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pt.4 帰ってきた女たらし -Ephebophilia- ②

 結局、人目を避けて何かができる場所といえば、もはや定番になりつつある例の建物の中――。


「さっさと済まそう。横になった方が良いなら寝てくれ」


 淡々と治療の準備を始めるレミケイドを眺めながら、セリはその場に腰をおろして答える。


「別に、そこまでしなくてもいいけど」


 レミケイドがそうか、と呟くと同時にY字の鎖が飛び出し、セリの体を拘束した。


「ちょ……っ、ねえ! 前もそうだったけど私、無抵抗でしょ!? なんで毎回これ!?」


 鎖でがんじがらめにされ、文句を言うセリに、レミケイドが顔も見ずに答える。


「ディマーズの『毒保有者捕縛におけるガイドライン』の記載事項だ。『有毒者治療の際はいかなる場合においても拘束の(のち)、治療行為を開始するべし』

 ――治療中に突然抵抗を始めるケースも多いからな」


 説明がしながら尖った小さな杖をセリの腕に突き刺す。これから2時間近くこのままだ。


「それよりここは何をする場所だ? まだ完成していないようだが」


 レミケイドの問いかけに、セリは以前手紙で伝えた借金の原因になった投資施設だと説明した。

 説明をしていて気づいたが、今日は工事の音がしない。工事がお休みの日なのだろうか。


「借金ばかりだな君は。いつまでに片がつく予定なんだ?」


「ボルターは20年くらいで返せるって言ってるんだけど」


 言いながらセリはかろうじて動く指先で、一度だけ見た借金の総額を宙に書いてみせた。


「…………正気の沙汰じゃない」


 レミケイドがわずかに眉を寄せた。レミケイドもちゃんと表情が変化するのかという驚きと、レミケイドの表情すら動かすほどの金額なのかという不安がセリの心を占める。


「え? そんなヤバい数字なの? もしかして一生かかっても返しきれなかったりする?」


 不安そうに尋ねるセリへ、レミケイドは考え込むような表情をしながら呟く。


「話には聞いていたが、予想以上にひどい男だな。君みたいな少女をだまして負債を負わせるなど、(クズ)の所業だ」


「え? ちょっと待ってよ、そこまで言わなくたっていいじゃん。

 ボルターはたしかに変態だし強引だし頭おかしいけど(クズ)は言い過ぎだよ。あれはあれでそれなりにいいところもあって……」


「…………ボスといい、そこで何故擁護(ようご)の言葉が出てくるか理解できない」


 面白くなさそうな声でレミケイドが呟く。

 思いがけず、メトトレイとボルターの現在の関係性を知る糸口が現れ、セリはレキサの頼まれごとを思い出した。


「ねえ、メティさんって、まだボルターのこと好きだったりするのかな?

 一緒に仕事しててメティさんがボルターの話ってすることあるの? 二人がまた一緒に暮らすことってありそうな感じ?」


 レミケイドは冷たい視線をセリに合わせかけ、しかし、すぐに杖を刺している腕へと視線を落とす。


「ボスはもう……二度と家庭を持つ気はないと言った。

 ディマーズというギルドに誇りを持ち、恥じない生き方をすると言った。余計なことを考えていては自分の命を落とすか、毒に飲まれる。ディマーズはそういうギルドだ。そして彼女はそのギルドのマスターだ」


 自分自身に言い聞かせるかのようなレミケイドの言葉に、セリは根本的な疑問が浮かんだ。


「ディマーズに入ったら結婚しちゃいけないの? メティさんはしちゃいけないことをしたの?」


「いや、ギルド規定に婚姻を認めないといった記載はない。ただ恋愛感情は一歩間違えば毒につけ込まれる負の感情だ。

 その感情を制御できないのであればギルドを退会するか、その感情を葬るべきだと、おれは――いや、自分は思う」


 ようやくレミケイドがセリに視線を合わせた。


「ああ、君はあの男に惚れてるんだったな。ボスとの復縁の可能性が否定できて満足か?

