pt.6 こんにちは、あかちゃん -Water rupture-
青く澄み渡る空が美しい冬晴れの午後、セリたちはいつものように八百屋で買い物をしていた。
すっかりお腹の大きくなった八百屋の奥さんが、セリに採れたての野菜と、それを使ったおすすめレシピを教えてくれる。
「もう少ししたらボルターさんのところで安産の気合いをいれてもらわなくちゃね」
お腹が重たいのか、動作の合間に大きく息をつきながら八百屋の奥さんが嬉しそうに笑う。
……ああ、あの斧とあの気合いね。
セリは微妙な笑顔を奥さんへと返した。
ボルターが子授け斧を使った時の怪しげな呪文は聞いたことがあったが、あんまり聞いていて気持ちの良いものではなかった。
安産の方はもう少しマトモなのだろうか。
「じゃあ今日は赤カブと芽キャベツをください」
いつものように買い物を終え、セリが子供たちを連れて帰ろうとした時だった。
ばしゃっと、どこかで水がこぼれたような音がした。
最初に音の正体に気がついたのはロフェだ。
「えー? おばしゃん、おもらししちゃったの?」
ロフェの声で奥さんの方を見ると、蒼白な顔で立ち尽くしている。
どうやら、ただ事ではない。
「だ、大丈夫ですか?」
「お前!! 大丈夫か!?」
セリと八百屋のご主人が同時に駆け寄る。
「どうしよう、赤ちゃんが……っ、赤ちゃんが!」
「産まれるのか!?」
「わかんない! おばあちゃんはまだだって……! レッくんの時はこんなふうにならなかったから、わかんないよお!」
奥さんは取り乱して半泣きだ。息子のレチーノくんも両親の動揺につられて泣きそうな顔になっていた。
「セリ姉。産所にいるジーノばあちゃんを呼んだ方がいいと思う。
噴水のあるところから坂を登った先に看板があるから。ちょっと変わった草がまわりにいっぱい生えてるから目立つしすぐわかると思う」
全員が混乱しているなかで、レキサの声だけが冷静に響く。
セリは力強くレキサにうなづくと、八百屋から風のごとく飛び出した。
尋常ではない猛ダッシュで走るセリを、町の人たちが驚いて避けてくれたお陰で産所へはすぐについた。
「ジーノさんいますか!? 八百屋のおばさんが!!」
セリが産所に飛び込むと、小柄でしわくちゃな老婆が一人でお茶をすすっていた。
「ジーノさんですか!? お願い早く来て! おばさんが大変なの!」
「あー? お前さん、まだ腹も出ておらんようだが、子種でも入ったんかね?
ああ、ボルちゃんとこの鬼ごっこ娘かい。ボルちゃんの子なら安産だから心配いらんよ。ほっといてもスルスルぽこぽこ出てくるじゃろうて、ひっひっひ」
いろいろツッコミたい部分はたくさんあったが、セリはズカズカ上がり込むとおばあちゃんの耳の横で大音量で叫んだ。
「私じゃなくてー!! 八百屋のー! おばさんがー! よくわかんないけど水みたいなのがばしゃっと出てー! なんかー大変なのー!!」
「――なんだい!? 破水かい!?」
おばあちゃんの顔つきがガラリと変わる。
「そういう大事なことを何で早く言わんのじゃこのポンツクが!! はよ連れてかんかい!!」
「だからー!! 最初からそう言ってるのにー!!」
「もたもたすんじゃないよ!! 置いてくよ!!」
おそらくジーノで間違いないであろうおばあちゃんはそう言い残し、セリを置いていくほどの超スピードで町を駆け抜けた。
そして八百屋へと到着するとすぐにご主人へ一喝した。
「……っこのポンツクが!! まだこんなところで油売ってたんかいっ!!
こんなところで産んじまったら自分の赤ん坊とキャベツを取り間違えちまうよ!!
もたもたすんじゃないよ!! さっさとカミさん担がんかこのポンツク!!
