②
「はぁはぁ……ったく。赤坂はなんだったんだ?」
二年の校舎の廊下で大きく息を吸いながらひとりごちた。
赤坂は「そんなに年下が良いの!?」とか言いながら追いかけて来て、
わからないがなにか変な状態になっていた。
ついでに大伴は年齢は問わない派である。
……余計な事を言ってしまったかもしれない。
まぁそれはさておき、二年校舎に着いた。
この中のどこかに全教科満点のバケモンがいるわけである。
とりあえず聞いてみることにする。
息を整え終わった大伴は近くに歩いていた二年生に声をかけた。
「なぁ、ちょっと」
「え?うぉっ!?大伴せんぱい!?」
驚く二年生。
大伴は校内では有名人なのだ。
校舎には大伴の名前の垂れ幕がかかってたりする。
「すっげぇ!!大会見てましたよ!!最速の記録!!」
楽しそうに言うのを手の平を向けて抑える。
騒がれるのは嬉しいが、今はバケモン探しの方が優先したいからだ。
「あのさ。二年に全教科満点取る頭の良いコがいるって聞いたんだけど、何組か知ってる?」
「は、はい。峯扇さんの事ですか?あの子は二組だったと思いますけど」
「二組だな!!よっしゃ!!ありがとう」
肩にぽんっと手を置いて礼を言ってから、すぐに二年二組の教室を目指した。
今は四組の前だから、すぐに着く。
まさかこんなに早く見つかるなんて思ってなかった。
やっぱ日頃の行いが良いからかねぇー。と、天にではなく自分に感謝する大伴。
若干の小走りで廊下を走り、二組の教室の前に着く。
ここにいる。全教科満点のバケモンが。
ガラガラと音の鳴る引き戸式の扉を開けて、中に入ると教室には結構の数の生徒が弁当を片手に集まっていた(ちなみに今は昼休みである。断じて授業をサボってるわけじゃない)
二年の教室にいきなり三年が入って来たから教室中の視線が俺に集まる。
教室によそ者が来たら、その教室の主たちは注目するのだ。
空気を無視して、さっきと同じ要領で扉付近にいた女子に声をかける。
「峯扇さんって誰?」
女子はさっきのやつと同じ反応をしながら、峯扇を指差してくれた。
指差した方向を見ると、教室の一番奥、窓際の列の最後尾に、峯扇はいた。
「えーと峯扇さん?」
女子同士で楽しげに弁当を食べている長い黒髪の女子は、
眼鏡をかけた目でぱちくりという感じで大伴を見る。
「そ、そうですけど。大伴せんぱいですよね?」
すらりとした身体に整った顔。
この女の子が全教科満点の峯扇。
なんていうか、結構可愛いんじゃないのか?と大伴は思った
想像とちょっと違う。
もっとテンプレートなガリ勉かと思っていた。
「あの俺、峯扇さんに大事な話があるんだけど。ちょっといい?」
こんなに人が多い教室で下級生の女の子に勉強教えてくれって頼むのは恥ずかしい。
さっきも言ったが大伴にはプライドがある。
「はっ、はい。わかりました」
峯扇は動揺しながらも首肯してくれた。
きゃあきゃあ言ってる友達に「う、うるさい」なんて言いながら大伴について来てくれる。
なんでこんなに騒いでんのコイツら?と思ったが、大伴としては目立たない場所で話ができればいいので、深くは考えないことにした。
「なんかゴメンな。弁当食べてたのに」
「い、いえ!!大丈夫です!!」
ぶんぶんと手を振る峯扇。
謙虚な子だ。
てっきり頭の良さを鼻にかけてると思ってた
この分だと大伴のお願いも簡単に進みそうである。
廊下を進み、突き当たりに着いた。
この辺は教室や階段がないから人は来ない、ここなら大丈夫だろう。
「あの、迷惑かもしれないんだけど、俺の話を聞いてくれ」
ゆっくりと諭すように言う。こういのは焦っちゃダメな気がするから。
「でもっ!!あの私っ、こういのは初めてで!!」
初めてっていうのは意外だ。てっきり色々な人に頼まれてる思った。
「大丈夫だ!!俺も初めてだから!!だから聞いてくれ!!」
「でも、こ、こういうのはお互いの事を知ってから!!」
なぜか顔を真っ赤にしながら言う峯扇。
一理あるがここで引くと留年が確定してしまう!!
ゴリ押ししかない、大伴は思った。
「これから知ればいい!!だから聞いてくれ!!」
峯扇の手をしっかり握って、大伴は言った。
「俺に勉強を教えてくれ!!」




