23話 初めての料理
先週金曜日は更新できずに申し訳ありませんでした。
更新が出来なさそうな時は活動報告に書くようにはさせていただいてます。
あとがきに今後のお知らせを書きました。
お目通しお願いします。
ドアを開けるとガヤガヤとした喧騒が耳に、ムワッとした酒の匂いが鼻孔をそれぞれ刺激する。
酒の匂いは嫌いじゃないが好きでもない。
飲まないし飲んだところで酔わないからな。
部屋の中にはカウンターがありその中には店主と思しき魔人族が手元の何かを振っている。
パッと見人間種に近い外見だが身体がデカい。
三メルト位はある。
それに頭に角が生えてるな。
鬼人族にしてもデカいけどな。
港の受付の鬼人族もあそこまでは大きくなかった。
何の種族だろうな?
まぁ、店主の種族はともかく取り敢えずカウンター内に店主。
そのカウンターに沿って外側には客用の椅子が置かれてる。
そして空いたスペースにはテーブルと椅子が置いてあり、給仕が料理を運んでいた。
給仕はこの国には珍しく人間族っぽい。
ぐるっと軽く見渡した感じそんな程度だ。
目に飛び込んできたのは。
店主はドアを開けた俺をチラッと見るが、そのまま目線を手元へと戻した。
入ったはいいけどどうすればいいんだ?
『取り敢えずカウンターに座ればいいだろ。
同伴者が居る訳でもねぇしテーブルを占領する訳にもいかねぇ。
それに店主と話すならカウンターの方が都合がいいしな。』
んじゃカウンターっと。
うーん、椅子に上り難いなぁ。
カウンターの椅子は人型用でトカゲ仕様になってる訳じゃ無いから当たり前だけど。
四苦八苦してると給仕の人間族が大きな黒い布の塊を持ってきた。
なんだこれ?
眺めてると隣の椅子にそれを置いて「どうぞ」と俺に向かって言ってきた。
えっと?
ここに座ればいいのか?
ひょいっと今いる椅子から黒い何かが敷かれた椅子へと乗り移る。
おお、座りやすいな。
座りにくい要因だったでっぱりとかの椅子の凸凹が平らに均されていい感じになった。
成程ね、色んな種族が居るからそれに対応できるように色んな物が用意されてるんだな。
一番多いのは人型の種族だからそれをベースに、って事か。
「座り心地はいいですか?」
「ああ。問題ない。」
そう返すと一瞬驚いたような顔を給仕にされたがそのまま走っていった。
どうした?
『今お前が発した言葉がヒュマス共通語だったからじゃねぇか?』
ありゃ、言われてみりゃそうだったか。
なんか基本的に発声練習してたのがヒュマス共通語だったからなぁ。
咄嗟に発声しようとするとどうしてもそれが出てしまう。
そりゃ思いっきり魔人族の恰好した奴からヒュマス共通語が飛び出したら驚くよな。
せっかく魔人族の国に来てるんだ。
今は意識してファンスター語を話すようにしよう。
さて、んで何をどうすればいいかな?
『取り合えず何か注文しろよ。
注文しねぇと客じゃねぇ。
客じゃなけりゃ話を取り合ってもらえねぇぜ。』
む、了解。
えっと注文ね……。
辺りを見渡すと壁に文字が並んでいる。
しかも丁寧にファンスター文字とヒュマス共通文字と…後は知らない文字だ。
『それぞれデミビー獣人語とスピリタム森精語だな。
獣人族と精人族の言語だ。』
ふーん。
外国の商人が多い店って聞いたもんな。
確かにこれならファンスター文字知らなくても注文できるか。
さてさて、その肝心の料理は何があるんだ?