どこに連れてくかだって? そんなもん、お前さん家に決まっとろーが!! よそさん家でカミさん御開帳して赤ん坊をお披露目する気かい、このポンツク!!」
セリが息を切らせて八百屋に戻ってきたときには、ジーノは血管が切れそうなくらい青筋を立てて怒鳴り散らしていた。
「家に運んだらすぐに湯も沸かしときな! こんな寒い日に産まれるんだ! あったかい産湯の準備が大事だよ!! 今日中に取り上げるからね!!」
ジーノの言葉にセリが真っ先に反応する。
「お湯? どれくらい? もしたくさん使うなら私、先に井戸の水汲んで準備しておきます」
すぐさま踵を返そうとするセリにジーノが声をかけた。
「おや、お前さん元気そうだね。じゃあ水を汲んだら産所に戻ってお産椅子を一脚持ってきておくれ。それと産所の薬棚からルブスとプレギウムって薬草を一束ずつ……ああ、どうせなら、その隣に小瓶に入ったピンク色の液体があるからそれも持ってきておくれ。覚えたかい?」
セリは復唱し、ジーノのOKサインをもらうと自宅の瓶を取りに再び全力ダッシュを開始した。
家から瓶を背負い、井戸まで走っているセリの頭の中に、幸せそうに微笑む女性の姿が浮かんだ。
――女性の手が伸び、自分の頭を優しくなでる。
(ねえオルレア……とっても素敵なお話があるのよ。聞きたい?)
優しい穏やかな声の主は、自分の母なのだとセリは直感した。
以前ガランタの泉で聞いたときの声とは違う、低くて、温かい柔らかな声――。
自分がオルレアと呼ばれていた頃の記憶は、セリにはない。
本当の名前なのに『オルレア』にはどこか別人の名前のような響きがある。
でも、なぜ急にこのタイミングで母の声が浮かぶのだろう。
不思議に思ったが、今は感傷に浸っている場合ではない。
セリはかじかむ手で力いっぱい井戸から水を汲むと、瓶を背負い、こぼさないように注意しながら走り出した――。
***
セリが持ってきたピンクの液体を飲んでしばらくすると、いよいよ八百屋の奥さんは苦しみ始めた。
お産の場には男性は入れないため、ご主人と長男のレチーノはボルターの家で待っている。セリはいつでも赤ちゃんを産湯に入れられるように湯加減完璧のお湯も準備しつつ、奥さんの汗を拭いたり、体をさすったりとお手伝いをしていた。
正直、気の利いた会話ができるような雰囲気も余裕もその場にはない。セリはお世話に集中することでなんとかこの空気に飲まれて動揺しないように努めた。
気を張っていなければ、呻き苦しむ奥さんを前にして、どうしてよいか分からず動けなくなってしまう。
正直、セリはこの場にいることを怖いと感じていた。
……子供を産むのってこんなに苦しくて大変なことなんだ。
こんなに大変なのに、こんなに苦しそうなのに、どうしてあんなに幸せそうな顔で待っていられたんだろう。
こんなに苦しいことが待っているのなら、自分は子供を産みたいなんて絶対に思わない。だって怖すぎる。こんな長い時間苦しんでまだ終わらないなんて。無理。絶対無理すぎる……!