 それよりまさかと思うが、借金でディマーズ入りが遠のいて安心していないだろうな? 問題を先送りにしたところで何の解決にもならないどころか最悪の事態を招きかねないぞ」


「ちょっと!! 勘違いしないで! 私は別にボルターのことが好きとかそう言うんじゃないんだってば!! アイツはおまけなの!! レキサとロフェと、あとナックっていうふわふわの子がいるんだけど、みんな含めた家族が好きなの! 私もそこの一員になりたいの!! そういう気持ちなの!!」


 険悪になりかけた雰囲気を壊したのは、どこまでも能天気で陽気な声だった。


「ヘイヘイヘーイ♪ ご両人、痴話げんかですかーい?」


「わ! ちょっとセリ! その人、カレピッピ!? イケメンじゃん! どうやってゲットしたの?」


「て・て・てゆーか! なにその鎖。なんかイケナイ香りがする~!」


「あ、オレ知ってる! 拘束プレイってヤツだよね!」


「ねえねえねえ、今度それやって! ああーん! もっと強く縛って~んって言いたい♡」


 瞬く間に部屋が小人であふれかえり、レミケイドが状況に追いつけず、目を見張っている。

 セリの方はもう小人のバックアタックは日常茶飯事なので、いまさら驚きもしない。しかし、今日の小人の数は通常よりかなり多めだ。


「はいはい、騒がないの! さすがにそろそろ誘拐された子がいるんじゃないの? ほら、点呼とりなさーい! いい加減にしないとホントに身ぐるみはがされるからね!」


 セリの苦言に、ピクシーはしかし、不敵な笑みを浮かべた。


「ふっふーん! 実は直通コースができたのでございまーす!!」


「ノームのじいちゃんが森からここまでの近道を掘ってくれたんだ! おかげでもう人間に見つからずにいつでもここに遊びに来れるよ!」


 ピクシーたちが示したのは、先日ノームたちに掘られてしまった床の大穴だ。

 現在は床扉にボルターの書いた『危険! 関係者以外立ち入り禁止! 入るな! 入ったら即・死あるのみ!』と、やたらくどい警告の紙が貼られている。


 ――ボルターのやつ、あんなに毎日探索してたくせに気づかなかったっていうの!? あのヘボ炭鉱夫め!!


「もう!! ちょっと! なに勝手なことをしてくれてんのよ!」


 セリは自分でも誰に対して怒りを向けていいか分からず、とりあえず手近なピクシーにキレた。


「おれらに怒んなよセリ。掘ったのノームのじいちゃんだし」


「そんなことより大口の客紹介してやった俺たちにお礼はないのかよ」


「……大口の客?」


 ちょうだいのポーズで、当然のように何かをもらおうとする様子のピクシーに、セリは訝しい視線を向けた。迷惑料をもらうならまだしも、お礼を催促されるような覚えはない。


「ノームの爺さんたちの作る金属や宝石の細工は人間たちにすっげえ高値で売れるんだぜ? いくつかおねだりして作らせたら一生遊んで暮らせる金が手に入るってのに。

 ――げ。まさかセリ、何もねだらなかったのかよ……嘘だろ?」


 恐ろしいものでも見るかのような表情でピクシーがセリを見た。


「そんなこと知らないもん! どうしよう! 畑耕してもらっただけで帰しちゃった!!」


「わー馬鹿でー。じいさんの暇つぶしにもならねえこと頼んじゃったよ」


「借金が~とかローンが~ってセリが言うから紹介してあげたのにー」


「セリって結構世間知らずだよね」


「うわーん、ごめーん! っていうかそれ先に言ってよー!」


 半泣きになっているセリに、ようやく事態を理解し始めたレミケイドが遠慮がちに声をかける。


「まさか、ピクシーなのか? こんなに大量の? 君は友好関係にあるのか?」


 ピクシーたちが一斉にレミケイドへ興味を示す。


「お、兄さんピクシー初めて? かわいい娘そろってますよ~」

「え~、お兄さんピクシーの女の子ってどうですか~? 異種族恋愛ってどう思います~?」


「……レミケイド気をつけて。一緒に踊ろうって言われても踊っちゃダメだよ」


「あー! セリの馬鹿! 言っちゃダメだよー!」



***



 長かった2時間の治療は、散々ピクシーたちに絡まれ、邪魔されながらも無事に終えることができた。レミケイドは杖を分解して腰袋(ポーチ)の中へ収納すると、好き勝手なことをしているピクシーたちへ声をかけた。