-----------------------------------------------------------------
・牛喰蟹の蒸し焼き [9500ルガロ]
・ドフゴンピッグの焼肉 [7900ルガロ]
・日替わり海魔獣の焼き物 [2500ルガロ]
・海竜の素揚げ [1000ルガロ]
※料理は全て塩で味付けしてある。
食獣桃のソースを別途用意可能。
必要な場合は注文時に言う事。
-----------------------------------------------------------------
パッと目に飛び込んできたのはその四つの料理と下の但し書き。
他にも細かいメニューがあるが一番でかでかと壁に書かれてるのは四つだけだ。
多分一番ここで売れてる内容なのかな。
んー、まぁ目的で考えるなら一番安い海竜の素揚げかな。
「海竜の素揚ゲを一ツ頼む。」
カウンター内の店主に向かってそう声をかける。
チラッとこちらを見ると軽く頷いて手元の料理に戻った。
『ケッケッケ。
海竜とは……。
お前、共食いになんねぇか?』
注文を聞いたヴァゴスが笑いながらおちょくってくる。
海竜は別に仲間じゃねぇし同族でもねぇよ。
お前、知ってて言ってんだろ。
『ケッケッケ。
言ってみただけだ。』
ったく。
海竜は…と言うか普通のそこらに居る亜竜や魔竜は別段俺らが食っても共食いにはならない。
俺が食って共食いになるのは霊竜種だけだ。
そもそも生物的な構造からしてあいつらとは違うからな。
亜竜や魔竜は卵で産まれる卵生だけど、俺とか霊竜種は母親からそのまま産まれる胎生だし。
この事はインジェノスで暮らして全然知られてないことに驚いた。
と言うかエヴァーンも知らなかったから話したら驚いてた。
俺からしたら当たり前なんだけどな。
『そりゃお前、そもそも霊竜種…人間の間じゃ古竜って言い方が多いが、霊竜種なんぞ基本的に生態どころか見かける事が無いから知らねぇ奴の方が多い。
そんな奴の細かい特徴まで知ってる奴は中々いねぇ。
と言うか人間族からすりゃ古竜なんて伝説上の生き物扱いだからな。
そんな生き物の生態を詳しく知ってる方がおかしい。』
そういや俺が捕まった時もそんな話だったな。
当事者…と言うか当の種族の俺からすれば当たり前だけど…。
まぁ、言われてみれば納得だ。
ヴァゴスとそんな話をしながら暫く待っていると給仕が皿に盛られた茶色い食べ物を俺の目の前のカウンターに持って着て目の前に置いた。
「ど、どうぞ。」
……これが海竜の素揚げか。
茶色いのは揚げてあるからかな。
なんだか香ばしい匂いがしてめちゃくちゃ旨そうだな。
『素揚げって言っても軽くだが衣が付いてんだな。
旨そうでいいね。』
ほう。
と言うか今更ながら振り返ってみると料理を食うのは初めてだな。
あー、エヴァーンの焼いただけの肉を料理って言うなら別だけど。
『ありゃ料理とは言わねぇ。
焼いただけの調理だ。』
だそうだ。
じゃあ初めてだな!
いざ実食。
手に持って……手に持って……皿に転げ落ちる素揚げ。
持ち辛いから手に持った振りで魔領法で掴んで口に放り込む。
ヴァゴスが気を利かせてくれたのか外の口に放りこんだらそのまま自分の口の中まで転がってきた。
そのまま噛むとジュワッと肉の汁が溢れだしてきた。
同時に周りの衣?の部分がカリッとして香ばしい何とも言えない風味だ。
後、塩がいい感じに振ってあるのか後味もちょうどいい。
うん。旨い!
エヴァーンが焼いた肉も旨かったが何か妙に元足りなさを感じてたんだよなぁ。
塩気か!
多分生きていた頃だったら今まで生きて食った中で一番旨い!って言ってただろう。
ただ、残念ながら死んだ身としてはこれだけ旨くても血よりは旨くないって感じてしまう。
何と言うか血だけ味のベクトルが違うんだよねぇ。
多分吸血種の舌の構造の問題なのかな。
『だろうな。
俺様は舌も好きに構築できるから色んな種族の舌で楽しめて嬉しいぜ。
その料理を食うのに一番旨いって感じるのに向いた種族の舌で味を感じれるからな。
ま、この国には吸血鬼専用の料理屋もある。
いつか行くといい。
残念ながら今回は高くて行けないが。』
お、そんな店があるのか。
いつか行きたいね。
『さて、料理が旨いのは何よりだが本来の目的を忘れてねぇか?
ある程度食ったらちゃんと店の奴に話を聞けよ。』
分かってるって。
料理を初めて食ったんだから少し位は感動した余韻を味合わせてくれよ。
『お前はそのまま目先の事に捕らわれて忘れる事があるから注意しねぇと駄目なんだ。
ま、覚えてるならいいけどな。』
サクッ。
ジュワァ。
うまー。
『……本当に分かってるんだろうな?』
分かってるって。
それから数分は無心で食った。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ここで一つ作者からお知らせ兼謝罪があります。
申し訳ありませんがリアルの仕事の諸事情により現在の更新ペースを続けるのが少し難しくなりました。
その為、一日当たりの更新量を少なくすることにします。
詳しく言えば一日当たりの文字数が少なくなります(5000文字前後⇒3000文字前後)。
楽しみにしてくださってる方々には申し訳ありません。
(同様の内容を活動報告にも記入します。)
今後とも本作品をどうかよろしくお願いいたします。