「下がってきたよ!! ほれ!! がんばりな!! 初めてじゃないんだ!! 兄ちゃんを産んだ時を思い出しな!!」
ジーノが必死で声をかける。
「~~~~~~ッ!!!」
八百屋の奥さんが椅子の手すりをつかんでいた手を離し、セリの手をつかんだ。
細身の奥さんがつかんだとは思えないほどの強い力だった。
痛いと感じるより先に、セリはもう片方の手を奥さんの手に重ねた。
「おばさん!! 頑張って!! しっかり!!」
――それからどれくらい時間が経ったのか、セリは分からなくなっていたが、突然それは聞こえた。
「お疲れさん。頑張ったね。元気な男の子だね」
世界が一変した。
汚れのない澄んだ『音』がこの空間を満たしている。
さっきまでセリが感じていた恐れも焦燥感も不安も、その清らかな音によって洗い流されていった。
子供のように泣きながら安堵する奥さんの声と――。
さっきとは打って変わって、奥さんへ労わりに満ちた声をかけるジーノの声と――。
セリは茫然としながら、さっきまでは聞こえなかった新しい声の主を見つめた。世界を一変させるほどの威力を持つ声の持ち主を。
ピクシーたちと同じくらいの大きさで、真っ赤な全身をふるわせて泣いている存在。
あまりにも頼りない、その小さな体から懸命に、純粋で力強い音を響かせ続けている。
「セリちゃん、ありがとう、ありがとうね」
涙でぐしゃぐしゃになった奥さんがセリのことを強く抱き締める。
ジーノがセリの用意したお湯の湯加減を褒めながら、突然この世界に現れたその子を産湯に浸からせている。
セリは自分の目の前に広がる光景がよく理解できなかった。さっきまで三人だったこの部屋に、今は四人いる。
「――セリ、セリや。わたしゃお産の後始末するから、この子を頼むよ。抱いててくれるかい?」
ジーノがふわふわのタオルでくるんだ『この子』をセリのところへ連れてくる。
セリは驚いて奥さんを見たが、奥さんは笑ってセリへうなづいた。
「セリちゃんお願い。抱っこしててくれる?」
おたおたと手を伸ばすセリに、ジーノが危なっかしい手つきだと笑いながら、抱き方を教えてくれる。
腕に乗せられた重さが信じられないほどに軽くて、そしてその存在の小ささと温かさと、こみ上げてくる愛おしさに、セリの涙腺が決壊した。
「うんうん。お前さんもやっぱり女じゃの。これを見ると子供が欲しくなるじゃろ? だーいじょうぶじゃ! ボルちゃんならいくらでも子供をこさえてくれるじゃろ。ひっひっひ。
あ、セリや。後始末のシーンはお前さんにはちいっとグロくてまだ刺激が強いから見ん方がいいぞ?
かわいい赤ん坊の顔でも見とれ」
ジーノの言葉にビビり、セリは二人から背を向けた。自然と赤ちゃんへと視線が下がり、目が離せなくなる。
これが産まれたばかりの赤ちゃん。
赤ちゃんって、どうして赤ちゃんっていうのかと思ったら本当に真っ赤だから赤ちゃんって言うのか。
ロフェの持っている人形と同じくらいの小さな手と指。それがちゃんと動いているのがセリには不思議でしょうがなかった。
自分の指でその小さな手を触ると、想像以上の力強さで赤ちゃんがセリの指を握り返してくる。
セリの涙腺が完全に崩壊した。
「はわわわわ……!! おばあちゃん無理、もう限界! 涙で前が見えない!! あと胸が痛い!! 苦しい!!」
「もうちょっとお待ち! それくらいで情けない子だね! それでもアンタこの町の子供たちを手懐けてる鬼ごっこ娘かい!?」
「ダメ!! 胸が苦しくて死んじゃう!! 切なさ乱れ撃ち!!」
「何をわけの分からないことを! そんなんで死んでたら世の母親はそろいもそろってキュン死が続出だよ!!」
キュン死寸前でようやく奥さんへ赤ん坊をお返しすると、セリは頭も体もふわふわしたまま外へと向かった。愛しさと切なさと胸の苦しさの乱れ撃ちを食らい続け、もう瀕死である。
「私、おじさんとレッくん、呼んできますね。早く会わせてあげたいし。もう呼んでもいいんですよね?」
セリがふらふらになりながら八百屋さんの自宅を出ると、すでに外は真っ暗だった。冷たい外気でセリの意識がはっきりする。
町の明かりもほとんど消えている。もしかしたらもう夜中なのかもしれない。見上げると澄んだ夜空に星が瞬いている。
ボルターの家の外で不審な動きをする人影を見つけ、セリは身構えかけたが、八百屋のおじさんがレチーノをおんぶしているのだと分かり、すぐに駆け寄った。
「お、おじさん!? こんな寒いのに外でどうしたんですか? 風邪ひいちゃいますよ?」
「産まれた!? 産まれたんだよね!? なんか泣き声が聞こえた気がしたから!!
