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翌日、どうしてもアクオスに伝えたいことがあったヘーゼルは、今回は事前にきちんと連絡を入れ、話を聞いてもらう時間を作った。
ところが、アクオスは急な魔物討伐に駆り出されてしまい、結局彼の執務室で待つことになった。
「ヘーゼルさん、お茶のお代わりはいかがですか?」
「カルビン様お気遣いなく……。どうぞお仕事をなさってください」
ヘーゼルは申し訳なさそうに首を振る。
「とんでもない。団長から『きちんともてなして待っていてもらえ』と仰せつかってますから」
にこやかにそう言いながら、カルビンは慣れた手つきで茶器を整えていく。
そもそも彼は伯爵家のご子息だ。子爵令嬢のヘーゼルとしては、それだけでどうにも肩身が狭い。
「そういえば……先日、ビギンズさんの所に行かれたそうですね?」
「ええ……その……ビギンズさんには本当に感謝しかありません……」
「竜騎士団に役立つものだと聞きましたよ。僕たちにできることがあれば、何でも協力しますから!」
カルビンの明るい笑顔に、ヘーゼルは思わず胸をなで下ろす。
「……そう言っていただけると心強いです……研究をしているのは私ではないのですが……出来上がれば、きっと皆さまのお役に立てることだと思います……」
少し困ったように答えるヘーゼルを見て、カルビンはすぐに別の話題を差し出した。
「……あ!そうだ。この間いただいた飲み薬ですが……粉薬よりも体に合ったみたいで、持病の咳がかなり減ったんです。ヘーゼルさんには本当に感謝しています」
「まあ……!本当に?それはよかったです!」
あの種のことは、まだ口にできない。
だからカルビンがさりげなく話題を変えてくれたことが有難く、ヘーゼルの表情もふっと和らぐ。
以前から思っていたが、カルビンは人の表情から状況を察するのが本当にうまいのだろう。
「お味は大丈夫でしたか?」
話が変わったことにほっとしつつ、つい薬師として気になって尋ねると、カルビンは頷いた。
「ええ、全く問題ありません。むしろ飲みやすかったくらいです。ただ……欲を言えば、持ち歩きやすい形だともっと助かりますね。遠征のときなど、どうしても荷物がかさばるので」
「なるほど……確かに騎士の皆さまは出先で使うことが多いですものね。錠剤や粉末にできれば便利ですが……効能が変わらないか、もう少し試してみます」
「えっ?一人の感想なのに、そこまでしていただけるのですか?……」
「もちろんです。薬師は、可能性を探るのも仕事ですから」
「はは、言ってみるものですね」
「ふふっ。でも、必ずできるとは限りませんから……あまり期待せずお待ちください」
「いやいや、期待はしちゃいますよ~……」
二人で笑い合った、まさにその時、
「……カルビン、随分楽しそうだな」
低い声とともに扉が開いた。帰ってきたアクオスの表情は、どこか不機嫌そうだった。
「え?あれ?……ええと……そうですね……」
カルビンはアクオスの顔を見て、すぐに空気を察した。
「……では、ヘーゼル嬢。団長もお戻りになったことですし、僕はこれで失礼します」
軽く会釈をして、カルビンはさっと部屋を出ていった。




