一章
「はぁ~……」
職員室での教師との会話から一日が経った。
大伴は教室で頭を抱えていた。
クラスメイトの活発な声が響いてる教室で、彼の周りの空気は限りなく暗黒だ
80点以上なんて、大伴にとってはもう留年宣言だったりする。
自慢じゃないが80点なんて今まで取ったことがない。
大伴は今まで陸上しかやってこなかった。
このままだと確実に留年する。
正攻法じゃ無理だ
頭の中に邪悪な考えが浮かぶ。カンニングしかないんじゃないだろうか?
でも、テスト範囲全体をカンニングできるか微妙だ。
しかもバレたら全教科0点、
リスクが高すぎる。
誰かに勉強を教えてもらうにしても、みんなテスト期間は自分の勉強に必死だ。
教えてくれ、なんてのは迷惑だろう。
テスト前に余裕のあるやつなんてのは、バカか、あらかじめ勉強してるやつだけだ(もっとも一番バカな大伴は焦ってるが)。
「もう留年しかないじゃねぇか……。この学校には全教科満点取るバケモンもいるっていうのに」
その瞬間
あ……、と、大伴の中でなにかが繋がった気がした。
つまりは、
……あれ?使えるんじゃね?そのバケモン。と。
全教科満点の天才なら要点を抑え、テストに出るピンポイントを知ってる筈。
まだ二年ならそこまで成績にがっついてないから定期テストにも余裕があるし、
全教科満点のやつなら尚更余裕なんじゃないだろうか。
三年のテスト範囲だってきっと網羅している筈。
「なんとかなるかもしれねぇ!!全教科満点のバケモン、探してみるか!!」
となるとだ。
まずは情報収集である。
そんなわけで教室で情報を集めてみた。
案の定というか、当然というか、
バケモンは学校では割と有名人だったようで、色々な話が聞けた。
なんでも、そのバケモンは一年生の終わりにで転入してきて、
編入試験で学校始まって以来前人未踏の全教科満点で編入したらしい。
ちなみにその伝説は今も続いていて、テストでは100点以外取った事がないとか。
学校の偏差値を一人で上げてるって話らしい。
なかなか頼もしいじゃないか、と大伴は一人にやにやと笑う
そんな伝説のバケモンなら必ずや自分を卒業に導いてくれる筈だと。
「んで?そのバケモンは二年何組なんだ?」
上記の話を話してくれた、クラスメイトに言う。
これだけ噂を知っているなら当然クラスぐらい知っていると思っているからだ。
「え?噂しか知らないよ?大伴くん、そのコに会いたいの?」
「……知らないのか」
ガックリと肩を落とす。
会いたいから言っているのだ。
ちなみにこのクラスメイトについて簡単に紹介しとくと、
この女子は赤坂刹里という名前の女子で、大伴と同じ陸上部である。
同じ部活だから、女子の中では仲が良い方だと大伴は思っている。
ショートカットがよく似合う少女である。
「仕方ねぇな。二年の校舎に直接行ってくるわ。ありがとうな」
大伴としてはあまり別学年の校舎には行きたくないのだが。
別学年の校舎に行くと、周りから浮いてる気がする。
あまりウロウロしたくないんだけど、というのが理由だ。
学生の人なら、この感じ分かるかもしれない。
「あのさっ、その天才ちゃんに会って大伴くんはどうするの?」
赤坂が興奮気味に聞いてくる。
素直に言うと、勉強を教えてくれって頼むため、なんだが、
大伴は年下に勉強教えてもらうのってちょっと情けない気がした。
大伴にもプライドがあるし、親しい女の子に言うのは憚られた。
なので、ここは適当にごまかす方向で。
「え~っと、あれだ。その、……愛の告白?」
言った瞬間、なぜか赤坂が焦りながら「つ、ついていく!!」とか言い出したので
大伴は高校最速の走りで全力で走って逃げた。