「彼女が君たちに礼をまだしていないようだな。礼にはパンとミルクだというのを聞いたことがあるがそれでいいのか」


 レミケイドの問いかけに、ピクシーたちが顔を輝かせた。


「お! ちゃんとわかってるね、お兄さん。ポイント高いよ!」


「どうする? リクエストして良さそうだよ?」


「マジでマジで? じゃあオレ、前に言ってたあれ食べたい」


「あ、あたしもあたしも!」


「じゃあ、せーの! 高台のパン屋の『ローストビーフとトロトロ卵のバケットサンド』!!」


 この土地にまったく馴染みのないレミケイドが、セリに知っているかという表情で視線を向ける。

 セリは口をへの字に曲げ、レミケイドではなくピクシーたちに向かって怒鳴った。


「知ってるも何も、この町で一番高いパン屋の一番高い商品じゃない!

 くっそぉ、私だって一回くらい食べてみたいのに!!!

 あんたたちなんでそんなこと知ってるのよ! 食パンで我慢しなさい!!」


 興奮するセリをレミケイドが冷静かつ速やかになだめる。


「待て。ピクシーへの礼は間違うと危険だ。君の分も買ってやるからその店に案内してくれ」


「うそ!? レミケイド、優しい……」


 若干涙目になりながら、セリは神々しいものでも見るかのような視線でレミケイドを見つめる。


 レミケイドは、大げさだなとぼやきながらも、 


「珍しい種族を間近で見れた。貴重な経験だった。それに対する礼だ」

 と言って目を細めた。


 ――え? 今のって、もしかして笑った……?


 ほんの一瞬だったので、もしかしたら何かの錯覚だったのかもしれないし、そもそもレミケイドが微笑む生き物である可能性は非常に低いこともあり、とりあえずセリはレミケイドの機嫌は良さそうだと思うことにした。


 ピクシーたちにはくれぐれも外に出ないように厳重に注意して、セリとレミケイドは二人で町の高台にある富裕層向けの区画へと向かう。


 物珍しそうにあたりを観察しながら、レミケイドが独り言のようにつぶやいた。


「この町には初めて立ち寄ったが、不思議なところだな。

 人間の悪意や毒の気配がほとんどしない。

 普通これだけの人間がいれば少なからず気配はあって当然なはずなのにも関わらずだ。

 自分が不感症にでもなったのではと、逆に落ち着かないな」


 落ち着かないと言う割に、セリが見る限り表情は冷静そのものにしか見えない。

 やっぱりさっき笑ったように見えたのも、光の加減で起きた奇跡の錯覚ショーだったのだろう。


「君も、治療を中断していたにもかかわらず毒気がほとんどない。

 むしろ前に会った時よりも幼く見える。今の君ならディマーズの仲間たちと鉢合わせしても、誰も君を『毒持ち』だとは気づかないだろうな。

 君がこの環境から離れたがらないのも、分からなくはない気がしてきた。

 ……自分が住むことは考えられないが、いい町だな」


 レミケイドの言葉に、セリは自分が誉められたみたいな誇らしい気持ちになるのを感じた。

 それはくすぐったいような、温かいような、不思議な感覚だった。


 目的のパン屋に到着したセリは、まずパンの焼けるいい匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。


 パンは好きなのだが、家族分の主食を毎日パンで(まかな)おうとすると経済的に厳しいため、最近めっきり食べていない。ちなみにセリの作る料理の主食はほぼ雑穀ミックス(特売日に入手)である。キャラバン時代に散々お世話になった主食なのでレパートリーには事欠かない。


