第十五話 洞窟攻略と新しい仲間に、乾杯!
無事にグラヴィダ洞窟を攻略した勇者パーティーの四人は、命からがら洞窟を脱出した。
今度は森で盗賊狼に出くわさないよう、安全な道を通る。
城壁に囲まれた街、アトスエンスへ。英雄補完協会が運営する魔法病院で傷を癒して。
そして一週間後。
月明かりが差す、夜更け。
閑静な住宅街に並んだ、一際大きな一軒。勇者パーティーは現在、ここの宿屋……ではなく。
空き部屋を様々な形として提供しているという、貸し部屋を拠点としている。
貸している部屋の中で、最も広い一室にて。
アンティーク調の小綺麗な部屋だ。バルーンアーチなど、お祝い事の飾り付けがされている。
少し豪華な長机に、料理がズラリ。
新鮮な魚の切り身を米に乗せたシーズという料理、濃厚な鶏だしスープに色とりどりの野菜と麺が入ったリーモンという料理など。
ケーキらしき料理、クイケがど真ん中に。
『仲間の加入とマグネティック鉱石の採掘成功を祝って、乾杯ー!』
カラン。それぞれのグラスが上品な音を鳴らす。
そう、勇者パーティーは無事に洞窟からマグネティック鉱石を採れた祝いとわたしのパーティー加入祝いで食卓を囲んでいた。
ユキが正式に仲間に加わった!
(ここで心地のよいBGM)
ちなみにこのBGMは頭の中で、セルフで流しています。
「あ、ありがとうございます!」
わたし、緑色の道具袋のユキは机の上で思わずかしこまってしまった。
「歓迎するよ。さぁ、好きなもの食べてね」
優しく言葉をかける黒髪の彼は、勇者リント。魔王討伐パーティーのリーダーだ。剣術は相当なものだが、道具袋の扱いはめっちゃ下手。サラダのようなものをシャリシャリと食べている。
「だが、どうやって食べるんだ? あと今、袋の中にしか鉱物しか入ってないんだろ? 問題だらけじゃねぇか」
銀髪の狩人、ガーベル君。クールな性格でありながら、情に厚い男の子。ラーメンのような食べ物を啜っている。
「いや、胃は別だから大丈夫だよ。食べ方は……ちょっと行儀悪いけど吸い込みかな」
そう。あの飲み込んだゴーレムはなんと。
分解されて岩石と鉱石になってしまった。自分の身体だから分かる。
どうやらこの中に生物は入れられない? のかも。
さて、わたしは早速、シーズという寿司に似た食べ物をを吸い込んだ。
「うっ、超美味い! 」
思わず声が出た。めちゃくちゃ寿司っぽいけどちょっと違う!なんか、濃い味っていうか! ソースみたいな成分がうまく絡んでる!
「へー、吸い込んで食べるんだ。洞窟での固有技術といい、面白い構造してるわね。入れた覚えが無いのも入ってたし。後で中身見てみたいわ」
光る、長い金髪を結わえたじしょう女黒魔道士、マルティーズちゃん。得意魔法は火属性。その炎は全てを焼き焦がす。
パスタのような食べ物をクルクル巻きながらそう言った。
そう。わたしも気づいている。
なぜかわたしは明らかに袋の中に無いモノを出せるようになっていた。
グラヴィダ洞窟では、サイズすら合わない鉄の盾とか出せた。なんでかは知らん。
「ま、後で俺の固有技術を使って分析するからな。早速予定を――」
「あっ! これも美味しそうー!」
ガーベル君を無視して、別の料理を吸い込むわたし。
おっ!? これは食べた事のないような料理!表面は餅みたいに柔らかいけど、中は煎餅みたいにカリカリの新食感!
「おい……聞いてるのか」
「まぁまぁ。折角だからそういうのはもう少し後でいいんじゃないかな、ガーベル。休むのも大事だよ」
「まぁ、確かにそうだな」
「ガべってそういうとこがポンコツよね。ザ・仕事人っていうか」
「お前はゲームばっかやってる遊び人だろ」
「カッチーン!」
キレた効果音を自分で発音するマルティーズちゃん。椅子から立ち上がって。
「いいわ。じゃあ、どのくらい食べれるか皿の数で勝負よ!」
「なんでそうなる」
「負けた方が、名前の前に『ポンコツ』をつけなさい。良いわね?」
「ふっ。いいぞ」
「鼻で笑うなぁーっ!」
凄まじいスピードで机の上から料理が消えていく。
「アハハ。みんな、出来ればゆっくり食べてね」
「じゃあそろそろわたし、ケーキっぽいのいただきます!」
そうしてわたしはケーキのような料理に頭から突っ込んでいった。幸せの塊を、食い進めていく。あまーい!
○○○
大方、食べ終わった。片付けに入る前に予定を立てる。
「わたし、自分について調べたいです」
わたしはそう提案した。
リントによるとわたしはこの街の道具屋で買われたらしいが、特に値段も変わったものでなかったという。
この道具袋は謎そのものだ。どこから来て、どんな能力を持っているのか。
女神が一切説明しなかったせいで手探り状態である。
「うん、分かった。明日の昼間に色々資料を見に行こうか」
リントは頷き、予定表らしきメモ帳にメモをした。
「じゃあ午後は全員で訓練所に集まってくれ。ユキの分析だけでなく、次の戦闘に備えてフォーメーションを組んでおきたいからな……うぷ」
ポンコツガーベル君が余裕のない表情で言う。
「午後までに調子が戻ったらじゃない? ポンコツガーベル。ぷふっ」
腹を抱えて笑う、マルティーズ。彼女は余裕の表情。意外にも、彼女が一番食事量が多いようだ。そのわりには、元のわたしより……いや、これは言うまい。
「覚えてろよ。訓練じゃ容赦しないからな」
「あら。勝てるかしら? そのお腹で。ぷふーっ!」
「この野郎」
「まぁまぁ」
二人をたしなめたリント。
そしてメモ用紙をしまう。
「じゃ、手を合わせて」
みんなで、手を合わせて。
食材と作ってくれたここの料理人さんに感謝を込めて。
『ごちそうさまでした!』




