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天才の方程式  作者: nono
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勝負まであと二日になった。

もちろん大伴と峯扇以外は知らないし、学校は普段通りに授業をする。



窓際の席の大伴は、

グラウンドでやっている二年の体育の授業を見ながら時間を潰していた。

今はもっとも最悪な時間の数学の時間だ。あんな意味不明な数字を相手にするなら景色を見ていた方がマシである。



「大伴。この公式を解いてみろ」


そう思っていたのに、数学の先生はわざわざ大伴を指名する。

自分に解けると思っているのだろうか、と思いつつ大伴は起立して一言。



「わからないっス」



「はぁ。大伴ー、お前はもうちょっと努力したらどうだ?さっきは二年の授業だったが、完璧に答えたぞ?だからお前もまずは頑張ってやってみろ」



「それって峯扇ですか?天才と比べられても困りますよ」



なにせ全教科満点のバケモンなのだ峯扇は。

比較の対象がおかしい。努力するだけ無駄だ。



先生の言葉を流し聞きながら窓の景色に目をやる。

どうやら授業内容は100メートル走らしい。


「あっ……」



陸上部の後輩でもいないか、と探していると噂の天才サマを発見した。

ちょうどスタート位置にいる峯扇は他のやつらに混じって、

長い髪を括ってクラウチングスタートの体勢に入っている。


結構さまになっている。大伴に勝負を挑むのだからもしかしたら、

そこそこ速いのかもしれない。


少し実力を見せてもらうとしますかねー、と大伴は椅子に腰を下ろし、眺める。


それと同時。

ピッと笛が鳴ってラインにいた生徒たちが一斉にスタートする。



「なっ……」



そして大伴、絶句。

ほとんどの生徒は平均かそれ以下って速さだ。

陸上部じゃない人間ならこんなもんだろう、と思うが、

それはいい。問題は峯扇だ。


遅すぎる。

あんなに遅い人間がいるのか、というほどに。



峯扇は手を抜いてる様子は無い。間違いなく、全力で走っている。

それでこの遅さだ「

20秒くらいかかっているんじゃないだろうか?



「あ、あれで勝負する気なのか?」



大伴は授業中に一人、別の意味で戦慄した。

とにかくこのまま勝負するわけにはいかない。





         *






「峯扇いるか?」



授業が終わると大伴はすぐに二年二組の教室に向かった。

あいつはいくらなんでも足が遅すぎる。自身もわかっている筈だ。

それなのに、なんで挑んで来たのか。

いくら運動オンチを否定したいからって、

気合いでなんとかなる実力差じゃないのに、なぜ?



「今は先生に呼ばれてていませんけど……」



前に教室に来た時に峯扇と一緒にいた女子が答えてくれる。

いない。

ちっ、と大伴は舌打ちをして踵をかえす。



「そっか、邪魔したな」



「あ、あのっ!!」



教室を出てすぐにさっきの女子が追いかけて来た。

目には若干の敵意みたいなものが見える。



「ん?なに?」



「大伴せんぱいが椿樹と陸上で勝負するって本当ですか?」



「椿樹?」



「あ、あの子の名前です。峯扇椿樹(ほうせんつばき)……」



峯扇は椿樹って名前らしい。まぁ微塵も興味はないが。



「そうだけど、峯扇から聞いたの?」



「はい。あの子昨日一人で陸上の練習してたから聞いたんです」


キュッとスカートの端を掴んで話す、女子。

なんか気弱そうなやつだなこいつ、と思いつつ、女子に話しかける。



「で?言っとくけど峯扇から売ってきた勝負だぜ、これは」



「それも聞きました。詳しい事は教えてくれなかったけど……。……私、心配なんです」



「なにが?勝負の事なら、俺は本気出さねぇから」



一応全力を出すのが礼儀だと思っていたけど、

あんなのに本気出したら弱い者イジメになってしまうし、

なによりモチベーションが上がらない。半分ぐらいの力で流すつもりだ。



「違います。あの子勉強もすごく頑張ってるのに、いきなり陸上の練習も始めたから心配なんです。椿樹、運動苦手なのに」



頑張ってる、ね?ああいう天才肌は自然になんでもこなすんじゃないだろうか?

というか、この子は何が言いたい?



「だから、あの、その……」



言いたい事がまとまっていないのか、オロオロとしている。

けど、峯扇が心配というのはよく伝わってくる。

しかし、大伴が無理矢理勝負をけしかけてると思っている気がするのだ。



「……お前、名前は?」



「な、名前ですか?は、速水悠(はやみゆう)です」



「あー……速水。お前の言いたい事はわかった。だから安心しろ」



要するに峯扇に練習をやめさせればいいんだろう

どのみち練習なんてやってもやんなくても一緒だ。

なぜなら大伴が勝つから。



しかしまぁ、なんで俺がこんなことしなくちゃなんねぇんだか。と大伴は思ったが、

なんだかんだで、後輩の、しかも女の子の頼みは断れないのだ。


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