「パンで思い出した。レッドという少年のことだが」


 レミケイドの言葉に、バケットサンドへ伸ばしたセリの手が、ギクッと動きを止めた。


 レッドは、セリとロフェがリリーパスのごろつきたちに監禁された時に一緒に捕まってしまった浮浪児で、セリたちをかばって重症を負ってしまったのだ。

 ごろつきを一掃し、戻ってきたセリの姿を目にしたレッドの怯えた瞳が、鮮明にセリの頭の中でよみがえった。


「今は南大通りでパン屋の修行をしている」

「え?」


「君にスリが向いていないと言われて真面目に働く気になったそうだ。君に自分の作ったパンを食べてもらいたいと言っていた」

「うそ……、私のこと怖がってなかった?」


「君がディマーズに入る予定があると伝えたら、とても喜んでいた。

 ディマーズの業務は犯罪者の除去や粛清(しゅくせい)だけではない。更正も業務のひとつだ。

 悪しき芽を刈り取るだけではなく、良い種は増やす。それがディマーズの仕事だ。

 やはり君は適性があるようだ。早く手伝ってほしいものだな」


 必要としてくれるのは嬉しい。だけど――。


 ――悪しき芽は刈り取る。


 その言葉は、自分の中にいる『(ナナクサ)を消す』と言われているようで、強い拒絶感が起きてしまう。

 自分の命を救ってくれたナナクサを忘れたくないというのは、考えが甘いのだろうか。


 ナナクサとの思い出が消えた自分には何も残らないのではないか、それが怖いと言ったら呆れられてしまうだろうか。それこそ正に毒に寄生された人間の思考そのものだと怒られるだろうか。


 レミケイドは浮かない顔のセリを見て嘆息すると、店員に棚に陳列されたバケットサンドをすべて買おうと声をかけた。


「わーーーーー!!! ちょっと買い過ぎだって!! 高いよ!? 絶対高いよ!? 破産しちゃうよ!? 私みたいに借金地獄に落ちちゃうよ!!」


 他の客に睨まれていることにも気づかず、セリは悲鳴をあげてレミケイドの袖を引っ張った。


「仕事に追われて金を使う暇がない。たまには散財でもして気分転換させてくれ」


「なにその金持ちアピール!! 嫌味? 嫌がらせ? 貧乏な私への当てつけ!?」


 取り乱すセリとまったく動じていないレミケイドが大量のパンを買って店の外に出ると、レミケイドが腰袋(ポーチ)から小瓶を取り出しセリへ渡した。


「ボスからの薬だ。飲み方が複雑だが、間違えるなよ。飲み過ぎれば君の体が衰弱するし、飲まずにいれば君に今日施した治療が十分に機能しなくなる」


 セリは瓶に書かれている、メトトレイが書いたと思われる指示内容を読む。


「1日目は1日2回、2日目は1日1回、そのあと休薬……? 絶対間違えそうなんだけど」


「また一月後に様子を見に来る。ボスに毒の兆候はなしだと報告して欲しければちゃんと飲むことだ。分かったな」


 納得しきっていないセリを無視して、レミケイドは一方的に用件を伝えると、町の出口の方へ歩き始める。


「分かったけど。……え? レミケイドもしかしてもう帰るの? パン、渡しに行かないの?」


「君から渡しておいてくれ。

 来たときにも言ったが仕事が立て込んでいるんだ。うちの街で一番凶悪で厄介だった大きな組織が()()壊滅をしたせいで、その陰に隠れていた小者(ザコ)たちが調子に乗って騒ぎ始めていてな。大した奴らではないんだが、それなりに数が多くて制圧に人手が必要なんだ」


