第二十一話 夜道にて、邂逅
アトスエンスの街、夜更け。
明かりはささやかな月光と、数少ない街灯だけ。
昼間は賑わっていた大通りも、すっかり静寂が訪れていた。
わたし、道具袋はというと。うきうき……だった。
みんなと頑張って訓練して。連携がとれて絆が深まって。めちゃくちゃお腹が減って。
さぁ、ご飯を食べよう! この世界には美味しいものがいっぱいだ!
そんな時。
「なんで寝ちゃったの、わたしの馬鹿ー!」
わたしはあろう事か、居眠りしてしまい。
リントの腰から滑り落ちてしまったようで。
しかも三人はまだ気づいていない。
わたしは疲労を感じる身体でピョンピョンと跳ねながら三人を探す。
夜風が寒い。しかも人通りもまばらなため、寂しさを感じずにはいられない。
「家かなぁ……。いや、ご飯食べに行く途中だったからそれは有り得ないよなぁ」
グー、とお腹が鳴る。
「くそ……お腹減ったなぁ。これ何回言ったかな」
限界だ。お腹が減りすぎてふらふらしてきた。
道具袋だというのに、なんでこういう所は人間らしいのだ。まぁ、これがあったらご飯はもっと美味しくなるし必要か。
空腹は最高のスパイス。
そんな事をかんがえていると。
「おや、落し物かな?」
誰かに優しく拾われた。
掬いあげるような、なんて丁寧な所作。
その人は、顔の隠れるタイプの黒い神父服を着ている。まぁどう見ても神父様だろうな。そして声の高さからして、穏やかな青年だろう。
てかヤバい! このままどこかへ持っていかれる! でも喋ったら捨てられるぞ……! 最悪、魔物かと思われて討伐されるかも!
一旦様子見をする事にしようと、して。
「わ、わたしは女神の遣い。仲間の元へ届けてください。お願いしまする」
この機会は逃せない! ここで神父様に届けてもらおう。口調が変になったが、まぁ大丈夫だろう。女神の遣いというのもあながち間違いじゃないし。
「………………」
マジか。
黙りこくっているぞ。超絶怪しまれてる。表情が分からないから余計に怖い。
「良いでしょう。これも何かの縁です」
よ、良かったー! いい人そうだ。
「どちらへ向かえばよろしいですかな?」
「とりあえず、大通りを真っ直ぐお願いします」
神父様の手の平に乗り、大通りを歩く。
「同志の方はどのような特徴で? 」
「あっ、ええと。一人は緑色の目、二人目は銀髪、三人目は金髪ポニーテールが特徴です」
「………………」
「えっと……はい」
中々、寡黙な神父様なんだな。分かるよ。初対面の人とお話するのって緊張するよね。
「一つ訊いても宜しいですか?」
「ひゃ、ひゃいっ」
思わず上ずった声が出る。突然話しかけられてビックリした。
「その三人との馴れ初めを知りたいな、と」
馴れ初め、か。出会った時の説明、難し過ぎないか?
「ええと……。一週間と少しほど前、ですかね。リント……あぁ、緑色の目の人です。その人の腰に、女神様から召喚されました」
「ほう」
「それで旅をするうちに少しづつ仲良くなった感じですね」
「成程。それはまた奇妙な運命ですね」
異世界転生の事は説明しなかった。言っても理解されなさそうだし。
……そういえば、神父様の声なんだけどさ。
なんだろう、どこかで聞いた事あるような声だな。
いつだっけな。つい、最近の。
誰だったっけな。
「不躾とは思いますが、もう一つ訊いても――」
「あっ、いました!」
目の前に飛び込んできた景色に感動を抑えきれず、神父様の言葉を遮ってしまう。
街灯の下に、慌てふためく三人が。
リント、ガーベル君、マルティーズちゃんだ。どうやら今気づいたタイミングらしい。
「あの人達です! ありがとうございます!」
神父様の手から飛び降りる。
あぁ、やっと見つけた。これで安心だ。
「では、これにて失礼させてもらうよ」
そそくさと 踵を返した神父様。
「待って! 最後に名前だけ教えてください! いつかお礼をしたいので!」
「フォルス神父です。お礼は既に貰っています。貴女にも、神のご加護を」
首から下げた十字架を見せて。
フォルス神父はその場を去ってしまった。闇の中へ溶けるように消えていく。
……貰ってる? どういう事だろう。まぁ、ただの遠慮だろうな。
フォルス神父。また会った時、ちゃんとお礼しないと。
さてと。
とりあえずお腹減ったからご飯食べにいこ!
「みんなー!」
わたしは仲間の元へ飛び跳ねていく。
三人の心配そうな顔が晴れていくのを見て、わたしはとっても嬉しかったりしたのでした。




