二章
「では、今日はこれを覚えてください。ちゃんと書いて覚えてくださいね?放課後に確認テストをしますから。それから宿題も用意しました、明日までにやっておいてください」
目の前にデン!!と置かれたのは中々の厚さをお持ちの英単語帳だ。
それを置いた張本人の峯扇は、机に各教科の問題が書かれたプリントが大量に並べている
「勉強は積み重ねですから、しっかりやってください。分からないところがあれば教えますから」
「……」
峯扇との勝負から数日が過ぎた。宣言通り峯扇は勝負の翌日から勉強を見てくれるようになり、
休み時間には大伴の教室に来るようになった。
今のように毎日ホームルーム前にも来て課題を置いていくわけだ。
それはいい、それはいいんだ。と大伴は心の中で思う。
正直すごい助かってるし、学力もちょっとはマシになってる気もする。
だが。
だが、しかし。
「量が多すぎんだよ!!こんなにやったら知恵熱で死んじまうって!!」
この数日で単語帳四冊は覚えた気がする。
大伴が生涯覚える予定の単語数を軽く超越してるだろう、余裕で。
「大丈夫です。知恵熱で人は死にませんから」
「英語だけじゃねぇ!!国語、数学、理科、社会。もうちょっと減らしてくれ!!どんだけ覚えさすんだよ!!お前は俺をウィキペディアにでもする気か!?」
「絶対ダメです」
峯扇は「なに言ってんですか?バカなんですか?」みたいな視線をくれる
そう、峯扇は超スパルタなのだ……。厳しくいくとは聞いてはいたが、
まさかここまでとは思ってなかった。
「いいですか?せんぱいは基礎が全くできていません。基礎を固めないと卒業できません。テストまで二週間を切ってるし、人より遅れているんだから、いっぱい努力するしかないでしょう」
「それは、わかってるけどよ」
「だったら無駄口叩いてないで単語を覚えてください。休み時間にまた来ますから」
峯扇はスカートをヒラリとひるがえして教室から出ていった。
授業もしっかり聞けって言われてるのに、休み時間まで勉強するのか。
一体いつ休んだらいいんだろうか?
寝不足でイライラする……
「おい大伴!!」
眠さに耐えながら呼ばれた声に振り向くと、片山が肩を激しく揺らした。
「な、なんだよ!!」
「なんでテメェが眉目秀麗成績優秀で有名な峯扇椿樹と仲良く喋ってんだよ!!大伴ぉ!!」
「眉目秀麗と成績優秀なのは同意見だが、あれが仲良く見えたなら今すぐ眼科に行け」
片山龍貴。
大伴や赤坂のクラスメイト。
サッカー部所属で、短髪が似合う外見爽やかなスポーツマン、といったところ。
ついでに大伴には及ばないが中々に足が速い。
「仲良くなんてやってねぇって。めっちゃスパルタなんだぞアイツ」
「ス、スパルタだと!!あんな清楚な顔してるのにドSなのか!!ていうかお前峯扇とヤっ「んなわけねぇだろォが!!どんな思考回路してんだお前は!!」
言葉を重ねて揉み消したが、片山は気にせずに続ける
「ちくしょう!!テメェには赤坂がいるのに!!年下にまで毒牙にかけるとはっ……。なぁ赤坂カワイソーに」
ぐりん、と後ろを向いて、歩いていた赤坂を捕らえる片山。
「えっ!?いや、わたしはっ……」
会話が耳に入っていたのか、赤坂は顔を赤くしながらあたふたと手を振る。
「なんで赤坂が出てくるんだよ!!この野郎は!!男と女が一緒にいたらそういう発想しかできんのか!!」
「お、大伴くんは、峯扇さんと付き合ってるの?」
「つ、付き合ってねぇって!!」
赤坂までそんなこと言うのかよっ!?と大伴は叫んだ。
もちろん聞く耳を持つ者はいないのだが。




