第十二話 勇者パーティーVS錬金土人形・王(ラストゴーレム)2
勇者パーティー(狩人と黒魔導士)と錬金土人形・王の睨み合い。
互いの実力を知り、牽制しあう。
先に動いたのは――。
「ガアアアアアッ!」
錬金土人形・王だ。傷を負ったガーベルから仕留めるべく、巨大な腕を振り下ろす。
「まぁ、そう来るだろうなと思っていた。だから」
ガーベルは、衣服の中から長いワイヤーフックを取り出して。
「いったん距離をとらせてもらう」
投擲。
洞窟の岩壁に引っ掛け、そのまま弧を描くようにして空中を移動。
拳を回避しながら高台の岩場に着地。
更に続けて、弓を番える。
「卑怯と……思うなよっ!」
そして矢を撃ち放った。岩肌にわずかながらも傷をつける。
追撃と言わんばかりに、マルティーズが漆黒の杖を構える。
「『固有技術・火球三連』!」
火球を発射。被弾した岩石の魔物はよろめいている。
(これならいける! 魔力を小出しにして魔法を打てば、隙を突いてでかいのを一発喰らわせられるわ! それの繰り返し!)
マルティーズの確信。
確かに彼女の黒魔導士としての素質は天才的なものだ。事実、魔力のコントロールは絶妙。
魔力の自然回復。その八割を小さく凝縮した火球として敵の足止め、二割を決定打を喰らわせるための魔力として温存している。
だがやはり圧倒的に足りないものは。
経験値、だ。
「ゴオオオッ」
錬金土人形・王が、かがむ。
(魔法が想像以上効いたのか……? それならばもっと態勢を崩しているはず。だからあれは違う!)
戦闘経験豊富なガーベルが異変に素早く気付いた。大きく息を吸い込んで。
「マルティーズ! 一旦下がれ!」
声を張り上げて仲間に指示を出した。
だが彼女は自信をもって後退しない。
「はぁ!? どっからどう見ても大チャンスでしょ――きゃっ!」
突如として、激しく振動する洞窟内。
マルティーズが立っていられず、尻餅をつく。
「痛ったた……なんなのよ全く……って、は?」
見上げると、そこには。
錬金土人形・王が構えていた。
剛力をもってして地面からくり抜いた大岩を掲げて。
「グオオオオオッ!」
「っ――」
彼女はその魔物の行動の意図に気づいたが、もう遅い。
魔法では防ぐことのできない、守りと攻撃を兼ね備えた大岩が飛来する。
回避も不可能だ。
だが、恐怖はなかった。
「……悔しいわね」
去来する感情は悔しさ。自分の力だけではここが限界であるという事実に対して。
マルティーズも人間だ。生をおびやかす暗闇が迫れば怖いと思うだろう。
ではなぜそう思わないか。その答えは、彼女の視線にしか映らない彼だ。
「はぁっ!」
雷光一閃。
翡翠色の眼差しを真っ直ぐに、が迫りくる大岩を一刀両断。
そう、勇者と道具袋が間に合ったのだ。
「ごめん、待たせた!」
「二人とも大丈夫!? 『固有技術・排出』!」
わたしがいくつかの医療キットを放出。ちょっと出しすぎたかな。
てかクッキーと紅茶まみれじゃなくて良かった。どうやら胃は別みたいだ。まさに別腹。
「やれやれ、やっとか。遅いんじゃねぇのか? 全く」
苦笑し、肩をすくめてみせたガーベル。
マルティーズは肩を震わせている。やっぱり怖かったのかな。
「……マルティーズ? どうし――」
「ギリギリよ、このバカ!」
「痛ァ!?」
リントは、マルティーズの本気平手打ちを喰らった。かなり怒っているらしい。これも固有技術かな?
「ともあれ、だよ」
リントが、咳払いして巨大な敵を見据える。
「みんな! ここから反撃の狼煙を上げよう!」
「うん!」
「ああ」
「もちろんよ!」
勇者の鼓舞により、重なる声。ここからが勇者パーティーの本領発揮だ。
全ては妹を救うために。マグネティック鉱石を手に入れるために。
命を賭けて、戦う。