 その組織を壊滅させたのはセリである。


「……なんか、ごめんなさい」

 パンの籠を抱えたままセリはいたたまれずに頭を下げる。


「悪いと思うなら早くこっちに来てもらいたいものだ。君なら即戦力だと期待はしているのだが」


 責められているのか褒められているのか判断がつかずに、レミケイドの表情を探るが、まだまだセリのレベルではレミケイドの不動の表情筋から感情を読み解くことができない。

 仕方なく、素直に思ったことを口にした。


「レミケイドって意地悪なんだか優しいんだかよく分かんない人だね」


 レミケイドは黙ったままじっとセリを見つめた。

 失礼な奴だと思われたかな、とセリが言い直そうとするより先にレミケイドが口を開いた。


「そうか、貴重な評価だ。参考にさせてもらう」


 今度こそセリは分かった。

 目を細めただけでなく、わずかに口角が上がっている。

 レミケイドはちゃんと笑う生き物だったのだ。


***


 無事にピクシーたちへバケットサンドを配り終え、ピクシーたちが苦手で残したハーブ入りのバケットサンドはセリが家に持ち帰ることになった。


 これでお昼ご飯を作らなくてもいい。セリは得した気持ちで家の玄関を開けた。


「お帰りなさい、セリ姉。あのおじ――インディさん、用があるからってすぐに帰っちゃった。

 たぶんお父さんのところに行ったんだと思うよ」


 レキサがセリへ報告している間、ロフェはまだインディが持ってきたお菓子を食べている。

 そしていつの間にか帰ってきたナック――洗ってもいないのに白くなっているところを見ると森の中で他のナックと交代してきたようだ――がいた。


「もしかしてお菓子でお腹いっぱい? お昼ごはんいらない?」


「ろふぇはもういらない。このあとなっくとどろんこあしょびするの! なっくいこー!」


 お菓子をすべて平らげると、ロフェは口の周りをお菓子だらけにしたまま裏庭に走っていく。

 セリはロフェとナックの後ろ姿を、標的を狙う暗殺者の目で見つめた。


 ――次こそ絶対にお風呂でピッカピカに洗ってやる。絶対に逃がさないんだから……!


「僕食べるよ。セリ姉、それお昼ご飯? ねえ、そのパンもしかして」


 レキサがなんとなくそわそわした顔で聞いてくる。きっとレキサも気づいているのだろう。

 セリはわざと内緒話をするように小声でレキサに耳打ちした。


「これ、あのパン屋さんのパンなんだよ! 高級ランチだよ! すごくない? すごくない?」


「やったねセリ姉! パンなんて食べるの久しぶりだね! すごい嬉しい!! 早く食べようよ!」


 二人で小声ではしゃぎながら高級食材ゲットの喜びをかみしめる。

 せっかくなので、即席スープも作ってしまう。捨てずに取っておいたニンジンのヘタから伸びてきた葉っぱを入れたスープだ。馬鹿にするなかれ。ニンジンの葉っぱはレースのような見た目なので、スープに浮かべるとおしゃれなのである。


 二人でさっそく食事を始めると、レキサが言いづらそうに口を開いた。


「セリ姉、あのね。あの人……インディさんがね、今夜セリ姉を食事に誘いたいんだって」


 ごぶっっ!!!


 セリは盛大にスープを吹き出した。


「ごめん、レキサごめん。行儀悪くてゴメン」

「ごめんセリ姉、僕こそゴメン、タイミング悪くてごめん」


 二人で汚したテーブルをきれいにふき取りつつお互いに謝る。


 食事って二人で? それ絶対レミケイドのこととか聞き出す気満々ってことでしょ? どうしよう、いっそのこと家に来てもらってみんなで食事っていうのは? ああ、でもそれって一歩間違えば毒のことがみんなにバレちゃうし。インディさん鋭いし、なんか心の中とか読みそうな感じするし、気がつくと私の警戒センサー切ってたりするから、やだなあ、怖いなあ。


 でもさっきせっかく来てくれたのに失礼なことしちゃったし。あ、そっか。だから私が断りづらくなってるの分かってて誘ってるのか。あれ? なんか前もそのパターンだった気がする。やっぱやだなあ、怖いなあ。


「セリ姉、あの人のこと嫌いなら行かなければいいよ」


 悶々と悩み始めたセリへ、レキサが珍しく少し怒ったような口調で言った。

 はっきりと第三者から口にされると、セリは少し頭の中がクリアになるのを感じた。


「あ、うん。嫌いとかじゃないよ。緊張はするけどね」


 何故緊張するんだろうと考えると、自分のペースを乱されるからだという回答に導かれる。


 全然敵わない。敵う気がしない。

 だけど、敵わないからって逃げてちゃ強くなれない。

 というか逃げたらそれ以上に恐ろしいお仕置きがいつも自分を待っていた。


 兄弟子スズシロの厳しい教えの元に育ったセリなので、負けたまま終われなかった。


 つまり、リベンジデートである。

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