


「わかる、かわよいよね」


同意見だ。


麗(うるわ)しい見た目、優しさの滲(にじ)み出る仕草、そして仕事ができてカッコイイ。完全無欠じゃないか。


『あ』


わたしとリントはハッとした。


ガーベル君とマルティーズちゃんを起こしに行かないと。


魔法にかけられたような不思議な感覚に、二人は奇妙さすら覚えたのだった。




○○○




訓練二日目。勇者パーティーは昨日と同じ、開けた森に訪れていた。


午前中はひたすら固有技術(オリジナルスキル)の特訓からだ。


眠い目を擦(こす)りながら。


得意を伸ばしたり、技を教えてもらったり、組み合わせてみたり。


とことん固有技術を強化した。


その結果。


「『固有技術(オリジナルスキル)・排出(ドロップ)!』」


鋼の大剣を道具袋から出した。


これはリントの武器や技を見て、袋の中でイメージしたものだ。


そう。わたしはより素早く、具体的にモノを出せるようになった。(まだそこまで大きな質量のモノは出せないが)


これでもしリントが戦闘中に武器を無くしても補充できるぞ。


……そして、今。わたしに向かって迫り来るのは。


巨大な火球と弓矢の雨。


更に、雷をまとった高速の剣閃(けんせん)。


「『固有技術(オリジナルスキル)・収納(セーブ)』!」


わたしは大きく、包み込むように袋を展開する。


「うぐぐう!」


ちょっと……いや、かなり痛い。腹パンを食らったみたいだ。


でも。リント、ガーベル君、マルティーズちゃんの猛攻(もうこう)を受け切る事が出来た。これなら防御面はかなり強いんじゃないか!?


「よしっ……!」

「いいね! ユキ、かなり強くなったんじゃない?」

「流石だな。これならすぐに方針を『万能型』に切り替えられるかもしれんぞ」

「ま、アタシのは全力じゃないけどねっ。次は灰になるのを覚悟なさい」


大きく成長できた。ここまで効率が良かったのは、みんなが培(つちか)ってきた経験値を貰ったからだ。


何度間違おうと、懇切丁寧(こんせつていねい)な指導。決して怒鳴ったりなどしなかった。


信じてくれた。


これが何より嬉しかった。だから頑張れたんだ。


比べるまでもないけど、あのバイト先の劣悪(れつあく)な環境とは大違いだな。


この後の午後の特訓、連携も上手くいった。


これなら、スフィンクスとやらに勝てる……!


『荷物持ち』と呼ばれていたわたしにも、やっと自信がついてきたのだった。


「みんな、ありがとう!」


わたしは満面の笑み(袋のしわ)で、感謝を伝える。


みんなは実に、照れくさそうにしていた。


異界魔導衆(ヴィジター)との、マグネティック鉱石とリントの妹チラの取引(とりひき)まで残り、六日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。