③
「……え?」
峯扇はキョトンとした顔だ。
ひょっとして大伴の言い方がまずかったか?
ならば詳しくもう一回言おう。
「実は俺、成績がヤバくてさ。このままだと卒業できないんだ。だから峯扇さんに勉強を見て欲しいなって」
「……いやです」
「な、なんで!?」
気付けば峯扇は顔を真っ赤にしてわなわなと震えていた。
もしかして、怒ってるのだろうか?
大伴は、なにかしただろうか?と自分の言動をチェックする。
……一体なにが?
顎に手を当てて思案していると峯扇は、かみつくように喋りだした。
「まず頼み方がダメです!!こんなっ!!か、かか勘違いさせるようなやり方なんて」
「か、勘違い?なんだよそれ?」
「う、うるさい!!とにかく、私は忙しいんです!!お断りします!!」
キッと大伴を睨むと、峯扇は踵を返してしまう。
まずい、せっかくの卒業できるチャンスが逃げる。
逃すわけにはいかないっ!!。
大伴は慌て峯扇の腕を掴んだ。
「ちょっと待ってくれ!!勘違いさせたんなら謝るから話を聞いてくれって」
「離してくださいよっ!!この鈍感バカ!!」
かっちーん
バカだと!?
思わずこめかみがひきつった。
そんなの自分が一番わかってる。だから他人に言われるとムカついたりする。
「あのなぁ!!なんか知らんが、お前が勝手に勘違いしたんだろうが!!勘違い女!!」
「なっ!!あんたが勘違いさせる言動をとったんでしょ!!もう絶対に教えてやんない!!」
「じ、上等だ!!てめぇみたいなガリ勉は一生勉強してろ!!どうせ運動もできねぇんだろ?はっ情けねーなぁ」
「う、うるさい!!バカバカバァーカっ!!」
「また言いやがったなぁ!!」
この後、周囲に人だかりができるまで大伴たちは罵り合いを続けることになった。
*
やっちまった。
峯扇との口ゲンカから一日たって、大伴は心の中はかつてない程の後悔が押し寄せていた。
大伴は卒業のチャンスを自ら捨てたようなもんだ。
せめてもう少し冷静でいれたなら、あそこまで罵り合うことにはならなかったのに。
「なぁ刹里。お前って頭良かったっけ?」
もしかしたら、という気持ちを込めて目の前でニコニコしている女に聞く
「え、え?フツーかな、ははは……。な、なんで?」
「……なんでもねぇ」
やっぱり頼めない。
自分でいっぱいいっぱいかもしれないやつに、俺に勉強教えて、なんて言えるわけがない。
「もう、カンニングしかないか」
「え!?今さらっと危ない発言したよね!?どうしたの恢人くん!!」
なんでもない。と
心配している友達を無視して、だらんと机に頭を乗せてテスト対策に思案していると、教室の扉が勢いよく開いた
「大伴せんぱい。ちょっといいですか?」
現れたのは、昨日全力で罵り合った相手の峯扇だった。
なんで今更こいつが?
「なんだよ?」
昨日の続きでもしようっていうのだろうか?
「大事な話があります。ついてきてください」
落ち着いた有無を言わせぬ口調で言うとさっさと教室を出ていってしまう。
気に食わないが無視するわけにもいかないだろう、仕方ない。
そう思いつつ、とりあえず峯扇についていくことにした。
「恢人くん!!えっと、今のって例の天才ちゃんだよね?」
そういう赤坂は少し挙動不審だった。
いきなり全教科満点の天才が来たからビビったのだろうか?
「まぁな。ってわけだから、ちょっと話してくるわ」
「えぇ!?恢人くんと天才ちゃんは、ど、どういう関係なの?」
「……説明しにくいから黙秘で」
言い残して峯扇を追った
下級生に勉強教えてって頼んだってのはちょっと知られたくないから。