ねえ、もう行ってもいい? もう行っても平気!?」
飛びつかんばかりの剣幕でセリへと詰め寄り、背中におぶわれていたレチーノも目を覚ます。
「レッくん、お兄ちゃんになるんだぞ? 今日からお兄ちゃんだぞ?」
息子に声をかけ、飛び跳ねるようにスキップをして家に帰っていく八百屋のおじさんの背中を見送るセリの頭の中に、再び母の声がよぎった。
(オルレア、あなたもうすぐ……)
頭の中に響いた声に、セリは血の気が引くのを感じた。
「おう、お疲れ。大変だったな」
外での声を聞きつけてボルターが出てきた。レキサ、ロフェ、クロム、ナックもみんな起きている。
――この子たちは生きている。
セリの修復しかけていた涙腺が再度崩壊した。
いてもたってもいられずセリは子供たちに飛びついて、三人と一匹をまとめて抱きしめた。
親の亡骸の傍で弱り切っていたナック、同族であるはずのエルフに殺されかけたクロム、産まれることができなかったかもしれないロフェ、レキサだってロフェと母親が同じなわけだから、ロフェと同じ危険があったかもしれない。
あんなに小っちゃくてふにゃふにゃで頼りない状態で生まれてくるのに、今はもうこんなにたくましくなっている。そして、なによりも今ここに生きていてくれる。
「ちゃんと生まれてきてくれてありがとうね。こんなにおっきくなってくれて、ちゃんと生きててくれてありがとうね……っ」
「お……おい。セリどうしたんだよ」
「しぇり、なんでないてるの?」
「セリ姉……?」
心配する三人と一匹になぐさめられながら、セリはようやく顔を上げた。
すると目の前に両手を広げてスタンバっているボルターの姿が飛び込んできた。
セリの涙腺は一瞬で完全修復され、もはや一滴の涙ももらさないバリケードと化す。
「…………なに? そのポーズは……」
「え? 俺にはそれしてくれねえの? だってよお、レキサやロフェが生まれたのって俺のおかげだろ?
じゃあ俺だって生まれてきてくれてありがとうだろ? すべての子供たちにありがとうだろ?」
「いや、アンタ子供じゃないし」
「バカヤロウ! すべての大人たちがかつては子供たちだったんだぞ!
なんだよ。俺にはナシかよ! ならこうだ! 仲間外れ反対! 俺も混ぜろ!」
有無を言わさずボルターが子供たちごとセリを強く抱き締める。
「お前が言ってくれねえなら俺が言ってやる。ありがとう、な。お前が生まれたこと、生きてること、そんで、なんだかんだ文句言いながらもここにいてくれること」
子供たちもその言葉にうなづき、セリのことをそれぞれに抱きしめる。
――違う。私は違う。
私はお礼を言われるような人間じゃない。
だって、だって私は――。
(オルレア、あなたもうすぐお姉ちゃんになるのよ? この子が生まれたら、いっぱいお世話して……守ってあげてね? もしこの子が困ってたら、いっぱい助けてあげて?)
お世話なんかできなかった。
助けてあげられなかった。
守れなかった。
見てるだけしかできなかった。
お母さんと、お腹の中にいるその子が殺されるのをただ隠れて見ていることしかできなかった。
私が代わりに死ねばお母さんとその子は助かった?
それとも私も一緒に殺されて、家族みんなで天国に行けば良かった?
私一人だけがどうしていまここにいるの?
