⑧
勝負が終わって、
「はぁ……はぁ……」
体力を使い果たした峯扇は膝に手を当てて、肩を大きく上下させている。
顔を俯かせて、長い髪で隠れて見えない。
「……俺の勝ちだな。勝負内容忘れてねぇか?」
「…………はい」
大伴は中腰の峯扇に歩み寄った。
客観的に見れば、見下ろしたような構図になっている。
「な、なんでも言う事を聞きます。まぁ大体予想はつきますけど」
大伴に勉強を教えるってのが峯扇の予想だろう。
この勝負の始まりはそれ目的だったし、大伴も'ちょっと前,まではそう考えてた。
「じゃあ言うぜ?」
大伴はしゃがみ込んで、峯扇と目を合わせた
「なにもしなくていい」
「……え?」
キョトンとした峯扇の顔。そりゃそうだよな、と大伴は思った。
自分だって峯扇の立場ならそんな顔になるだろう、きっと
。
「な、なにもしなくていいって……せんぱいはこのままだと卒業できないんじゃないんですか?」
「まだ決まってねぇっつの」
「お、おかしいじゃないですか。なんで私に教えろって言わないんですか。まさか、運動オンチの私に同情してるんですか?」
「してねぇ。ただ自分で努力してないのに気付いただけ」
今まで俺は自分ができない事はすぐに諦めていた。努力すれば成績だってもっと上がってる筈だ。俺がやってるのは他力本願で、結局、楽をしようとしていたんだ
それに、
「たくさん頑張ってるお前に頼むのはできねぇからな。俺も見習ってみるわ。あ、あとな、」
峯扇の頭に手を置いた
大伴と峯扇の目と目が合う
「撤回する、お前は運動オンチじゃねぇ。それじゃあな」
「…………」
頭の頂点をポンポンと軽く叩いて、大伴はその場を後にするべく歩き始めた
さて、帰ったら勉強するか。どうしても分からないとこは赤坂に聞こう。
と、似合わない考えを纏めていると、
「待って!!」
「ぐぇっ!?」
がしっと、峯扇に後ろから襟首を掴まれた。
そうなると前に進んでいた大伴の首は締まるわけで、
「な、なにしやがる!!首締まって変な声出ただろうが!!」
「納得できません」
大伴の睨みもなんのその。峯扇はジロリと睨みつける。
「勝ったのに何もしないなんて逆にムカつきます。それに今回私は痛感しました、私は運動オンチなんです。それなのに子供を扱うみたいな感じで撤回してっ……」
「なんでだよ!!撤回しろって言ってただろ!!それに罰を受けたいって、お前はマゾか!!」
「なっ!?そ、そんなわけないでしょ!!この変態!!」
「だ、誰が変態だ!!お前どうしたいんだよ!!」
大伴が投げやりに言うと、峯扇はむっ、と口を閉ざした
「……しが……ます」
「なに?」
声が小せぇよ。聞こえねぇっての。
そう問い返すと、峯扇は顔を俺に急接近させた。ちなみにかなり近い
「だ、だから。私がせんぱいに勉強を教えます。卒業させてみせます。負けたんだからそうします。そ、そうじゃないと私のプライドが許しませんから」
「い、いやでも……いいのか?」
峯扇はいっぱい勉強してるんじゃないのか
それに陸上でもかなり練習してたから、もしかしたら他にも色々やってんじゃないだろうか?
「二言はありません。厳しくいきますから、そのつもりでっ!!」
怒ってるのか、峯扇は顔を真っ赤にさせて、走っていってしまった
「な、なんだアイツ……」
やる気になってくれてるっぽいならいいけど。
イマイチ峯扇がわかんねェー
そう大伴は一人つぶやいた