なんの価値もないのに。
みんなの命を犠牲にして。
家族みんなを見殺しにして。
私だけが――。
黙って首を振り続けるセリに、ボルターは笑いかけた。
「お前が走り回ったお陰で、あそこん家の子供は無事に産まれたんだ。俺たちが毎日うまい飯食えてるのも、臭くねえ服を着てられるのも、散らかってないきれいな家に住めてるのもお前のお陰だ。
なんか当たり前になっちまって、ちゃんといちいち礼とか言ってねえけど、お前がいることで、俺たちはみんな助かってる。それも、この際だから言っとく。ありがとよ」
その言葉を受けとる余裕はセリにはなかった。
そんなことくらいでは自分の罪は消えない。
信じられなかった。
自分が、こんな大切なことを忘れていたなんて。
こんなに重たい罪をずっと忘れていたなんて。
楽しく過ごしていたなんて。
自分だけ幸せに生きていたなんて。
「どうしたんだセリ? ああ、もしかして出産シーン見て気が昂ってんのか。無理もねえか、結構壮絶らしいもんな。
男がもし子供産んだら痛さに耐えきれなくてショック死するっていうしな。いやホントお疲れさん。
でも赤ん坊はかわいかっただろ?」
ボルターの言葉で、セリはさっきまで腕の中にいた赤ちゃんの感触や泣き声を思い出した。
そうすると不思議なことに、心の荒波が静まり凪ぎへと変わり、あたたかく穏やかな気持ちになってくる。
赤ちゃんの泣き声は、浄化の調べだ。
赤ちゃんの温かさは、赦しのロザリオだ。
セリは静かにうなづいた。
「すげえちっちゃかったろ。抱かせてもらったか?」
もう一度うなづく。
「子供欲しくなるだろ?」
うなづきかけて、止まる。
「なあセリ。俺には夢があるんだ。
家が狭く感じるくらいのたくさんの子供たちに囲まれて暮らしたいっていう夢。
家族で団体戦トーナメントが組めるくらいの超大家族がいいな。
誰の追随も許さないほどの真の父親王に俺はなりたい。いや俺はなる!!
お前、今たしか年が14だろ? 誕生日はいつなんだ?
15になったら晴れて大人の仲間入り、小児卒業だしな……そこからスタートするにしても、さすがに毎年はきついだろうからまあ、一年くらいは開けるとしてだな。十人くらい行けると思うんだよな、俺は。
あーでも俺がそうすると五十手前か……さすがにキツいか、いや……がんばればイケるか?
いや、でもやっぱ早い方がいいよな」
真剣に悩み始めたボルターにセリが怪訝な表情で質問する。
「ねえ、なんの話をしてんの?」
「俺とお前の明るい家族計画の話だ。子作り解禁日はいつにする?
つーかお前、ちゃんと月のモノは来てるんだろうな? もしまだだったら言えよ? それこそ産所のばあちゃんのところで一発で月のモノが始まる薬があるっつーからさ」
未だかつてないほどの超ド級のセクハラ発言にセリは言葉を失った。
「――ち、ちょ、ちょっと!? なに!? なんなの一体!!
何で私がアンタと子供作る話になってんのよっっ!!」
「何言ってんだよセリ。仲良く二人で35年のローンを組んだ仲だろ? 俺たちもう夫婦も同然じゃねえか。あとは子供を授かるのを待つばかりだろ?」
「ローンは! アンタが! 私を騙して! そんで勝手にやっちゃったんでしょうが!!」
「なんだよ。やっちゃったなんて人聞きの悪いこと言うなよセリ。
昔と違って今の俺はな、男女関係はきちんと合意の上で進める主義だ。振られたところにつけこんでとか酔い潰してとか、そういう卑怯なことは一切しない清廉な男だぞ?」
「私の借金は合意の上じゃないでしょうが!!」
「なんだよ。お前だって俺から離れたくない~、俺とずっと繋がってたい~って俺の腕の中であんあん泣きながらよがってだろ?」
「誰の話よ誰の!! っていうかいつまでもそのネタ使わないで!!」
「っこのポンツクども!! いま何時だと思ってんだい!!
近所迷惑だよ!! 痴話げんかは家の中でおやり!!」
誰よりも大音量で発せられたジーノの声で、深夜の言い争いは一時終了となった。




